どうしても日々たまってしまうストレス。なにかに没頭するというのも発散法のひとつです。
自閉症スペクトラムの6歳の娘「サンちゃん」の日常を描いたコミックエッセイ『つま先立ちのサンちゃん』を上梓した漫画家のたなかれもんさん。忙しい日々のなか実践している、独自のストレス発散法を教えてくれました。
ストレス発散のつもりだったクレーンゲームが趣味になっちゃった
みなさん、毎日ストレスためてますか? わたしはためてます。
2018年の冬、わたしはストレスを発散させてくれるものに出会ってしまったのです。
ある日、ショッピングモールで買い物をすませたわたしの目に大きなぬいぐるみが映りました。吸い寄せられるように入ったのはゲームコーナー。
●自分でも驚くほど夢中になってしまった
いつもなら、子どもたちの好きなキャラクターを見つけても「クレーンゲームなんて、どうせ取れやしない…」と通り過ぎていたのに、この日のわたしは違いました。
なんの躊躇もなく100円玉を1枚投入していたのです。
この1回によって自分のなかのなにかが目覚めるとも知らずに…。
なんということでしょう。わたしはこのいじわるなクレーンとの駆け引きにまんまと、ときめいてしまったのです…!
取れそうで取れない…その感覚を楽しむように、わたしは次々と100円玉を投入。クレーンの誘いに乗って千円札を1枚両替してしまうほどに夢中になっていました。
そして気がつけば14回目…。
なんと、ぬいぐるみの頭が景品を落とす穴の上に…!
ここまできても「きっと取れない」とわたしは思っていました。
“よくない方”を想定するのが癖なのです。
「とれたーーーーーー!!!」
自分の心臓が激しく鳴っていることに驚きながら、興奮がおさえきれず浮かべてしまった笑みをぬいぐるみの帽子で隠し、わたしはそそくさとショッピングモールを後にしたのでした。
その喜びは抱えきれないほど大きく、そのとき描いていた漫画の中にこの日のエピソードをねじ込んだほどです。(『つま先立ちのサンちゃん』147ページ参照)
●あえて疲れ果ててから、ゲームセンターへ
さて、気持ちが踊る出会いをしたものの、わたしはわが家の家計を預かる身。いくら景品が欲しくても、取れるまで延々とお金を注ぎ込むわけにはいきません。
余力があると諦めも悪くなるので、自然にゲームコーナーに引き込まれるほどに心身ともに疲れ果てる日を待ちました。
結局、2019年中にクレーンゲームと向き合ったのは2回。1回目と同じように、子どもたちの喜びそうなキャラクターにつられて吸い込まれました。
不思議なパワーを発揮して2回とも景品をゲット。
短い時間でドキドキワクワクを味わえるのがクレーンゲームのいいところです。
たまの息抜きとして楽しめるものができてよかったなぁ〜と思っていたわたし。2019年のわたしは、確かにそれで満足していたのです。
でも、大事なことを忘れていました。わたしは熱しやすいのです。
2020年、正月休みの暇つぶしにふらっと入ったゲームコーナーで、大きなぬいぐるみがゲットできず、火がついたわたし。
クレーンゲームの達人たちの動画を見て勉強しては、腕試し。
まぁなんておもしろいんでしょう! その気になれば意外と取れる!
現在、息子も一緒になってクレーンゲーム動画にハマりつつあるわが家の姿がこちら。
増えるぬいぐるみ。
大きなぬいぐるみをギュッと抱きしめるという、子どもの頃の夢を今叶えています。
・あえて疲れ果てる状態まで待つ
・家でできる対策や勉強も欠かさない
こうして、「クレーンゲームにハマる」から始まった2020年。
お金をかけすぎないように腕を磨きつつ、子どもたちの好きなキャラクターの新作ぬいぐるみが登場するのを楽しみに待っています。
【たなかれもんさん】
漫画家。6歳のサンちゃん(長女)、4歳のワッくん(長男)、お父さんの4人暮らし。目立ちたがり屋のあがり性。「cakes」で不定期連載中。初めての著書
『つま先立ちのサンちゃん』(扶桑社刊)が発売中