『ドラえもん』のスネ夫役をはじめ、『鬼滅の刃』の不死川実弥役や『PSYCHO-PASS』狡噛慎也役など、話題作に多数出演している人気声優・関智一さんの暮らしのエッセイ。今回は、最近関さんが挑戦した新たなことについてつづってもらいました。

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関智一、新しいことに挑んでみました!

――新しいことに挑戦してみよう。

関智一さん
関智一さん
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そう思っていくつかの初体験を企てた。最初の挑戦は「書道」。ひょんなことから友人に勧められたのだ。お試しで気軽に、道具を持っていなくても体験できるという。

昔から興味をもちながらも、現在に至るまで一度も手を出さずじまいだった書道。これはいい機会だ。早速書道教室に出かけることにした。

●心を落ち着かせる不思議な体験

指定されたのは繁華街の雑居ビル。階段で2階に上がると小さな看板が置いてあり書道教室と書いてあった。ここだ。恐る恐るドアを開けると、静まり返った室内に、机に向かう数名の男女が見えた。

その誰もがとても集中している様子で、入室した私にまったく気がつかない。視線を移すと、部屋の一番奥の机に座る、穏やかな雰囲気の女性と目が合った。どうやらこの教室の先生のようだ。先生は私を部屋に招き入れると、優しい口調で話しかけてくれた。

「関さんですね。話は伺っています。“漢字”と“かな”、どちらを体験なさいますか?」

そう言いながら先生は私にお手本を見せてくれた。私は一目でやわらかな書体で書かれた「ひらがな」に惹かれて、そちらを希望。先生は微かに微笑みながら「かな書道ですね」と念を押した。

かな書道とは、日本独自の文字である「かな文字」で書かれた書道の事を指すそうだ。短歌や俳句でよく用いられるアレである。

先生は手早く書道具を準備すると、固形墨を硯で磨って墨をつくる方法を丁寧に教えて下さいました。まず硯の丘と呼ばれる平らな部分に五百円玉ほどの大きさの水を置く。

書道中の関さん

その水の上に手に持った固形墨を置き、円を描く様にゆっくりと動かし墨を磨っていく。静かな部屋で、繰り返し墨を動かすうち、次第に心が落ち着いていく気がするから不思議だ。

墨の準備が整った。先生が真新しい筆を私に手渡し「かな書道は繊細な筆運びが求められるので、おもに小筆を使って書きます」と仰った。小筆は穂先の部分のみを使って書くことがほとんどなので、先端の3分の1くらいを筆下ろしするのだそう。