がんや治療費に対して漠然とした不安を抱いているけれど、備えようにもどんな保険を選んでいいのかわからない…。そんな悩みを抱える方も多いのでは。
この不安を、ファイナンシャルプランナーの青山聡さんに相談してみました。
がん保険、いつ入る?どんなものを選ぶべき?
ここではESSE読者の藤川めぐみさん(仮名)のお悩みに、青山さんが答えてくれました。
【相談者】
藤川めぐみさん(仮名)
27歳・専業主婦。夫は30歳で会社員。結婚2年目で子どもはなし。
世帯年収:470万円
夫の月収(手取り):28万円
妻の月収(手取り):5万円
(※相談者のプライバシー保護のためプロフィールを多少変えています)
【お悩み】
「結婚生活も落ちつき、夫との将来をいろいろと考えるようになりました。最近はコマーシャルで知ったがん保険のことが気になっています。ですが、なかなか具体的な検討段階までいかず、先伸ばしにしています。また、毎月がん保険にお金を払うくらいならもっと有用なお金の使い方があるのかな…とも考えてしまいます」
【青山さんからの回答】
「がん保険をが気になっているなら、徹底的に調べたうえで健康なうちに加入しておくのがおすすめです」と青山さん。詳しく解説してもらいました。
がん保険でかかるお金ともらえるお金。比べてみてびっくり!
がんは日本人の死因第1位であり、生涯のうちに2人に1人はがんにかかるというデータも。
恐ろしいのは、経済的な理由で、受けたい治療をあきらめざるを得ないことです。
現在、がん治療は昔と違って、「長期入院」から「短期で入院した後に長期通院」に変わりつつあります。「通院がメインならそれほど治療費はかからないのではないか」と思う方もいるかもしれませんが、本当にそうでしょうか。
ではがんになったら、どれくらいの医療費がかかるのか見ていきましょう。
●高額療養費の給付があっても、かなりの自己負担がかかります
まず高額療養費の給付という公的制度を知っておかなければなりません。
これは、どれほど高額な医療費がかかったとしても、自己負担はたとえば月額9万円(年収によって異なるので注意!)ですむ、という公的医療制度。がん治療にはこの制度をフル活用することが大前提です。
生命保険文化センターの統計によると、がんによる入院の平均日数は約20日。入院時の一日当たりの平均自己負担費用は約2万円なので、入院期間の費用は合計して40万円ということになります。これは上記の高額療養費の給付制度をフル活用したうえでの数字です。
ただし、注意しなければいけないのが、この制度でまかなえない費用が発生するということ。
たとえば、少人数の病室を希望した場合の差額ベッド代、食費、入院時の日用品、テレビのレンタル料、お見舞いの家族の交通費、そのほかの雑費すべてがこの制度の対象外。ここで差額ベッド代平均6155円(※1)がかかってきます。
※1…厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況(第337回中央社会保険医療協議会総会資料)」より
また、がん特有の費用として、抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜けるため、人目を気にして個室に入りたがる患者さんが多いことが挙げられます。
とくに女性の患者さんに顕著で、ウィッグ(かつら)をつくる費用もかかり、たかが髪の毛といって無視できない額になります。
●先進医療は全額自己負担になる可能性が
また、先進医療を受けたときの自己負担金は飛びぬけて高額に。
先進医療とは、一定の効果と安全性が確認された最先端の医療技術。公的な健康保険が適用されない最先端の医療を受けると、医療費は全額自己負担になります。
個別の医療の細かい説明は省きますが、重粒子線治療で約309万円、陽子線治療で約276万円(※2)の自己負担に。がん保険未加入、または加入していても先進医療特約をつけていなかった患者さんは、この先進医療を経済的な理由で選択肢から外すということになってしまいます。
※2…厚生労働省「第49回先進医療会議資料(平成27年7月1日~平成28年6月30日)実績報告」より
●通院治療の支払いは何年にもわたって続く
退院したら、通院治療になることも。おもに抗がん剤治療と放射線療法が考えられます。
70歳未満で年収約370万~約770万円の場合、高額医療費の限度額の計算式は下記になります。
8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
仮に高額療養費の対象の医療費が月50万円かかったとすると、
8万100円+(50万円-26万7000円)×1%で
8万100円+2330円=8万2430円になります。
高額療養費の制度をフルに活用したとしても、毎月8万2430円。8万2430円×12か月で年額98万9160円となります。仮にこれが3年続きますと、296万7480円もの費用が。
●がん保険のいちばんのおすすめは?
さて、これに備えるために終身型(一生保障が続くタイプ)がん保険があります。
入院日数が無制限になるものや、通院治療に特化したものなどもありますが、私のおすすめは一時金に特化したもの。つまりがんと診断されたら100万円、1年後にまだがん治療を続けていたら、さらに100万円といったように一時金がもらえるタイプです。一時金であれば入院、通院、その他の費用、なんにでも自由に使えます。
この一時金がもらえるタイプのがん保険で注意すべきは、2回目以降の一時金の支給条件です。
がん診断後1年ごとでもらえるタイプと、2年ごとでもらえるタイプがありますが、1年ごとにもらえる方がいいに決まっていますよね。また、1年経過後「入院していること」が条件になっているものと、「通院でもよい」ものがあります。これも当然ながら後者の方が、申し込む方としてはいいはずです。
したがって2回目以降の一時金は「1年ごとに」「通院でも」もらえる商品を選びましょう。
ただし、この条件に合う商品はわずかしかありません。複数の保険会社の商品を扱っている保険ショップで探してもらってください。保険金額は最低でも100万円にしてください。上記のようにがん通院治療には年額約108万円かかりますから、それをカバーするためです。
●保険料を実際にシミュレーションしてみた
さて、保険料ですが、朝日生命のがん保険「スマイルセブンSuper」を例に紹介します。
上記の「1年ごとに」「通院でも可」の商品で保険金額100万円、先進医療特約(先進医療を受けた際に保険金が出る特約。保険料は月100円ほどしか変わりませんので、必ずつけておいてください)と保険料払い込み免除特約(がんになったら保険料の支払いをしなくてよいというもの。各社条件に違いあり)をつけた場合、27歳女性の場合で毎月2483円、30歳男性の場合で3015円です。
仮に相談者の方が80歳まで生きると仮定すると、保険料総額は、
2483円×12か月×(80-27)=約158万円
旦那さんの場合は、
3015円×12か月×(80-30)=約180万円
がんで2年治療を行えば200万円以上もらえます。
ここで紹介した以外にも、掛け捨てでないタイプや、入院回数や日数が充実しているタイプなどさまざまながん保険が。
「がんになった場合」に限りますが、がん保険は非常に有利な保険。もし検討しているのなら、充分に調べたうえで健康なうちに加入しておくことをおすすめします。