日本中で外出自粛を求められ、子どもと自宅で過ごす時間が増えた数か月。
ずっと一緒にいることで、言ったことがなかなか伝わらない、静かにしているけれどなにやらひたすらものを並べている…など、「あれ、この子の行動ってちょっとおかしい?」と、普段以上に感じて不安になった人も増えているようです。
そこで、子どもの心の発達に詳しい児童精神科医の田中康雄先生に、そんなときの対応法を教えてもらいました。
子どもの行動に口を出す前に…。親が注意しておきたいポイント
「長時間子どもと一緒に過ごすなかで、子どもにイライラが募ったり、つい叱ったりしてしまう場面が増えているかもしれません。これをやりなさい、あれをやりなさいと、無意識のうちに子どもの行動をすべて決めてしまうようなこともあるでしょう。でも、子どもの心を健やかに成長させるには、多少時間がかかってもやみくもに否定せず、本人の気持ちに寄りそう、そして本人にどうしたいか、どうすればいいのかを考えさせるステップを設けてあげてください」
2つのエピソードを参考に、子どもとの上手なかかわり方をご紹介します。
●言葉どおりにしか受け取れず融通が利かない子には…
伝えたいことがなかなか伝わらない子のなかには、言葉をストレートにそのまま受け止めてしまう子がいます。言葉どおりならそういう反応になるけれど、日常会話にはいろいろと省略が隠れていて…という場面が数多くあります。
そうした子には、子どもがわかりやすい言葉を選んで具体的に伝える努力が親には必要です。
周りの人とのコミュニケーションが難しい子の場合、本人がつらい思いをしないように、親は子どもが困らないように答えを用意しがちでしょう。でも、ちょっとだけわが子の隠れた力を信じ、「どうしたらいいのかな?」と問いかけて、次の行動を本人に教えてもらう場面をつくってみてください。そして、そのときは感謝の言葉を伝えることも忘れずに。
●ものをひたすら並べている子には…
ブロックや色エンピツをひたすら並べるなど、子どものなかには、オモチャや道具本来の使い方よりも、ただそれを並べる遊びを好む子も。
その対象はさまざまで、その並べ方も千差万別。きれいに規則性をもって並べている子もいれば、一見するとどんな規則のもとに並べているかわからないこともあります。
たとえ不規則に見えても、親の勝手な判断で動かしてしまうと、子どもはとても悲しい思いをします。感情のコントロールが苦手な子は、かんしゃくを起こしてしまうことも。
根気よく、自分なりの法則性をもって、センスよく並べている姿を「ステキだね」「よくできてるね」と、ほめることも大切ではないでしょうか。何事も親の価値観で判断するのではなく、特別だれかに迷惑をかけているのでなければ、これも才能のひとつとしてそっと応援する気持ちで。
子どもによっては、その遊びを延々と続ける場合もあれば、別のことに関心をもつこともあります。前者であれば「本当に根気強いな」と、後者であれば「今はこれがブームなんだね」と、どちらにしても温かい目で見守ってください。
普段は親も子どもも忙しく、一緒にいられる時間が短い家庭も多いことでしょう。こうした状況下ではありますが、親子で長時間過ごせるのはかけがえのない時間だと思い、子どもの成長を近くで見守り、喜び合いたいものですね。
ここで紹介した2つのエピソードをはじめ、子どもとのかかわりのなかで不安を感じる親御さんに役立つ田中先生の新刊『発達が気になる子の心がわかる 幸せ子育ての手引き』(扶桑社刊)では、46エピソードとともに日常の困ったを解決するヒントが紹介されています。ぜひ、参考にしては。