作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。夏休みが近いこの季節、旅行についてつづってくれました。

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第101回「夏の家族旅行」

暮らしっく
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夏休みが近づくと、大人も子どもも旅に出たくなってくる。夏らしく、海や山へ行くのもいいけれど、電車に乗って隣県のかき氷屋さんや、美術館、行ってみたかった雑貨屋へぶらり旅はいかがでしょうか。車でぴょいっと行けるところを、あえて電車で行くのです!

でも、家族が多いと一人旅というわけにもいかないのだなと姉を見ていて思うのだった。

「たまには、気軽に電車で行ったら同じ県内でも視点も変わって子どもたちも楽しいんでないん?」

「確かになあ。でも特急電車賃かなりかかるよー」

そうなのだ、我が家は同じ愛媛県内でも香川県よりなので松山へいくのもかなり時間もお金もかかる。

「まあねえ。そこは回数券を買うとか?」

回数券だと割引になるということで母や父も一緒に行くことになり、みんなで美術館やお城を楽しんだようだ。

愛媛だと、スーパーや美容院、カフェ、どこへ行くにも車になる。

家族旅行をするとなっても車での旅が多い。姉家族も、夫妻が運転して子どもたちは後部座席にじっと座って、ときに喧嘩勃発なんてことにもなりますねえ。

電車

電車旅、家族が多いとどうしても交通費のことを考えてしまうけれど、電車や船などでの「移動」は子どもたちにとっては非日常。大人が思うよりも、旅のメイン行程になると思う。

それほど遠くへ行かずとも、隣県や、県内を電車で旅してみる。

家族だけの密室空間でなくなり、きょうだい喧嘩もなくなるし、ときに他のお客さんとの交流もうまれたり、子どもたちにとっても刺激的な経験になる。

夏休みの旅と思うと、はりきって遠出したくなる気持ちも分かるのだけれど、自分の知らない風景の中を歩けばどこだって未知との遭遇だと思う。

「電車の旅楽しかったよ」

と、子どもたちが松山から帰ってきた。姉も駐車場でやきもきすることなく気楽だったと言った。いつもなら姉が運転しているので道中で顔を見合わせて話すことはできないけれど、車窓からの景色を見ながらいろんな話ができた子どもたちは嬉しかったようだ。

●母と名古屋を旅して

電車の中
瀬戸大橋を渡って岡山へ

私は、母と数年に一度は旅をするのだけれど、今年は名古屋へいった。在来線で岡山へ出て、そこから新幹線で名古屋に出るという、なかなかの長旅だった。普段同じ家で暮らす家族でも旅という非日常は、特別な時間をもたらしてくれる。畑仕事とか家事とか、やるべきことから開放されて、生活から切り離されるので、一人の人として見えた気がする。

母は着いて早々に「膝が痛い」と言い出した。ええ! 家では、『るるぶ』を買って、あんなに旅を楽しみにしていたのに。そういえば最近膝の調子が悪いと言ってたなあ…。気持ちは若いけど体力は以前よりも落ちているんだなあ。

名古屋城
名古屋城

そこから数日間、名古屋市内での移動はタクシーにした。長く歩くのは難しいので、行けるところと行けないところが出てきて、計画していた半分くらいしか行けなかった。それでも、十分に旅を楽しめた。

本丸
名古屋城の本丸御殿は見事でした

子どもとの旅か、高齢の親とか、友人か。誰と行くかで旅の内容はかわるなあと思ったのだった。家族旅行って、年齢の幅も趣味の違いもあるけれど、同じ景色を見ながら目的地へ向かうその行程こそが夏の思い出になるなあとも思うのだ。

ひつまぶし
タクシーの運転手さんおすすめのしら河のひつまぶし

良い旅ってどういう旅だろうかと考えたとき、一緒に行く人によって楽しみ方を変えられることではないかなと思う。欲張らずに1か所をじっくりと楽しむことを勧めたい。私達の名古屋旅は二泊三日だったので、飛騨高山へも足を伸ばそうかと思っていたけれど、名古屋からの往復だけでも4時間以上かかるので、今回は名古屋をじっくり散策し食を楽しむことにした。家で計画していたよりも夏の日差しに疲れるし、お店は行列だったり、膝が痛くなったり、旅先でのハプニングは、つきもの。

絶対に行きたいところと、行けたら行きたいところに分けておくといい。

●旅を楽しむために

そして、家で計画するときにお勧めなのが、同じエリアにある喫茶店、観光施設、レストランなどなどを地図に書き込んでおくこと!

ああ、ここも行きたかったんだ。とまた逆走することになると、移動であっという間に一日が終わってしまうので、同じエリアで行きたい場所は確実にチェックしておくのだ。

とはいえ、私一人の旅のときは行き当たりばったりである。ほとんど事前に調べないし、街をうろうろして気になったところへ入り、失敗も楽しめる。それは一人旅に限りますね。家族と一緒の旅は、行く前に話し合ってどこへ行きたいかを聞いて、ツアーコンダクターのようにタイムスケジュールを作るマメさなのだった。

 

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