日本では2000年に発売され、400万部を超える大ベストセラーとなったビジネス書『チーズはどこへ消えた?』。その続編となる『迷路の外には何がある?』(原題:『Out of the Maze』)が、本日いよいよ発売に。

ひと足先に発売されているアメリカでの反響を、現地在住のライター・Norikoさんがレポートしてくれました。

迷路の外には何がある?
『チーズはどこへ消えた?』の続編『迷路の外には何がある?』が発売に
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大谷翔平選手も愛読!『チーズはどこへ消えた?』の続編が発売に

●アメリカで『チーズはどこへ消えた?』続編発売

2018年11月13日、『Out of the Maze』というビジネス書が発売されました。日本語にすれば、「迷路の外」という意味のタイトルです。どういう内容なのかは、これが『チーズはどこへ消えた?』の続編だと聞けば、ピンとくる方もいるかもしれません。

そもそも『チーズはどこへ消えた?』は、どんな本だったのでしょうか。おさらいしてみます。

これは、ネズミのスニッフとスカリー、小人のヘムとホーの物語。それぞれ「迷路」の中で暮らし、「チーズ」を探します。ついにチーズを発見した2匹と2人でしたが、ある日突然、そのチーズが消えてしまいます。それがわかったとき、2匹と2人がそれぞれに取った行動とは…?

つまり、「チーズ」は仕事や家族など人生において私たちが求めるもののシンボル、「迷路」は会社や家庭などチーズを求める環境のシンボルとして、物語は展開していきます。

日本では2000年11月27日に発売し、翌年の年間売り上げ第1位を獲得。パロディーや類似本も次々と出て、一大ブームになったことを記憶している方は多いでしょう。

それだけでもすごいことですが、発売から16年たった頃に再ブレイクを果たします。ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムに所属し、投打「二刀流」で史上初となるメジャーリーグ新人王を獲得した大谷翔平選手が、北海道日本ハムファイターズ時代に愛読書する1冊として紹介したことがきっかけでした。

世代を超えて読み継がれる自己啓発書となった本書は、日本だけで400万部、世界では2800万部を突破。アマゾン史上最大のベストセラーとして、今日に至っています。

●気になる続編の内容とは?

迷路の外には何がある?

続編となる『Out of the Maze』は、小人のヘムの物語です。前作でネズミのスニッフとスカリー、小人のホーは、再び「迷路」で新しい「チーズ」を探し、見つけることができました。しかし、ヘムだけは、チーズが消えてしまった場所にとどまったままでした。環境の変化に適応したスニッフとスカリー、ホーに対し、ヘムは適応できずにまったく動けなかったということです。

続編はヘムのように「現状から抜け出したいけれど、なにをどうしたらいいのかわからない」人に向け、よりつっ込んだ内容となっています。チーズを手に入れたいヘム。しかし、そもそも食べ物はチーズだけなのか? 迷路の「外」には行けないのか? ヘムを通して、固定観念を捨てて、人生を変える方法を探っていきます。

迷路の外には何がある?

作者のスペンサー・ジョンソン氏は、本作の編集中にすい臓がんで亡くなりました。遺作となった同書の巻末に、ジョンソン氏が闘病中に心境をつづった手紙の内容も紹介されています。同氏のがんとの向き合い方はそのまま、『Out Of the Maze』の物語が私たち伝える内容に重なります。

●新しい時代に即した1冊

迷路の外には何がある?

近所の書店を覗いてみると、『Out of the Maze』は、ビジネス書のコーナーで見つけることができました。表紙は、前作のテーマだったチーズから、今回ヘムが見つけた新たな食べ物「リンゴ」へとイラストは変わっていますが、基本的なデザインはそのままで、2冊が同じシリーズ本だとわかるようになっています。

近所の図書館では12冊導入されていましたが、すべて貸し出し中でした。オーディオブックのCD5枚もすべて使用中とのこと。

オンラインのレビューサイトを見ても8割以上のユーザーが最高評価の5をつけています。読んだ人の声としては、「前作ではチャレンジし続けることの大切さを学んだ。新作では壁にぶつかったときに前へ進む方法を学べる」「すぐに読めて手軽なのに、重要なアイデアがたくさんつまっている」「たくさんの人に読んでほしい」「ギフトにぴったり」などなど…。

私も早速『Out of the Maze』を読んでみました。まず、この物語で描かれる「1つの考えに固執せず、柔軟に新しい考えに転換していく力」についてですが、アマゾンやマイクロソフトの本社があるシアトルに住み、ITやAIによる変化を目の当たりにしている私には、ものすごくしっくりきます。

コンピューターやインターネットがそれまでの常識を変え、AIによってさらにまったく新しい常識に塗り替えられようとしている時代、ますます求められるメッセージでしょう。将来的には子どもにも知ってほしい内容だと感じました。

現在、7歳のわが息子。『チーズはどこへ消えた?』に出てくるネズミと小人の物語を聞かせ、自分ならどうするかたずねたところ、間髪入れずに、また新しいチーズを探すと答えました。小人が取った行動を話すと、笑いながら「どうしてすぐにチーズを探しに行かないんだろう?」と不思議そうです。まだまだネズミに近い年齢なのでしょうか。

そんな彼もまた、いずれ小人のように思い悩む時期に差しかかるはず。その際、この2冊のストーリーは、かつて大谷選手を勇気づけたように、息子にとってなんらかの気づきにつながるかもしれません。

日本語版である

『迷路の外には何がある?』

(扶桑社刊)は、本日発売となります。奇しくも、2020年の東京五輪を目前に控え、平成が終わって新元号に替わる、まさに節目。新時代に向けてなにかを変えるタイミングにある方々にはとくに、ヒントがもらえる1冊となるのではないでしょうか。

【Norikoさん】

アメリカ・シアトル在住。現地の日系タウン誌編集長職を経てフリーランス・エディター/ライターとなり、日米のメディアに旅行情報からライフスタイル、子育て事情まで多数の記事を寄稿する。著書に『アメリカ西海岸ママ~日本とは少し違うかもしれない、はじめての妊娠&出産~』(海外書き人クラブ刊)、共著書に『ビックリ!!世界の小学生』(角川つばさ文庫)