ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
@inubot。
ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第7回は、年越しと、お正月のこと。
2018年から2019年へ。犬と過ごした見事な寝正月
朝の寒さで、いやでも肩に力が入る。ジャンパーの下に何枚も着込んで2018年最後の朝の散歩に出かける。
幼少時から「今年最後」みたいな枕詞にはしゃいだが、犬がきてからはやたらとなんにでもつけるようになった。
普段から静かな町の人通りはいっそう少なくて、外を歩いているのは私と犬だけだ。
顔を合わせれば挨拶をするおばあちゃんの家からおいしそうなにおいがしてきたり、大晦日の朝の少しだけ非日常めいた雰囲気のなかで、いつものようにくわえた枝を振り回す犬の背中をちゃんと見ておこうと意識する。
同じくわが家も年越しの準備をしていて、家に帰れば母がしめ縄の紙垂(しで)をつくっていた。
しめ縄は家の玄関や車に飾られるが、2018年一度も中に入ることがなかった犬のゲージにも飾られた。年賀状にしたいくらいおめでたい絵面だ。
少し掃除をしては長めの休憩を繰り返していたら、いつの間にか夕方になっていて犬を見やるとしっかり目が合った。朝も着ていたジャンパーを手に取れば、すぐさま準備運動を始める。
散歩や近所用に普段使いしているジャンパーがあって、4年は愛用している。私がこのジャンパーを着ると、犬はいつどんなタイミングだろうと体をぐぅぅ~っと伸ばして出かける支度をするようになった。
21時をまわった頃、年越しのために実家に帰ってくる妹を迎えに行こうとジャンパーに腕を通せば、それまで紅白を見る母のとなりで体を丸めていびきをかいていたのに、すぐにこちらに向かってきて体を伸ばした。
あなたも行くの? と問う私を置いて、行かない以外の選択肢がないとでも言いたげに犬は玄関に向かう。犬を助手席に乗せるのも、2018年最後だ。
「犬~! ただいま~! ほんま疲れた~」とにぎやかに後部座席に乗り込んできた妹を連れて帰る車中、犬の顔を見て「やっぱり」と思うことがあった。
この日に限ったことではなく、写真の撮り方でもなく、妹を乗せた帰り道は犬の表情がずっと明るい、と思う。行き道とでは表情がまったく変わって見えた。
妹が晩ご飯を食べる間は見守るように起きていたが、コタツで紅白を見始めたら寝床でぱたっと眠りについた。
第四回で書いたが、十数年私と妹は年が明ける0時にジャンプをしている。今回は犬から少し離れて低く飛んだりしてみたが、起こしてしまった。うるさくしてすみません、そして明けましておめでとう。ちょうど風呂上がりの母もやってきたので、ふたりも新年の挨拶を交わす。
●1月1日 AM6:50
仕事に行く妹を見送りたい気持ちがあったのだろうか。のそりと立ち上がると体を激しく振って、いわゆる柴ドリルを行ったが、さすがに再びまぶたが閉じられた。
それからまた少し眠ると、気持ちがいい快晴のなか2019年最初の散歩へ。
空気は冷たいが太陽の光にあたっていると暖かく、霜がおりた草たちに日が差して光っている。
この日、私と犬はコタツの住人となり、見事な寝正月を過ごした。
自分の惰眠を置いといて、昨晩いつもより寝られなかったのもあるだろうがよく寝る犬を心配すると、母から「犬も正月休みや」と返ってきた。
犬とお正月を過ごすのは今年で五度目だ。書きながら気づいたが、これまで元日はいつも働いていたので、朝から犬とゆっくり散歩に行って、一緒にコタツで過ごすなんて初めてだった。
家族とおせちを食べて、海原やすよともこの漫才に腹から笑い、犬をなで、犬と眠る。
なんてぜいたくな時間だろう。一年の計は元旦にありという言葉が本当であれと心底思った。そしたら2019年は最高だ。
2日も引き続き寝正月を過ごし、帰宅した妹がきっかけとなって3日の夕方に母と犬も誘って初詣に出かけた。
特大絵馬の前でみんなの写真を撮ると、妹がめずらしく「ねえも撮ろう」と犬と撮ってくれた。写真のなかの犬はいつものジャンパーに抱えられて絵馬に描かれた干支を見ていた。亥年もどうかよろしくね。
【写真・文/北田瑞絵】 1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubotを運営