ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている

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ESSE ONLINEでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第3回は、犬がやってきたことをお祝いするパーティのことについて。

犬がうちに来て4周年。犬の好きなことをするだけの1日を過ごしてお祝い

先日、犬がわが家に来てから4周年を無事迎えることができた。
私の生活は犬が主役のようなものだが、とりわけ主役のイベントが年に2回ある。誕生日に生まれてきたこと、今日まで元気で過ごせたことをお祝いするイベント。
そしてわが家にやってきた日に(連れてきたのは母だが)、うちに来てくれてありがとうと感謝をするイベント。

サルスベリと犬
サルスベリと犬
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●2018年8月11日

いつものように犬と朝の散歩に行く。8月はだいたい6時半には散歩に行っていたのだけれど、私たちはエンジンがかかるまで少し眠そうに歩く。

散歩から帰ってきてひと休み

散歩から帰ってきてひと休みして、この日のためにペットショップで購入しておいた犬用のお肉とケーキを、朝ご飯に出すことにした。

 

私がお皿に盛っている間、犬は真っ黒い鼻の穴をふんふん…ふんふん…とふくらませて、早く食べたい! といった様子である。

母はそんな犬を眺めながら仕方ないなぁなんて困ったように言いつつもうれしそうに目を細める。

 

前日、母から「明日のパーティの時間は何時なん?」「その時間に畑から帰ってくるわ」と言われていて、パーティと呼ぶにはささやかなことしかできていないと思ったけれど、ケーキを用意してプレゼントを贈って、ありがとうと伝えること、それは振り返ってみれば、両親が私たち兄妹の誕生日にしてくれてきたことだった。

 

子どものころ、誕生日は確かにパーティだった。

子どものころ、誕生日はたしかにパーティだった。
4きれを一気にほおばる。わんぱく
4きれを一気にほおばる。わんぱく
お肉をぺろりとたいらげて、続きましてケーキのご準備ができております

 

 

お肉をぺろりとたいらげて、続きましてデザートのご準備ができております。

犬はまず表面をぐるりとなめていく

やさしく丁寧になめてから、パクパク、ごくん。お見事でした。

欠けることなくきれいなスポンジが中からあらわれてきた
スポンジも食べて
スポンジも食べて
最後に私の手まできれいになめてごちそうさん
最後に私の手まできれいになめてごちそうさん

それから金曜ロードショーで放送された『ハウルの動く城』の録画を犬のとなりで観ていると、すぅ~すぅ~と寝息が聞こえてきた。

すぅ~すぅ~と寝息が聞こえてきた

目や表情、しっぽの動きなどから犬が今どんな気持ちでいるのかくむこともあるが、結局のところ受け手、私のフィルターを通すことになる。

 

人間同士でもそうだが、言語間でのコミュニケーションがないぶん、対人よりも受け手に重心がかかっている。だから犬だけの気持ちを私が決めつけたりするのは失礼に思えてくるのだけれど、このときばかりは、お肉とケーキを食べて心身ともに満たされていると確信していた。

「ようやく守らなければならないものができたんだ、君だ」

「ようやく守らなければならないものができたんだ、君だ」

テレビのなかでハウルがソフィーに自身の気持ちを伝えている。

 

『ハウルの動く城』は何度も観ているが、このセリフにこれほど共感した日はない。

犬
犬の睡眠時間は1日12時間以上なのでまだまだ眠たげ
犬の睡眠時間は1日12時間以上なのでまだまだ眠たげ
昼下がりからプールをしてみた。

今日は犬の好きなことをするだけの1日なので、昼下がりからプールをしてみた。

 

犬はプールを見つけるとまっしぐらに走っていくのだが、そのままの勢いで飛び込んだりはせずに、手前で速度を落として、ふちに手をかけて水の中に入っていく。

そのときのなんとも「もちゃっ」とした動作と、後ろ姿のまるまるしさよ。

「もちゃっ」とした動作と、後ろ姿のまるまるしさよ

今年のプール遊びで犬はよく、ボールを口にくわえる→口から放してそのまま水中に落下させる→浮かぶボールをさらにすくい上げる→放す、という動作を繰り返し行っていた。

浮かぶボールをさらにすくい上げる→放す、という動作を繰り返し行っていた。

初めは私が笑うから家族サービスをしてくれているのかと思ったが、ボールを落としたときの水しぶきがおもしろいのだろうと、目の動きを見ていて思った。

落としたときの水しぶきがおもしろいのだろうと、目の動きを見ていて思った。

またボールをすくい上げる際に鼻が水に浸かっているのが気持ち悪いのではないかと案じたが、この前、川に行ったときにもなにかを探すように鼻を水中に浸けていた。

犬のことになるとすぐ心配になって考えすぎてしまう
犬のことになるとすぐ心配になって考えすぎてしまう

先日、近所に住む絵画教室の先生と会ったときに、6月に関西で起きた地震の話になった。

先生は結婚していて夫と猫とチャボと暮らしているのだが、「地震が起きたときは猫と同じ部屋にいたから、まず猫を気にかけて、すぐ庭の小屋にいるチャボを見に行って…。みんなとくになにもなくてよかったけど。そのときに、すぐそばに自分が守らないといけない命が存在していることは大変だけど、幸福なことでもあるなぁと感じた」と話していて、まだ私は天災が起きたとき犬が安心でいられるか心配しかないのだが、先生の考え方でいけば私はなんて幸福だろうか。

母から紙風船のプレゼント
母から紙風船のプレゼント

23時をまわった頃、妹が帰宅。

ただいまではなく犬の名前を元気よく叫びながら入ってくる妹と、数歩の距離を全力疾走して迎えにいく犬は似てるよ。駅まで車で迎えにいった母と「今日が終わる前に会えてよかったね」と話しながら帰ってきたらしい。

「ただいま」
「ただいま」

次の日の朝、パーティーはまだ続いている。

私からはオレンジのボールをプレゼント
私からはオレンジのボールをプレゼント

2018年8月11日、犬がうちに来てから4周年を迎えることができた。
どうか、これからまた一年すこやかな日々をおくり、パーティができますように。
来年も同じことを願えますように。

2016年1月31日 犬と祖母
2016年1月31日 犬と祖母

【写真・文/北田瑞絵】 1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubotを運営