外出自粛によって、いつもより家族のコミュニケーションが濃密になった家庭も多いと思います。
一方で、親が長時間SNSを見て、ついつい他人の言動にイライラしたり、モヤッとしたりしてしまう…そんなときの親の反応は、子どもに悪影響を及ぼすことも。

ねたみ、ひがみといった負の感情は、子育てにどんな影響を与えるのでしょうか。
66年前に発表されて反響を呼び、今日でも数多くの親の胸を打つ、ひとつの詩を紹介します。

スマホ
ニュースやSNSでイラッ。それが子どもにも伝わっているかも…
すべての画像を見る(全5枚)

ドロシー・ロー・ノルトの詩から振り返る子育て

“批判ばかり受けて育った子は非難ばかりします
敵意に満ちたなかで育った子は誰とでも戦います
ひやかしを受けて育った子ははにかみ屋になります
ねたみを受けて育った子は
いつも悪いことをしているような気持ちになります
心が寛大な人のなかで育った子はがまん強くなります
子どもたちはこうして生き方を学びます
励ましを受けて育った子は自信を持ちます
ほめられるなかで育った子はいつも感謝することを知ります
公明正大ななかで育った子は正義心を持ちます
思いやりのあるなかで育った子は信仰心を持ちます
人に認めてもらえるなかで育った子は自分を大事にします
仲間の愛のなかで育った子は世界に愛をみつけます”
(「CHILDREN LEARN WHAT THEY LIVE」/ドロシー・ロー・ノルト)

●いつの時代にも通じる子育ての気づき

月と星と子ども

この詩は家庭教育学者のドロシー・ロー・ノルトが、1954年に発表したもの。日本では1990年に紹介されて以降、ラジオや書籍、そして現在SNSなどで子育てに悩む母親たちを中心に読み継がれています。

この詩はなぜ、時代をまたいで多くの母親たちの心をつかむのでしょうか?

●子どもに影響を与えるのは、親の意識でなく「無意識」

三日月と満月と子ども

この詩に“ねたみを受けて育った子はいつも悪いことをしているような気持ちになります”という一節があります。

日本語で「他人の不幸は蜜の味」、ドイツ語で「人を傷つける喜び」という言葉があるほど、「他人の不幸を望む」ことは、人間ならだれにでもある負の感情なのかもしれません。

親が負の感情を持つことと子育てにどんな関係があるのでしょうか?

他人の不幸を望んでしまう動機は、敵意や妬みだといいます。とくに妬みは、無意識の部分で相手を侮辱しようとしているので、相手のいいところを受け入れることができません。

こうした敵意や妬みを吐き出すことなくおさえつけていると、無意識のうちに自分を攻撃する心配のない存在、つまりわが子に向けて発散されるというのです。

その負の感情は「正義」や「教養」「愛情」といった仮面を被り、社会的に賞賛される価値のある姿をして子どもに向けられてしまいます。本来向けるべきところでなく、いわれのない敵意をわが子に浴びせてしまっているとしたら…?

●常に罪悪感を持ち行動的でなくなる子ども

星と太陽と子ども

他人を妬み、羨む気持ちに支配されると、他人の幸福を許せなくなってしまいます。そんな人と一緒にいると、こちらまで悪いことをしているような気持ちになっていく…。すると罪悪感を持った子は、行動的でなくなってしまいます。

それを積み重ねるうち、自分自身の行動に対する責任を回避するために、すぐに謝罪したり、罪悪感を持ったような表情や仕草をする人になってしまうというのです。

●他人の不幸よりも自分の幸せ。自分を見つめ直して

子ども2人

自粛生活で、いつも以上に目にするニュースにSNS。他人の幸福そうな投稿や勝手な行動をのぞいてはモヤモヤしてはいませんか? 必要以上の正義感で「自粛警察」のような行動をとっていませんか?

他人の幸福は自分の価値を下げるものではないはずで、そのモヤモヤは無意味なものでしかありません。

負の感情をおさえられないときは、妬みの感情を自分が頑張る原動力に変えるなど、自分の中で上手に消化させる方法を探ってみてはいかがでしょうか。

先の見えない不安な毎日ですが、いつか、「なんだかあの頃、家族でいっぱい過ごせたね」と、笑顔で話せる日がくるように。今こそ、他人のことよりも自分のこと、そしてわが子とのことを見つめ直す時間にしてみてはいかがでしょうか。

ドロシー・ロー・ノルトの詩から紐解く親子関係については、『

子どもを伸ばす魔法の11カ条 アメリカインディアンの教え 令和新装版

』(扶桑社刊)に詳しく書かれています。30年読み継がれてきた不朽の名作である本書。ぜひチェックしてみてください。