旅番組のロケをきっかけに、遊び心あふれる私服が話題を呼んだ女優・草笛光子さん。それが発端となり、私服の着こなしを紹介したファッションブックまで出版されました。
84歳にして舞台に立ち続け、ピンと伸びた背筋でどんな服も着こなす草笛さんは、69歳のときに髪を染めるのをやめて以来、きれいな色をまとったり、赤い口紅をつけたり、おしゃれを楽しめるようになったそう。
ハイブランドからプチプラ服まで、型にとらわれずに着こなす秘訣を伺いました。
草笛光子さんにおしゃれの秘訣をインタビュー!「グレーヘアにしてからおしゃれに冒険心が芽生えました」
意外にも「私、ちっともおしゃれじゃないの。歌と踊りと演技で自分をみがくことに一生懸命で、おしゃれにはまったく無頓着できてしまった」と語る草笛さん。
「『ファッションの本を出しませんか』と言われたとき、さて困った…と。テレビのロケに私服で出たら、SNSで“おしゃれ”と話題になったからなのね」
クローゼットの中には、役づくりのための洋服がたくさんつまっているけれど、人さまに披露するようなものではない、と思っていたそう。
「そんなとき、『自分の歴史を着るということだから、一生に一度の舞台だと思って演じてみたら』と友人に言われ、はっとしました。演じるのならおもしろいかもしれない、と。今日、着ている洋服はヒョウ柄の中に縞、おまけに光るパンツ! ジャズとクラシックとロックが一緒くたになったみたいで、もう、なにをどう歌ったらいいかわらない。でも、ニューヨークのシニアの写真集が話題になったり、私もまだファッションで遊べる年齢なのはわかります。こうなったら、堂々と“演じきる”しかありません(笑)」
●髪を染めることをやめたら、服選びが楽しくなりました
草笛さんといえば、美しいグレーヘアが印象的です。
「それまで黒やベージュの洋服が多かったのに、グレーヘアになったら、思ってもみなかったオレンジや黄色が着てみたくなりました。赤い口紅も上品に見えるのがうれしくて! じつは20代の頃から、白髪のおばさまを見かけるたびに『黒髪よりずっとすてきだわ』と思っていました」
当時の草笛さんは、「刺さりそうなほど丈夫で多毛」な黒髪。今からは想像できません。
「舞台『ウィット』でがん患者を演じて剃髪したら、真っ白な髪が生えてきたんです。直後のテレビ出演で、当然ウィッグをかぶると思っていたら、スタイリストさんが『とってもおしゃれですから、そのままで出てください』と。価値観が転換した瞬間ね。当時69歳でちょっと覚悟がいりましたが、女学校時代から親しい岸惠子さんからも『髪を白くして華やかになったわね』と言われ、納得」
素の自分でいられることを、すがすがしく感じるという草笛さん。
「なんでもどんとこいな気分よ。地肌が荒れることもなくなり、白髪に黒が混じって、すうっとウエーブの流れが見えるのも気に入っています」
●安価な服も大好きよ。ベーシックなものは着回しがきくじゃない
この日、ヒョウ柄の下に着ているボーダーのトップスは、なんとH&Mのものというから驚き!
「安価な服もいろいろもっています。1枚買う金額で5枚も6枚も買えちゃうって、すてきなこと。それに安くてベーシックな洋服をどんなふうに組み合わせるか、頭を使って考えるのが好きなんです。豪華一点主義的なブランドものは、それだけで完結するから組み合わせる余地がないのよね。そのうえ、一回着たら、立場上、みんなが忘れてくれるまで着ることができないんです」
どうしてもそういう服を着たら、長く寝かせるようにしています。
「『また同じ服』と思われたら、安いを通り越して、貧しく見えてしまうと思うんです。ユニクロの服もよく着ますよ。シンプルな服ほど、コーディネートのしがいがあって楽しいんです」
には、さらなる草笛さんのインタビューを掲載。ファッション、美、健康の秘訣を伺っています。ぜひチェックしてみてください。
【草笛光子さん】
1933年、神奈川県生まれ。松竹歌劇団に入団し、’53年に映画『純粋革命』でデビュー。日本を代表する女優として数々の映画、舞台、ドラマで好演し、’99年に紫綬褒章、2005年に旭日小綬章を受章。ライフワークとなる舞台『6週間のダンスレッスン』が、9月に『新・6週間のダンスレッスン』として再演となり、途中通算200回目を迎える。ファッションブック『草笛光子のクローゼット』
(主婦と生活社刊)が発売中