いつかはやってくるかもしれない、家族の介護。そしてすでに今、家族の介護と向き合っている人もいるかもしれません。45歳年上の加藤茶さんが夫である加藤綾菜さんも、介護を意識しているひとり。介護食アドバイザー、介護実務者研修、生活習慣病アドバイザーなど数多くの介護資格を保有しています。そんな介護に関心を持つ著名人と介護のプロが身近な介護問題についてSOMPOケア株式会社 相談役会長の遠藤健さんとの対談番組『もっと介護のハナシをしませんか?』に出演した加藤さん。今回は、その内容をお届けします。
介護予防の食事とは?
介護食アドバイザーなど多数の資格を取得し、自身のYouTubeチャンネルでも料理動画をあげるなど、食の勉強に熱心な加藤さん。綾菜さんは、夫・加藤茶さんを支えるための食へのこだわりや、介護と食の関わりについて、遠藤さんは、SOMPOケアの介護施設での食への取り組みや介護予防という観点で食の重要性について語ります。
●加トちゃんのために介護食アドバイザーの資格を取得
加藤さん:加藤家は基本減塩の食事なんですが、結婚2年目ぐらいから(夫・加トちゃんが)すごく大病を重ねてきて、腎臓の数値とか内臓の数値がものすごく悪くなってきてたんです。先生にいきなり「完全に減塩、1日6gの塩分に抑えてください」って言われ、“えーっ”て驚いて。
加トちゃんは50数年間ドリフで忙しくて、だいたい出前だったんです。出前で食べるのが、トンカツ、ラーメン、そば、この3つのみで。夜にお酒を飲みに行ってそのまま焼肉に行くかステーキを食べるかっていう生活で。魚は一切食べない、野菜はトマト以外食べないっていう生活でした。血圧も高かったので、一気に減塩するのはすごく難しくて。
でもあまりにも腎臓が悪くて、透析が必要になるぐらいまでになっていたので、とりあえず塩抜きしようと思いました。一切塩を使わなくしたのですが、全然食事が進まなくて。食べるフリしては下に落として犬にあげたりとかして、どんどんやせていったんですよ。
でも減塩で教えてくれる料理教室を探しても日本になかなかなくて、減塩の本をつくっている先生がいると知って、自ら会いに行って「減塩料理教えてください」と言いました。かかっている病院や食についての授業がある病院を調べて自ら病院に勉強しにいくなかで、介護食の資格を取ろうと思って、介護食アドバイザーの資格を取りました。
●10年試行錯誤してたどり着いた「氷だし」
加藤さん:今、結婚13年目なんですが、10年はもう試行錯誤で。(加トちゃんは)野菜も本当に食べないので、始めは3歳児の子どもが食べる野菜を食べさせるようなレシピを買ってハンバーグの中に練り込んだり、ドレッシングにしたりっていうのからちょっとずつ野菜に慣れていって。今は全部野菜も食べられるようになったし、魚も食べられるようになりました。
遠藤さん:10年間の間、本当に工夫されて、苦労もされたんですね。
加藤さん:10年なんとか減塩を一生懸命やってきたんですが、本当に努力して“氷だし”にたどり着いて。氷だしの料理に全部変えたら、透析を受ける前日に腎臓の数値がよくなって、透析を免れたんですよ。冷凍庫で補完すれば2週間もつので、たくさんつくっておいて毎日の料理に使っています。
遠藤さん:それは、おみそ汁に入れたりとかするんですか?
加藤さん:スープに入れたり、煮物に入れたり。煮魚を氷だしで煮るようにしたら、塩分が1/3や1/4に下がるのに、味があってうま味があってすごくおいしくて。今回食べてほしくて持ってきています!
遠藤さん:ありがとうございます。
加藤さん:ゆでたホウレン草に氷だしを入れて混ぜ合わせただけのおひたしです。ぜひ食べてみてください。
夫・加トちゃんの夢を実現するために必要な「自立支援」とは?
数多くの介護関連の資格取得を通じて、介護への考え方が変わったという加藤さん。介護を学ぶうえで、実際に加藤茶さんとの暮らしで実践していることについて教えてくれました。
●加藤さんが介護に関する資格を7つ取得した理由
遠藤さん:資格は介護食アドバイザー以外にも取られているんですか?
加藤さん:介護初任者研修と介護実務者研修、食育インストラクター、生活習慣病アドバイザーとか7個ぐらいは取っていると思います。5、6年かけて取りましたね。
遠藤さん:そういうふうに資格を取っていこうって思ったきっかけは?
加藤さん:結婚した時が23歳だったので介護なんて興味もなく、結婚した当時にネットで、いずれ介護になるよとか言われたんですけど、自分には一切関係ないことだと思っていたんです。
でも、結婚して25歳の時に加トちゃんがパーキンソン症候群っていう病気になり、点滴だけで生活するようになって。入院も長かったので私は隣に付き添うだけでなにもできなくて。そのときに、「こうなるなら、ちゃんと(資格を)取っておけばよかった」と思ったんです。加トちゃんがリハビリに入ったタイミングで、学校に通い直すことにしました。
遠藤さん:なるほど。
加藤さん:コロナ期間中に身近な方が亡くなったり、寝たきりになったりということを経験して、介護実務者研修を取りました。なにかあったときにも身構えられる、動揺しない自分になろうと思って。
介護実務者研修で教わった自立支援
遠藤さん:介護実務者研修で教わったことは?
加藤さん:それが「自立支援」という言葉なのですが、そこがいちばん衝撃でした。私は今まで、加トちゃんの靴下を履かせてあげたり、なにかあったらお茶を取ってあげたりとか、できるだけ動かさないようにしていたんですけど、それが愛じゃないって先生に教わって。「あなたが本当に加トちゃんを愛しているんだったら、加トちゃんができることを奪わないであげて」って言われました。
遠藤さん:それはいい話ですね。
加藤さん:やっぱり自立支援ってすごく大事ですよね。
遠藤さん:(綾菜さんの夢は)加トちゃんの夢を叶えることだと、前にお聞きしたことがあるんですけど、どのようなことですか?
加藤さん:加トちゃんの夢が108歳で、108歳は「茶寿」って言うんですよ。加藤茶の茶に寿って書いて茶寿。だから、「俺は108歳まで生きる。95歳までは現役で舞台に立つ」っていう夢があり、それを絶対に叶えたいと思って私もサポートしています。
人手不足やテクノロジーの導入…未来の介護のあり方
2040年には介護業界で働く人が69万人足りなくなるという試算が出ていると言います。そこで、遠藤さんが介護現場に現在導入されているテクノロジーのことや、働きがいのある仕事になるためにしている工夫について語ってくれました。
●これからの介護業界の課題
加藤さん:そもそも介護をする人材を増やすためにどのような取り組みをすればいいと思っていますか?
遠藤さん:これはいちばん重要なテーマです。まず、介護を目指す人はうちにも毎年300人前後の新卒職員が入社してくるんです。なんで介護業界を目指してきたのか聞くと、子どもの頃おじいちゃん、おばあちゃんに大変かわいがってもらって、恩返ししようと思った時にはもう亡くなったので、この仕事に入って社会的に恩返ししたいっていう子が大体30〜40%くらい毎年いるんですよ。こういう子たちが入社してきて、悩みにぶつかって、辞めていってしまう。こんなにもったいないことはない。
だからまず1つは教育だと思いまして。今SOMPOには「SOMPOケアユニバーシティ」っていう、いわゆる企業内大学があって。教育に徹底的に力を入れているんです。そうしたら私が社長になった時に4人に1人がやめていく25%ぐらいだった離職率が今11%ぐらいまで下がって。だから、まず教育をしっかりすることですね。
それから次に働きがいです。働きがいは自分がケアしているご入居者やご利用者が元気になるとか笑顔が出るとか、これがいちばんうれしいんです。だから自立支援はものすごく重要なんですが、そういうことに向き合える時間を多くつくることが必要です。今SOMPOケアでは業界の先頭に立ってテクノロジーの導入・利用、それは入居者にとってもケアの質、サービスの質が上がる、働く人にとっては効率がよくなるということを目指しています。
●今、家族の介護に向き合っている人に伝えたいこと
遠藤さん:最後に、今まさに家庭内で介護している方とか、あるいは当社のように実際に介護の従事者として働いている方に綾菜さんからなにかメッセージを送ってくれませんか?
加藤さん:私はひとりで抱え込む期間が2年ぐらいあって、すごくつらい思いをしたんですけど、今私に相談してくれる方もほぼ1人で両親を看ているとか、高校生1人でお母さんを看ているとか…。
遠藤さん:ヤングケアラーですね。
加藤さん:すごく多くて。でも絶対に相談してほしいです。相談できるところはいっぱいあるので、ひとりで抱え込まないでほしい。あと、私は今芸能界の仕事もやっていますけど、これから介護の現場に行きたいっていうのはすごくあって。こんなにテクノロジーが私の知らない間に発達しているっていうのを知ったら、ますます働きたいという思いが出たので、ぜひ一緒にがんばりましょう!
問い合わせ先/SOMPOホールディングス
監修/田中勝久先生(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 臨床栄養部 栄養管理室 室長)※「介護予防の食事とは?」のみ