作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。悲しいことが多く起きた新年、感じたことについてつづってくれました。

関連記事

「捨てられない」けれど快適に暮らす人の「ものの持ち方」。代用できるものは買わない

第114回「身近な人を褒めよう2024」

暮らしっく
すべての画像を見る(全3枚)

新年一本目の「暮らしっく」です。今年も暮らしの中の気づきを書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

●悲しい幕開けになった新年

心配なことが続く年明けでしたね。いつもどおりの生活を送れる人はそうしていいのだよという言葉がSNSで流れる。そりゃそうだと、友達と飲みに行ったりお笑い番組を見たりするけど、どうしても気持ちは沈む。確かに楽しいけれど、晴れ晴れとした気持ちにはなれないのだった。

私たちは、大きな天災や戦争が起こって、初めて苦しんでいる人の存在に気づいているのだと思った。世界で爆撃が続くことに胸を痛める一方で、今の日本でも、引きこもりは100万人を越え、自ら命を絶つ人も、児童虐待も後を絶たない。それが災害時のように自分ごとにならないのは、見えづらいからだと思う。

どこかで悲しいことが起きたとき、現場にすぐ駆けつけたり募金することももちろん大切だけれど、私達ができることの一つは、隣にいる人を大切にすることではないか。小さな痛みに耳を傾け、みんなが身近にいる人を大切にできれば、回り回ってきっと世界は良くなるだろう。

●褒められることで救われる人も多い

褒め合う女性たち
※写真はイメージです

東京から地方に移住した知人とメールをしていたときのこと。

「移住とともに転職をしたんだけれど、自分にしかできない仕事というわけではなくて、自分のアイデンティティが失われた気がする」と言った。

自分にしかできない事や人から必要とされることが、自分の存在を肯定してきたということだった。

「いやいや、◯◯ちゃんはこんなこともできるし、あんなこともできるし、周りの人はきっと助かっていると思うよ」

と言うと、すごく喜んでくれた。だって、本当のことなんだもの。そういう私だって、自己肯定感は薄めだ。

「私だって、本屋に行ってあの山積みの本を見たら、私なんて書かんくてええやんって思うよ」

「いやいや、久美子ちゃんの言葉を求めている私みたいな人がいっぱいいるんだよ」

そう言って彼女も褒めてくれた。大人二人でなにやってんだってことなんだけど、でも、こういうの必要かもなあ。

「大人になるとなかなか褒めてもらえないね」と私。

「たしかに、そうだね…」

そうか、これだなあ。小さな喜びその1。今年は身近な人をたくさん褒めようと思った。海外の友人はすぐに「その服素敵だね」とか、「久美子のそういうところ大好き!」と言ってくれる。小っ恥ずかしいけど素直に嬉しいものだ。自分はここにいていいんだなと思えるし、私もそうやって大らかにいたいと思う。