キッチンの配列は、おもに「壁づけタイプ」「2列型タイプ」「背面収納タイプ」に分かれます。それぞれに特徴があり、メリットとデメリットが。3つの配列とそのバリエーションについて、実際の事例を交えて紹介します。教えてくれたのは、一級建築士・青木律典さんです。
すべての画像を見る(全7枚)壁づけタイプだとムダな動きが出にくい
もっとも一般的なキッチンは、壁に向かって配置される、通称「壁づけタイプ」。壁に沿って、コンロやシンク、作業スペースなどを、横並びで配置します。
メリットは、使う人が横に動くことで、作業が効率的に流れていくことです。ムダな動きが少ないキッチンの配置と言えるでしょう。
一方、デメリットも。壁に向かってカウンターが配置されているので、家族の顔を見ながら、作業したり会話したりするのがやりにくいのです。コミュニケーションの際には、振り返らなければなりません。
写真は、私が依頼を受けて設計した、壁づけタイプのキッチンの一例です。キッチンの幅は、全体で約3.5mあります。
右の壁側の天板を木にすることで、キッチンを延長して調理以外の作業も行えるスペースになりました。たとえば、子どもの通園準備をしたり、お花を飾ったり。作業台や飾り棚として使用できるので便利だと、住まい手に好評です。
キッチンの左にあるのは、家電を置くための可動棚です。キッチンから左に体を移動するだけで、家電を使った調理が行えるので、作業がはかどります。
ちなみに冷蔵庫の居場所は、家電の収納スペースと向かい合った位置(上の写真のバルコニーに出るガラス扉の左手)。冷蔵庫がダイニングから見えにくくなるように、壁で目隠ししています。「生活空間に、存在感ある冷蔵庫が目立たない。この見た目は快適ですね」とは、住まい手の談。
2列型タイプはコミュニケーションがしやすい
次に紹介するのは「2列型タイプ」です。2列型にはバリエーションがいくつかあります。
私が提案することが多いのは、こちらの写真のように、コンロを壁側に配置して、シンクをダイニング側に向けて2列に配置するものです。
コンロの壁側配置をすすめる理由。それは、油の飛び散りを少なくできて、掃除がラクだからです。やむを得ず、アイランド(ダイニング側)にコンロを配置することもあります。その場合は、コンロの正面に耐熱ガラスを用いて壁をつくり、油の飛び散りを少なくするような配慮をしています。ガラスを使うのは圧迫感の軽減と見通しをよくするため。
2列型タイプのメリットは、カウンターでの作業スペースを確保しやすいことです。カウンターが2列あり、コンロとシンクをそれぞれ1列づつに分けて配置すると、作業スペースがそれぞれに確保できます。
また、ダイニングに向かってカウンターを配置すると、家族とのコミュニケーションもスムーズですし、ひとりで家事をする寂しさもなくなります。
一方、デメリットも。カウンターが2列に分かれているので、作業中に振り返る動作が必要に。効率が少し落ちます。また、もしコンロをアイランドに配置すれば、レンジフードがコンロの上に取りつくため、圧迫感が出ます。さらに、キッチンカウンターが2列になることで、価格も高くなりがちです。