「自己肯定感」というキーワードを最近よく目にするようになりました。
「自己肯定感が低い悩みをもつ人に、『気にしすぎ』『自分を信じればいいよ』と言ったりする人がいますが、そんな簡単に変えられたら苦労はしません」と話すのは、うつ専門メンタルコーチの川本義巳さん。
自己肯定感が育まれない理由はなんなのか、どうすれば改善できるのか、解説してもらいました。
自己肯定感が低いと思ったら、視点を変えてみる
最近、自己肯定感をテーマにした本が何冊も出版されていますし、ネットでもよく見かけます。
先行きが不透明な時代ですから、「自己肯定感を高める」ことで、自分らしく生きていこうというメッセージは、多くの人に響くと思います。
ところで「自己肯定感が低い」という人はどんな人なのしょうか?
・自分のことを認められずに、ダメ出しばかりしてしまう ・他人と比較して劣等感にさいなまれる ・どちらかというとあきらめることの方が多いなど、まだ出てきそうですね。
●自己肯定感の悩みは昔からあった
今は「自己肯定感」という切り口で語られることが多いですが、こういう悩みは昔からありました。私のところに相談にいらっしゃる皆さんも、同じことで悩んでいます。
そして皆さん口をそろえてこう言います。
「自信がないんです」
今の自分がうまくいっていない、あるいは悩んでしまうのは「自分に自信がないからだ」と分析されています。
・自信がないから、自分のことを否定してしまう ・あの人みたいになれないから、自信がない ・自信がないから、ついあきらめてしまうことが多いこの「自信がない」というのは、だれもが使うフレーズです。この状態で悩み続けてしんどくなった人たちが、私のところにいらっしゃっているわけです。
「自信がない」という人に対して、「気にしすぎ」「自分を信じればいいよ」と言ったりする人がいますが、そんな簡単に変えられたら苦労はしません。だからそうではないアプローチが必要になります。
●「自信がない」はなにと比較しているのか?
そこで私は「自信がない」という人に対して、こういう質問をしています。
「それってなにと比較して言ってます?」
自信がないという実感があるということは、「自信がある」という状態がどういうものかのイメージがないと出てこない言葉です。
もし「自信がある状態」のイメージがないのなら、「わからない」という答えになるはずですから。
なので「自信がある状態のイメージってどういうことなのか?」と聞くようにしているんです。
この質問に対して、返ってくる答えはほぼ2パターン。
「こうなっていたいという自分です」
あるいは
「同じ職場のAさんですね」
なんです。
●「理想の自分」は変化し続ける
「自信がない人」は
理想の自分=自信がある人 職場のAさん=自信がある人こういう風に判断していて、そこと自分を比較した結果、どうみても劣っているので
自分=自信がない人という定義づけをしてしまっています。
一見当たり前のような話ですが、この理屈から抜けだせないと、一生かかっても自分に自信がつくことはありません。
なぜなら理想の自分というのは、自分がつくったイメージなので、変化し続けていきます。
仮に追いついたとしても、そこからまた新たに「理想の自分」が現れます。そうするといつまでたってもそこにはいけないので、自信もつきません。
職場のAさんも同じです。相手も成長していますから、追いつこうとしても離されますし、よしんば追いついたとしても、Aさんよりすごい人を見つけてしまったら、今度はその人と自分を比較してしまいます。
こうなってくると、そもそも比較対象がどんどん曖昧になってきて、過去の人とも比べだしたりします。「自分はあの偉人のようにはがんばれない。だからダメなんだ」となってしまう。
「だれか」とか「なにか」と比べていると、ずーっとそれが続くからキリがありません。
もし自分が、地球上で最強の生物になって、生態系の頂点に立てたとしても、「いつ蹴落とされるかわからない」というふうに考えてしまうのです。
●「昨日の自分」と比較してみよう
では、どうすれば自信がつくのでしょうか?
先ほども言いましたが、他人とか理想の自分とか比較している限り自信がつくことはありません。
そこではなく、「昨日の自分」と比較することで自信が生まれます。
自分が日々積み上げたもの、歩いてきた道を見てやってください。
そのときに「自分も自分なりにがんばってるなー」と感じられたら、そこから自信が生まれてきます。自信は自分が「やってきたこと」に対してでき上がります。
どんな小さなことでもかまいません。「自分ができたこと、続けてきたこと」これを大切にしてみてください。