サマーキャンプと呼ばれる、夏休み限定の習い事や体験教室に通う子どもが増えています。
ここでは本場アメリカのサマーキャンプ事情について、シアトル在住のエディター・Norikoさんにレポートしてもらいました。IT企業が集まるシアトルならではの内容とは?
アメリカのサマーキャンプ事情。Amazon本社でのサマーキャンプに参加してみた
●2か月以上の長い夏休み、アメリカの子どもはなにをする?
ここシアトルでは、6月下旬から始まる夏休み。新学年がスタートする9月初めまで続き、2か月以上も学校がありません。
子どもはうれしいかもしれませんが、正直、親にしたら長すぎ! 共働きのアメリカ人家庭が、子どもを預ける実家も近所にないという場合、一体どうするのでしょうか?
ほとんどの場合、サマーキャンプと呼ばれる、夏休み限定のスクールや体験教室に子どもを通わせます。
その名のとおり、泊りがけのキャンプを行うスクールもありますが、普段の学校と同じように、朝から夕方まで、日帰りで通うのが一般的。1週間単位で申し込め、週替わりでさまざまなテーマやプロジェクトを提供するスタイルが主流です。最近は日本でも、アメリカ式サマーキャンプが、英語学習の一環として各地で登場しているようですね。
地域で提供される短時間の無料プログラムや、学生ボランティアが担当するような、ひたすら遊び倒すリーズナブルなサマーキャンプもありますが、専門的な体験教室となると、1週間でおよそ2~7万円と、値段もそこそこ張ります。
スポーツ、音楽、アート、語学、料理、自然体験、ダンス、武術、ボルダリングなどジャンルは多岐にわたりますが、IT企業が集まるシアトルらしいサマーキャンプといえば、やはりSTEM。これは、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マス(算数・数学)の略で、全米で推進されている理系教育プログラムです。
じつは、うちの息子もSTEM系のサマーキャンプが大好き。昨夏、体験したゲーム・プログラミングをまたやりたいとのリクエストを受け、今年はAmazon本社ビルで行われるサマーキャンプに参加しました。
●Amazonに「通勤」ならぬ「通学」する息子
STEMとひとくちに言っても内容はさまざまで、たとえば、息子が昨年体験したのは人気ゲーム「マインクラフト」を利用したプログラミング教室でした。
一方で、理科、宇宙、医学、ロボット工学、シンガポール式算数なども同じくSTEMのカテゴリに入ります。
今年参加するサマーキャンプは、昨年と同じくゲーム・プログラミングではありますが、「Scratch」というサイトを使います。これは、150以上の国と地域で利用されているIT教育のためのサイトで、日本語を含め40以上の言語に対応しています。
実際にプログラミングしたゲームやアニメーションは、サイト上でシェアし、みんなに見てもらうことも可能です。
Amazon本社があるのは、サウスレイクユニオンと呼ばれるシアトル市内の再開発地区。現在も新しいビルが次々と建設されています。
Amazon本社は複数のオフィス・キャンパスをいち早くオープン。レジなしコンビニの「Amazon GO」や、植物いっぱいの温室風オフィス「スフィア」は、観光客にも人気。
Amazon社員の外食需要を見込んで、飲食店も続々と進出。今やシアトル中のトレンドが集まる注目のエリアです。
社員と一緒にビルの中に吸い込まれていく、わが息子。参加する小学生は7名で、うち半分はAmazon社員の子どものようです。入館証のない私は、先生に引き渡したあと、入り口でお別れ。「ちゃんとできているかな?」と気になりながら、仕事を終えて迎えに行くと、満面の笑みで「楽しかった!」と報告してくれました。
家に帰り、つくったゲームを見せてもらうと、なかなかの本格派でびっくり。なんでもスポンジのように吸収する子どものうちからプログラミング教育を行うことは、やはり今の時代には必要なのかもしれないと改めて感じました。
●夏休みならではの貴重な体験
最終日の帰り際には、みんながつくったゲームを発表し、その時間だけは保護者も参加できました。好きなキャラクターを使った子どもらしい創作は、紙の上でもパソコン画面でも変わらないなぁと、微笑ましく参観。
前述の「マインクラフト」もそうですが、この「Scratch」は、サマーキャンプが終わったあとも、自宅で作業を続けることができます。やりっぱなしではなく、今後につながるのはうれしいですよね。
どんどんできることが増えて、たくましくなっていく子どもたち。9月には新しい学年を迎えます。それぞれが夏休みで体験したさまざまなことを生かし、自分の興味を広げていくのでしょう。
夏休みのサマーキャンプ予約は、年明け頃から始まりますので、じつはもう半年もありません! 人気のサマーキャンプはすぐに締めきられてしまうので、今から息子の興味をリサーチして、来年に備えたいと思います。
【Norikoさん】
アメリカ・シアトル在住。現地の日系タウン誌編集長職を経てフリーランス・エディター/ライターとなり、日米のメディアに旅行情報からライフスタイル、子育て事情まで多数の記事を寄稿する。著書に『
アメリカ西海岸ママ~日本とは少し違うかもしれない、はじめての妊娠&出産~』(海外書き人クラブ刊)、共著書に
『ビックリ!!世界の小学生』(角川つばさ文庫)