整え方アドバイザーとして、暮らしの上手な回し方を教える阪口ゆうこさん。自他ともに認める、ズボラ&家事嫌いながら、仕事・家事・育児をムリなく両立させています。今回は、阪口さんのスマート家事の秘密である「ミニマリスト」な考え方をご紹介。最近、はやりのミニマリストですが、阪口さんによれば安易におすすめできるものではないそう。その理由って? 失敗エピソードとともにご紹介します。

ミニマリストへの目覚めと黒歴史
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ミニマリスト=物を持たないことではない

「ミニマリスト」と言うと、とにかくものを持たない人、ものを捨てまくる人…と思われがち。でも、そもそもの語源はミニマル=できるだけ最小限というところから。私の場合、家にあるものが、全部「現行品=毎日使うもの」なので、ミニマリストと言わせてもろてます。大好きなコーヒー用品なんかは普通のお宅よりいっぱいあるかも。でもすべて日々使っています。つまり、必要なものしかもたないということが、ミニマリストなんです。

ミニマリストへの目覚めと黒歴史

 ミニマリストの私ですが、一緒に暮らしている家族は、その対極に位置するマキシマリスト。いわく、ものはたくさんあったほうが安心につながるのだそう。結婚し、家を建て、ミニマリスト精神に目覚めたばかりのときには、そんな考え方の違いをまったく理解できませんでした。「使わないものは手放しちゃえ!」と、手当たり次第にものを捨てていました。さまざまなものが煩わしく見えてきて、なくてもやっていけるんじゃないかというものはそれはそれはもう豪快に捨ててきました。今考えてみれば、この頃は勘違いミニマリストだった、私にとっての「黒歴史」です。

家族との衝突も!

「ものを捨てるって気持ちいい!」。勘違いミニマリスト時代、わが家ではこんなことが起きていました。

(1)常にイライラする

 いわゆる捨て魔になってしまった私。ものがなくなっていって、日を追うたびにガラーンとしていく空間にウキウキ。しかし、ウキウキは束の間でした。適正量の下限を越えてしまったのです。空間を邪魔するものは何も足したくないという感覚に陥りました。子どもが出しっぱなしにイライラ。夫の脱ぎっぱなしにイライラ。空間を汚さないで!なーんてイライラ。まわりが見えず、いつもプンスカ怒ってました。

(2)家族の笑顔が減る

 出ているものに対してイライラしている母との生活を強いられた家族。欲しいものや必要なものまで言いにくそうな雰囲気に。何かものを使うときでもこんなに出しても怒られないかヒヤヒヤしていたそうです。イライラでヒヤヒヤで家族はビクビク。家族の気を使っている顔ばかり見ていた気がします。

(3)生活に遊びがなくなる

 捨てることが日常化してくると、「片づけハイ」の状態がおとずれます。無駄なものは削ぎ落として削ぎ落として、少しでも無駄と思うものには見向きもしない。娯楽までも無駄かどうかを判断。捨てることに執着しすぎてしまって、根底にある「暮らしやすく」をさっぱり忘れていました。楽しい暮らしがコンセプトだったはずが、どんどん窮屈さを感じるようになっていきました。

ミニマリストは両刃の剣

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 この3点がミニマリスト阪口ゆうこの失敗談です。今となっては、原因ははっきりわかっています。それは家族とのコミュニケーションが、圧倒的にたりなかったからです。私が無駄だと思っていても、家族にとっては大切なものなのかもしれない。今思えば当たり前の考えの違いを理解できるようになってから、むやみにものを捨てることはなくなりました。

 なぜミニマリストに憧れる方がこんなにも多いのか。だれしも「スッキリと暮らしやすく」ということに憧れがあるからでしょう。もちろん、私も。でも、スッキリした暮らしは家族のいい関係があってこそ、成り立つものなのです。あなたにとって、本当に大事なことはなんでしょう。もしかしたらそれは、ものを捨てなくても、叶うことかもしれませんよ。

【阪口ゆうこさん】

整えアドバイザー。夫、小学生の長男、長女の4人暮らし。自宅セミナーで収納や時短家事など暮らしをスムーズに回す工夫をレクチャーする。「HOME by REFRESHERS