世界中から客が押し寄せ、ハイシーズンには1、2時間待ちも当たり前というチキングリルの名店が、ポルトガルにあります。
ここでは、フードライターの馬田草織さんがそのお店を訪問、実際に食べてみて、自宅でも再現できるようにアレンジしたレシピを教えてくれました。
ピリ辛ソースが刺激的な、やみつきチキングリルをぜひ、試してみて!
某国の王子様やミュージシャンもやってくる、チキンピリピリの名店
ピリリと辛いソースをたっぷり塗った若鶏のグリル「チキンピリピリ」は、ポルトガルの屋台や炭火焼専門店などでよく見るメニュー。南端の海沿いアルガルヴェ地方のギアという町には、世界じゅうからお客が集まる人気店があると聞き、現地に住む友人と一緒に店を訪ねました。
すべての画像を見る(全7枚)日本では知名度の低いチキンピリピリですが、イギリスやアフリカ、オーストラリアなどにはチェーン店もあり、テイクアウトに便利で人気も高い料理。かつてポルトガルの植民地だったアフリカのアンゴラやモザンビークなどでピリピリ(唐辛子)を使ったグリルチキンが生まれ、ポルトガルにも伝わり、フランチャイズの店とともに世界に広まっています。
1964年創業の老舗「レスタウランテ・ラミレス」には、国内はもちろん、ヨーロッパをはじめ世界各国からの観光客や、お供を従えたアフリカのとある国の王子やイギリスのミュージシャンまで、ここのチキンを目指してやってきます。
夏のリゾートシーズンになると込み具合は最高潮になり、小さな町の通りには昼夜決まって長蛇の列ができ、いつも1、2時間は待つのが当たり前。なにもなかったこの町は、ラミレスのおかげで今やチキンピリピリのメッカとなりました。
店のメニューは極めてシンプル。基本はスパイシーなチキンピリピリ(ハーフで約650g)、クリスピーなポテトフライ、そして新鮮なトマトサラダの3つ。友人によると、重要な役割を果たすパンも頼むことを忘れてはいけないそう。
炭火で香ばしく焼かれた若鶏は、皮がぱりっと、中はふっくら。ニンニクやピリピリなどでつくられた特製ソースは、強気な辛さが地中海性気候のアルガルヴェにぴったり。じんわり汗が出てきます。一度食べだすと、まるでカニを食べているときのように全員無言になってしまうのです。
オリーブオイルとビネガー、オレガノと塩をふっただけのシンプルなトマトサラダは、辛口モードの口の中をリセットする欠かせない存在。シンプルに揚げただけのジャガイモが、これまたチキンによく合います。
そんなポルトガルのチキンピリピリが家でも食べたくなり、鶏の手羽先を使って再現してみました。ピリ辛ソースの隠し味はワインヴィネガー。ビールがおいしくなるこれからの季節にぴったりの味です。
●ピリピリチキン(Frango Assado com Piri-Piri)
肉をソースでマリネして、味をしっかりなじませてから焼くバージョンです。
ソースをパンでぬぐったり、ご飯にチキンとソースごとのせるのもあり。
【材料(2人分)】
・鶏手羽先 4~5本
・塩、粗びきコショウ(黒) 各適量
・ピリピリソース[オリーブオイル大さじ2 ニンニク(すりおろす)大1かけ 唐辛子(輪切り)1本分 一味唐辛子大さじ1/2 白ワインビネガー大さじ1 パプリカパウダー小さじ1]
【つくり方】
(1) 鶏の手羽先は骨に添って縦に包丁を入れ、皮目はフォークで数か所穴をあける。
(2) ラップを敷いて鶏肉を並べ、両面に軽く塩、粗挽き黒コショウをふって5分おく。
(3) ピリピリソースの材料をボウルに入れてよく混ぜる。
(4) 鶏肉の両面に3を塗り、ラップを上からもう1枚重ねて肉全体をぴっちり包む。冷蔵庫で最低30分はおいて味をなじませる(ひと晩おいてもよい)。
(5) 魚焼きグリルや網にのせ、中火で皮目を7~8分、こんがり焼けたら返して反対側を3~4分焼く。フライパンの場合は皮目が焦げやすいので注意。オーブンの場合200℃で20分ぐらいが目安。
馬田さんの著書
『ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター刊)には、今回紹介したピリピリチキンをはじめとしたポルトガルの食の魅力がつづられています。
天ぷらやカステラなど、日本食にも大きな影響を与えたポルトガル料理を訪ね歩いた珠玉の食紀行。ポルトガルの豊かな食文化に興味がわいたら、ぜひ、手に取ってみてください。
<取材・文・写真/馬田草織>