50歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した5歳の長男・うーちゃん、里子の2歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、少しだけ運動が苦手なうーちゃんの「ボール遊び」のお話です。

ボールは宝物!?投げっこしたい親と、絶対に渡さない子どもたち

5才の養子のうーちゃんと、2歳の里子のぽん子ちゃんの体力向上と、とくにうーちゃんのボール遊びの苦手意識を解消するため、週末に短時間だけ公園で遊ぶことにしました。

とにかく学校などの集団では、ボール遊びが苦手であることが非常にハンディキャップとなります。僕自身がそれで非常に肩身の狭い思いや惨めな思いををしました。僕が子どもの頃とは時代や環境が変わっているかもしれませんが、上手にできて損はありません。少なくとも苦手だったり嫌いでなく、楽しく遊べるに越したことはないのです。最低限、もし下手であったとしても嫌いにならないでほしいのです。

「こっち投げてー」
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2人ともボールを投げて遊ぶという発想がないのか、うーちゃんはそもそも苦手なのか、

「こっちに投げて」

と言ってもボールを持ったまま投げようとせず、さらにしつこく要求するとだれもいないあらぬ方向にボールを投げ、自分で走って取りに行って拾ってうれしそうにしています。

もはや他人に渡さないことが重要であるのか、ボールを宝石か宝物のように人に渡そうとしません。

それを見ていたぽん子ちゃんもすっかり真似をするようになり、「投げて」と言うと即座に「いやだ」と言い、ボールを背中に隠します。

「こうやって投げて遊ぶんだよ」

無理矢理ボールを奪い取ろうものなら、「ぽんこちゃんのボール!」と言って本気で泣いて怒り出します。

「たのしいね」「いくよー」

仕方がないので、ボールは3つ用意して子どもがそれぞれ1つずつ持ち、残った1つのボールを僕がママと投げっこをして「楽しいぞ~」と見せています。

そうしているうちに、うーちゃんやぽん子ちゃんが自分もやってみようと思ってくれればいいのですが、公園で遊んでいる他所の人から見れば、子どもそっちのけで大人同士でキャッチボールをしている変な夫婦です。

●犬と遊ぶときはボールを投げるうーちゃん。親がジュースで釣ると…?

公園には大きなコリー犬がいて、飼い主のお姉さんとボールを打ち返して遊んでいました。うーちゃんがそれを見て近づいていきました。

犬にボールを投げる様子

飼い主のお姉さんが親切な人で、ボールをうーちゃんに渡してくれます。うーちゃんは、親には全然投げてくれないボールをコリー犬に放りました。すると、コリー犬はボールを鼻先で見事に打ち返してうーちゃんの元に戻ります。投げても蹴っても打ち返してくれていました。

そのうち、コリー犬がボールを噛んで破裂してしまい、帰っていきました。

ぽんこちゃんは犬が怖いようでちょっと離れて見ていました。

犬とラリーをする様子

また翌週公園に行ってみると、またその犬と飼い主のお姉さんがボールをやりとりしていました。犬と人間がボールを打ち合って途切れることなくラリーをしていてすごい迫力です。この前のうーちゃんとのやりとりは生ぬるくてさぞ物たりなかっただろうと思うと、申し訳なくてこの日は近づかないようにしました。

全然ボール投げに応じようとしないうーちゃんですが、自販機のそばでジュースを見ながら

「ボールを3回上手に取れたら買ってもいいよ」

と言うと、投げたボールを取ろうと必死です。このような交換条件でしかボール遊びをしてくれないというのは大問題です。

【古泉智浩さん】

漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『

うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門

』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『

うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました

』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(

@koizumi69

)をチェック!