SNSが発達し、だれでも気軽にかわいいペット写真を発信できるようになりました。動物系アカウントが無数にあるなかで、「犬に対する愛情がほとばしった写真がかわいすぎる」とツイッターで話題になっているのが、フォロワー1万6000人超の「

@inubot

」。

運営している北田瑞絵さんは、じつはプロの写真家。“わが家のアイドル”と呼ぶ、かわいすぎる柴犬の写真を撮り続けています。

ここでは北田さんと「犬」君、両方の素顔に迫るインタビューをお届けします。

犬の魅力がたっぷり!inubotの世界
犬の魅力がたっぷり!inubotの世界
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和歌山の自然を背景に、柴犬のリアルな表情を撮りたい

―inubotは柴犬好きの方々を中心に、「愛があふれている!」と話題になっていますね。

愛があふれている!

ありがとうございます。2年前にツイッターを始めたときは、ここまで多くの方に見てもらえるとは思ってなかったので、驚きです。

―インターネットでは日々たくさんの動物写真や動画が流れてきますが、inubotの写真は自然と調和したショットや、生活が感じられるショットが多いのも、人気の秘密だと思います。

生活が感じられるショット

和歌山で家族と暮らしているんですが、家業がみかん農家なんです。和歌山って、山や森林が80%を占めていると言われているんですが、Googleマップで見ても本当に緑だらけなんですよ。

 

私も身の周りの自然から強いパワーをもらって育ちましたし、犬も楽しんでます。夏には近くの川で泳ぐし、冬には雪遊びをするし。もちろん、うちのみかん畑を駆け回りもします。

夏には近くの川で泳ぐ

―犬君は今何歳なんですか?

5月7日で4歳になりました! うちの母親がずっと犬と育ってきた人で、私たちの幼少期には「エース」という犬を飼っていたんですね。エースが寿命を迎えてしばらくは、犬のいない暮らしをしていたのですが、子どもたちが大きくなってきたら、また犬を飼いたくなったみたいで。父と母がペットショップで一目惚れしたのが、今うちにいる犬なんです。

エースのことは「ちょっと年上のお兄さん」のように思っていたのですが、今の犬は本当に小さいうちから見ているわけじゃないですか。まるで自分の子どものような、親友のような気持ちをもっていて、一日離れただけでさみしくなってしまいます。

5月7日で4歳になりました
家に来たばかりのときの犬君

名前を出してないからこそ、共感してもらえる

―ちなみに「犬」というのは、名前じゃないですよね?

はい。ちゃんとした名前が別にあるのですが、インターネットでは明かさないようにしています。写真を載せているのに矛盾してると思われるかもしれないですが、犬にもプライバシーがあると考えていて。

でも、そのせいか、「過去に飼っていた犬を思い出した」「実家の犬に似てる気がしてかわいい」といった感想をいただけることが多いんです。うちの犬に、みなさんの愛犬たちを投影してくださっているようです。

―名前が出てないからこそ、自分の犬のように身近に感じられるってことですね。

そうそう。なので、今後もネット上では「犬」と言うつもりです。

―そもそもツイッターに写真を上げはじめたきっかけは?

じつは、inubotのツイッターは、家族のためにつくったんです。私は18歳のころから写真を撮るようになって、そのころから今もずっと女性を被写体に写真を撮っています。でも、犬が来てからは犬の写真もたくさん撮るようになり、それを現在一人暮らし中の妹に送り続けていました。

犬の写真もたくさん撮るようになりました

そうしたら、あるとき「もう少し時間を考えて送ってほしい」と言われて反省しました。犬のかわいい写真が撮れたら妹にLINEで送っていたのですが、確かに会社員をしてる人にとっては不都合な時間もあったよなあ…と申し訳なくなって。

 

それで、「ツイッターにアップしておけば、妹も自分の好きな時間に犬が“補充”できるのでは?」と思いついて、inubotを始めたんです。

inubot
ツイッターには毎回たくさんの「いいね」がつく

―言われてみれば、最初はなんの説明もなく写真がひたすら上げられていました。妹さん向けなら納得です。

犬のおかげで家族とのつながりも強くなったし、それまでは照れて撮ることができなかった家族の写真も撮れるようになったのも、犬がうちに来てよかったことの1つです。

家族の写真

家族以外の多くの人がうちの犬をかわいいと言ってくれているのは、うれしい反面不思議な気もしますね。フォロワー1万6000人って、うちの町の人口よりはるかに多いですもん(笑)。

それだけの人が、日々生活を営むなかでうちの犬を見る時間をとってくれていることが、とてもありがたいです。

 

私自身も、毎日犬の写真を投稿することで、癒やされている部分があります。

写真を撮ること自体が目的にならないように

―犬君の、とくにかわいいところはどこですか?

寝顔は何時間でも見ていられますね。ほかにも、ごはんを食べていると脇から顔を出してくるところとか、畳に座っていると背中にぴったりくっついてくるところとか、仕事で数日家をあけたときに帰るとすごく喜んでくれるところとか…。

寝顔は何時間でも見ていられますね

この間、妹が私をくすぐってからかってきたことがあったんですけど、私もそれにつきあって「やめてー!」って叫んでたら、犬が飛んできて妹にポーンとタックルしたんです。

―それは、北田さんを助けようとしてくれたってことですよね?

そうなのかなって、私も妹も笑ってしまいました!

そんな風に、家族にはとてもなついている犬なのですが、よその人に対してはものすごく緊張してしまって。友達を家に呼ぶだけでも激しく威嚇してしまうのが悩みどころです。
去勢してからその傾向が強くなった気もしていて、責任を感じるときもありますね。犬の将来を考えて、家族でよく話し合って決めたことなのですが。
もう少し歳を重ねたら、穏やかになっていくかなと思っています。

かわいいからその瞬間をおさめたくてシャッターをきる

―犬の写真を撮るときに気をつけていることはありますか?

写真を撮ること自体が目的にならないようにしていますね。つまり、犬が本当にかわいいからその瞬間をおさめたくてシャッターをきるのはいいんだけど、写真を撮ってだれかに「いいね!」されるのが目的になると、被写体にどこか無理をさせちゃうと思います。

―昨今「インスタ映えするから動物を飼いたい」なんて人もいると聞きます。

犬に無理をさせたりわざとなにかをさせたりということはしないように、いつも気をつけています。

あと、初歩的なことですが、犬や猫に限らず、動物園の動物や野良猫に対しても、フラッシュは絶対たいちゃだめです。皆さんも気をつけていただければ…!

―ペットをかわいく撮影できる、だれでも実践できるコツはありますか?

「動物の目線」で撮るのはおすすめです。しゃがんでみたり寝転んでみたり、犬や猫の目線から撮ると、撮れる写真が全然違うんですよ。
犬の写真を撮るようになってからの私は、人の写真を撮っていても、「犬の目線だよね」と言われるようになりました(笑)。

とにかくたくさん撮るのも大切です。私もやりがちなんですけど、犬の行動に笑ったり見とれたりしているうちに「今の犬、残したかった!」を逃してしまうことがあって…。

そして、撮った写真はぜひプリントしてほしいです。今は簡単に写真撮影できますが、データのままが多いじゃないですか。データをモノにすることで、思い出にもなるし、お守りにもなると思います。

―お仕事でも写真を撮られている、北田さんならではのコメントですね。このinubotですが、ESSE ONLINEで連載が始まりました。興味をもった方へのメッセージをお願いします。

ツイッターと違って、文章もしっかりと書くことになります。愛犬と暮らすことの楽しさだけでなく、日々のできごと、性格のクセ、そして育てることで生まれる責任など、いろいろなことをお伝えしたいです。

【北田瑞絵さん】 1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubot

を運営。ESSE ONLINEにて、「inubot回覧板」を連載中