2018年の年末から2019年の年始にかけて、海外旅行へ出かけた人の数が過去最高になるなど、海外旅行へ行く人が増えています。ただし同時に、海外でトラブルに遭う人も増えるということにも。

50か国200都市を超える海外旅行経験があるライターの朝岡真梨さんが、海外旅行でのトラブル体験について教えてくれました。

トラブルは突然に!ヒヤっとした海外旅行中のプチ事件

今年のゴールデンウィークは長い連休となります。10連休にして、海外でのバカンスを楽しもうと計画されている方も多いのでは。

しかし、文化や価値観が日本とは異なる海外では、ニュースに取り上げられないような、さまざまな事件や事故が日常的に発生しています。予期せぬ事態によって、楽しい旅行の思い出がだいなしになってしまうことも少なくありません。そこで今回は危険レベルが比較的低いとされているヨーロッパで、私が実際に経験したトラブルの体験談をご紹介しようと思います。

オーストリア
ヨーロッパで実際に体験!海外旅行中のトラブル
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●オーストリアの国際電車でバッグごと盗難される

その日私は、オーストリアでの観光を終え、電車に乗ってドイツを目指していました。大きなバッグを2つ、電車の網棚に乗せておいたのですが、目的地に到着すると、そのうちの片方のバッグが消えていたのです。

車両をくまなく探しまわったのですが、結局見つけることができませんでした。遊び疲れてうっかり眠ってしまったという不注意もあり、盗難の被害にあってしまったのです。

幸いにも、財布やパスポートはコートのポケットにいれていたので、盗まれたのは、ガイドブックやカメラ、お気に入りのヌイグルミですみました。
しかしドイツの駅に到着してから、駅構内にある交番に被害を訴えに行くと、思わぬことを告げられたのです。

●バッグを盗まれたのに被害届を出せない!?

ミュンヘン駅

駅の構内にある交番へ行き、私が乗っていた電車のチケットを見せながら、「この列車のこの席で網棚に置いておいたバッグを盗まれてしまったのです」と被害の説明をすると、「捜査はできない」と言われてしまいました。

ドイツの警察によると、オーストリアの途中駅で乗り込んできて、電車が発車するタイミングに荷物を持ち去って降りて逃げるという事件が多発しているのだそう。

「犯行は恐らくオーストリア国内で行われているものなので、届けるなら事件が発生したオーストリアの警察に相談してください。ここは管轄外だから。パスポートと財布があるならよかったじゃないですか!」と言われてしまいました。

領事館にも電話したのですが「こちらでできることはなにもありません」と一言でおしまい。

パスポート

確かに、パスポートや財布をあのバッグに入れていたらと思うと、かなりヒヤリとする場面ではあります。

旅行というスケジュールや時間が限られたなかで、結局オーストラリアの警察に被害を相談することもできず、あのバッグが返ってくることはありませんでした。

なによりショックだったのが、カメラを盗まれてしまったことで、旅行中の写真までも失ったことです。旅をともにしたヌイグルミにもプライスレスな思い入れがつまっていたので、帰国後も、お金ではなかなか解決できない精神的なダメージが残りました。

海外で電車に乗るときには、貴重品が入ったバッグを網棚におかない、居眠りをしないなど、注意を徹底すべきと身にしみました。

●ポルトガルで困っている人に遭遇した

ポルトガル

また別の旅行で、早朝、夫と一緒にポルトガルの都市・ポルトの川辺を散歩していたときのこと。

ポルトのドウロ川は、名産のポートワインのワイナリーが立ち並び、日中はとてもにぎやかな場所なのですが、朝は人気も少なく驚くほど静か。

そんなところに、若い男性が「助けてほしい」と話しかけてきたのです。

「50セントがなくて、電車に乗れなくて困っているんだ。もし50セントがあれば、貸してもらうことはできないだろうか」

50セントといえば、日本円にして50円ちょっと。ユーロの価値で換算しても、とても安い金額です。

今っぽい服装で、とてもきれいな身なりの男性が、たった50セントがなくて家に帰れないという状況はとてもおかしなものだとは思ったのですが、「今、散歩をしにきているだけで、お財布をホテルの金庫に置きっぱなしなんだよ。50セントすらも持ち合わせていないのだ。ごめん」と話すと、男性はそのまま去って行ってしまいました。

「本当に困っているのなら申し訳なかったね」と話しながら、気になって後ろを振り返ると、なんと男は友人と思しき2人と合流していたのです。

●親切な心につけこむ!悪質な手口

「大人が3人もいて、50セントがなくて家に帰れないっておかしくない?」と話しながら、ホテルの人にこの話をすると…。

「少額のお金を貸してほしいとお願いされて、親切にも自分の財布を取り出すと、殴るなどして財布ごと持ち去られるんだよ」
流行りの手口だったことを聞き、「お財布を見せていたら最後」という言葉に、足が震えるほど怖くなりました。

ポルトガル

この近くでは、旅行客を狙った寸借詐欺による強盗事件が多発しているそう。もともとポルトガルの人は、クレジットカードで買い物するのが一般的で、現金をほとんど使わないというのです。

しかし、観光客は違います。とくに日本人の男性は、必ず外出時に現金を持っているというイメージがあるそうで、この寸借詐欺や強盗の被害に遭いやすいのだそう。

貴重品を持ち歩く際には、人気のない場所へ行かない、見えないところへしまっておくなどの注意をした方がいいと思います。

出かける前にチェックしておきたい外務省や大使館のホームページ

日本は島国なので、国境をまたぐ国際電車の感覚がピンと来ないところがあったり、50セントくらいなら助けてあげたいなと思ってしまいますよね。

注意しなければとわかってはいても、少し肩の力を抜いてリラックスした瞬間の油断や隙を、悪い人たちは常に狙っているのだなということを感じた、ヨーロッパでのプチ事件。

ちなみに、今回ご紹介したこの2つの事例は、外務省の海外安全HPや現地の日本大使館のHPなどでも注意が喚起されているほど、頻発している有名な手口でした。
これらのサイトには、直近で流行している事件や日本人が被害に遭いやすい状況など、トラブルの事例がかなり細かく網羅されています。

海外旅行というと、ついついガイドブックの楽しい情報ばかりに目がいってしまいますが、政府が発信している安全対策も、しっかり読んでおくようにしてくださいね。
海外で怖い思いをしないで、楽しい時間を過ごすためにも、そういった準備をお忘れなく。