本日6月11日は「入梅」。梅の実が色づき、梅雨に入る頃を示す、雑節のひとつです。
じつはこの時季、全国のなかでも突出して、山梨県で「塩昆布」の売り上げが伸びるといいます。そこには「ご当地梅仕事」とでも言うべき、山梨県特有の漬物の存在がありました。
山梨県で6月に塩昆布の売り上げが伸びる理由。「梅の塩昆布しょうゆ漬け」を知っていますか?
塩昆布を発売しているフジッコでは、梅雨から夏にかけて、山梨県で『ふじっ子 塩こんぶ』が売れているといいます。
なぜ、山梨県だけ突出して売れるのか? 同社に取材したところ、「理由のひとつが、山梨県のご当地レシピ『青梅の塩昆布漬け』ではないかと推測しています」と教えてくれたのは、広報宣伝グループの小山裕志さん。
6月に入ると、山梨県のスーパーの漬物づくりコーナーには、青梅と一緒に塩昆布が並びます。梅と塩昆布としょうゆを保存容器に漬け込むご当地レシピ、「小青梅の塩昆布漬け」のためです。
山梨県は全国10位に入る猛暑エリア。また、日本一の小梅の産地でもあります。
「暑い夏を上手に乗りきる知恵のひとつとして、特産品で疲労回復効果のあるクエン酸を含む小梅と塩昆布を使ったレシピが広まったのでは」(小山さん)
●各家庭にそれぞれの味が。おすそ分けし合う文化も
ESSEonline編集部は、実際に塩昆布しょうゆ漬けをつくっているという、甲府市に住む60代の美容師・名取さんに取材しました。
名取さんによると、「ここ20年くらいやっている習慣で、私も母から教わりました」と言います。
「お茶請けや箸休めとして食べています。各家庭ごとに味があり、うちでは塩昆布としょうゆに酢を加えて、少しすっぱく仕上げています。甘い味つけが好きな人もいますね」
はっきりしたレシピがあるわけではなく、目分量でつくっているそう。
「うちの場合は、1kgの梅に減塩塩昆布1袋、しょうゆ適量、酢少々といったところでしょうか。周りではしょうゆの代わりに、『ビミサン』というご当地調味料を使う人も多いです」
漬けて2週間くらいすると、梅の色が変わってくるので、食べ始めの目安としているそう。
「保存は冷蔵庫で。あまり長く置いておくと昆布が溶けてしまうので、だいたい夏までには食べきっています。梅は庭に生えているものや、実家からもらったものを使うことが多い。梅がたくさんある地域だからこそのレシピかもしれませんね」
この時季、ご近所さんと「もう漬けた?」「うちはカツオ節を入れてみたよ」などと話したり、おすそ分けするのが風物詩なんだそう。
●ESSE編集者も実際につくってみました
ESSE編集部も、実際につくってみました。今回使ったのは、群馬産の青梅です。
コンテナ容器に、よく洗って乾かし、ヘタを取った青梅と、塩昆布を入れていきます。
そこにめんつゆ、白だし、しょうゆを適当に混ぜた漬け汁を加え、冷蔵庫へ。
4日たった状態がこちら。
試しに食べてみました。漬け時間が短いのでまだ少し硬く、すっぱさもありますが、これはこれでおいしい! くたっとした塩昆布との相性がよく、確かにお茶請けにぴったりです。
あと1週間ほど寝かせれば食べごろになりそう。こういった梅仕事があれば、梅雨も楽しくなりそうです。
<撮影・取材・文/ESSEonline編集部>