ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
@inubot。
ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第6回は、今年1年を振り返って思うこと。
1年間のできごとを振り返って、真っ先に思い浮かぶのは犬の日常風景
2018年戌年が終わるまで1か月をきった。犬の体を覆っている毛は夏の終わりから秋にかけて一度生え替わったのだが、11月半ばから気温が下がってくるにつれて冬支度とばかりにまた換毛期を迎えた。犬の毛並みや、部屋の中で暖かい場所を見つけて眠っている様子に、冬の始まりを感じる。
すべての画像を見る(全33枚)11月8日 妹と犬と朝の散歩をしていたら、突然妹が「ねぇの今年1年の総括を聞かせて」と言ってきた。
完全に気を抜いていた脳を起こして1年間のできごとを振り返ったが、真っ先に思い浮かんできたのは犬との日常風景だった。
朝起きて険しい顔でぐぅぅっと伸びてしなる体とか、ボールをくわえたときの犬歯の白さとか、私の背中にぴったりくっついてくるぬくもりだとか。
よくテレビを集中して見ていると背中に犬がくっついてくる。私との間に少しの隙間もなく寄り添ってくるのに、背中合わせなところが犬らしい。
そんなことを考えていたら少しもまとめられないまま、公園に到着したとともに話題終了となった。公園に着けば犬の時間だ。
総括は始まりすらしなかったが、今年を振り返ったらまず日々の暮らしの犬がいる風景が浮かんできたときに「あぁ私はいい1年を過ごしたんだな」と心から思った。
今年の頭から写真を見返していくと、春夏秋冬を犬と楽しんでいる時間が写っていた。
2月に東京、3月に宮城で個展をしていたので、この2か月間は家をあけることが多かった。
私が出かけても家には両親と兄がいるので心配いらないのだが、それでも気がかりで、今日はうんちをしたのかご飯は食べたのかなどいろいろ考えてしまって、宮城では砂浜に犬を描くほどに思い焦がれた。
犬は、私がたった20分の買い物から帰ってきたときもしっぽを振って出迎えてくれるのだが、数日ぶりに帰ってきたときにはそれはもう走るわ跳ねるわ、喋ってこそいないが、「おかえり!!!」と大声で言ってくれているように見えた。
「ただいま」と犬に言うと、出先で力んでいた体から力が抜けていく。犬の前ではみっともなくてもいいのだ。
去年に比べて今年は妹がよく家に帰って来ることができた。
犬に「これから妹が帰ってくるよ」と話しかけると、いつなにをしていてもハッと顔を上げて私の目を見る。
憶測にすぎないが「散歩に行こう」「おやつ食べる?」そして「妹が帰ってくる」という言葉はわかっているのではないだろうか。
よく一緒に妹を駅まで迎えに行くのだが、犬は構内から出てくる人のなかから妹の姿を見つけたら一目散に走っていく。
私のそばに犬がやってきて眠ることもあれば、犬のそばに私が近寄って眠ることもある。
私だけではなくて、1年をとおして母や兄妹が犬のそばで眠る光景をよく目にした。
写真を見返していたら犬のとなりで代わる代わる眠りにつく家族に笑っちゃったのだが、いつかは今日の写真を見て泣いてしまう時期がやってくる。写真の役割も変わる。
毛まみれになる助手席とか、
もたれてきたときの心地いい負荷とか、
妹を見送るときの態度とか、
シャンプーしたあとの光の粒をまとっているような毛並みとか、
特筆することがないような日々がいとおしい。明後日もせんないことを話したい。用もないのに犬の名前を呼んでいたい。
つい先日、妹から再び「ねぇの今年の1年の総括は?」という質問が飛んできまして、いや1回聞かれたと言えば、妹も忘れっぽいため、そうやっけ? はははと笑っていました。
そのときは私も2回目の質問だったので1回目よりも整理ができた状態で、今年最大のうれしかったできごとを話すことができました。
2018年は、今あなたが読んでくれているinubot回覧板という連載がスタートして、とても幸せな1年でした。
読んでいただき心からありがとうございます。来る年のあなたのご多幸を山からお祈りいたします。
犬、犬への感謝の気持ちは…冬支度をした毛並みをとかしながら、本人に伝えることにします。
【写真・文/北田瑞絵】 1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubotを運営