持続可能な社会をつくるための「SDGs」という言葉が注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。
今回のテーマは「魚」について。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんに、身近にできる工夫についてつづってもらいました。

花束
「サステナブル・シーフード」とは
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魚の未来を考えよう~サステナブル・シーフード~

長引くコロナ禍で、日々の食事づくりに苦労されている方も多いのではないでしょうか。
もともと料理のレパートリーが少ない私ですが、毎日家で食事となると、ついつくり慣れたものに偏りがちになります。

そんなある時、魚を全然食べていないことに気づき、たまたま見つけた「魚のサブスク」に早速トライしました。
南三陸で獲れる新鮮な魚が、煮つけや西京漬け、焼き魚になって毎月1回冷凍で送られて来るというもの。湯せんしてすぐに食べられるのでとても便利、そしておいしい!

●魚を取り巻く環境が危機的に

ところが、おいしくて健康にもいい魚を取り巻く環境が今、危機的だということをご存知ですか?
さまざまな問題がからみ合っているうえに、その舞台が地球の7割を占める海だけに一筋縄ではいかなそうです。

たくさんのお魚
※写真はイメージです

まずは、海に泳いでいる魚を、獲りたいだけ獲ってしまったこと(乱獲)のツケが今きています。日本で獲れる魚の量はどんどん減っていて、1984年と比べて約3分の1になってしまっています。今では成魚を獲り尽くしてしまって、稚魚をとっている魚種が増えています。
あまりピンとこないかもしれませんが、たとえばホッケ。居酒屋でもどどーーん! とお皿からはみ出すようなイメージでしたが、最近のホッケは小さいどころか、スーパーでも置いていないこともあります。ホッケの漁獲高はピーク時の9割減なんだそう。

サバはピーク時の7割、クロマグロやウナギは絶滅危惧種です。サンマも激減していて、「安くておいしい」イメージから離れてきています。そう言われてみれば、スーパーの鮮魚売り場に並んだ魚を見ると、輸入ものが多くなっています。
じつは、欧米では、「魚を守ろう」という意識が強く、水産資源をしっかりと管理する公的な体制ができていて、むしろ成長産業になっているとか。

次に温暖化です。地球全体が以前に比べて温まってしまっているのは、以前もお伝えしましたが、海水の温度も上がっているのです。そうすると、産卵しても育たなかったり、プランクトンも減る、食べるものがない、さらに小さな魚が住むサンゴなど海の植物も育たなくなっていて、魚の住み家もピンチなんです。

●食生活の変化も影響

あとは食べる側、つまり私たちの食生活の変化もあります。魚を食べる人が年々減り、肉食にシフトしていることで、そもそも魚の消費量が減っているのです。同時に漁師さんの数も激減していて、ここ20年間で半分になってしまい、しかもその4割が65歳以上と高齢している現状。すべて負のスパイラルに陥っている状態です。

SDGs世界を変えるための17の目標
2021年3月24日放送『フューチャーランナーズ』より フューチャーランナーズーフジテレビ(fujitv.co.jp)

『フューチャーランナーズ』でも取り上げた 一般社団法人Chef for the Blue の佐々木ひろこさんは、この海の現状に危機感を感じ、シェフやジャーナリストとともに海を守るために動きだしました。そこで、東京・原宿にオープンしたのが、サステナブル・シーフードをメインで扱うレストラン。
私も早速行ってみましたが、メニューには、海のエコラベルと言われるMSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)の青の認証マークやASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)という緑のマークがついています。

サステナブル・シーフードで海を守る

青が天然、緑が養殖で、どちらも水産資源と環境に配慮しているという証です。これがついた魚介類のことを「サステナブル・シーフード」とも呼んでいます。

お皿にお魚

そして、あまり食べたことのない魚が登場。尋ねると、痛みやすいとか出荷には数がたりないとか、キズがあるなどの理由で使われない魚で、未利用魚(みりようぎょ)というんですって。

お料理

普段は捨てられてしまっているそうで、もったいないし、ひとつの命なのにかわいそう。なんとかしたいですよね。

【皆さんにもできること~魚の未来編~】

・MSC/ASC認証マークのついた魚介類を選ぶ
・食卓にお魚を。おいしさを子どもたちに伝える
・消費者もこのままでは魚がいなくなるかもしれないという危機感をもつ
・プラゴミを減らしたり、食品ロスを減らす、電気の使い過ぎをやめるなど、温暖化を防ぐためにできることから始める

将来にわたって魚を食べ続けたい。そのためには、私たち買う側の行動が、豊かな海を取り戻すきっかけになります。
食卓にちゃんと認証マークがついたお魚料理を並べて、楽しみながら家族で日本の食文化の未来のことを話題にしてみるのもいいかもしれません。