今、“地元パン”がブームです。全国各地のその土地・その店ならではパンを遠くから買い求める人も。
「“地元パン”がおもしろいのは、家族経営から大きな工場をもつメーカーまで、いろいろなスタイルがあるところ。その土地に根づき、地域の食生活を支えています」と語るのは、地元パンの名づけ親でもある、エッセイストの甲斐みのりさん。
今回は、鹿児島県を代表する「大田ベーカリー」のパンを紹介していただきました。
昭和生まれにはCMソングもおなじみ?鹿児島県鹿児島市「大田ベーカリー」
旅先では、個人経営のパン屋だけでなく、スーパー、コンビニ、道の駅などのパンコーナーも見て回ります。同じ地域の隣同士のスーパーでも売っているパンは異なることがあり、多くの店を巡るほど、地元の人にはおなじみのパンに出合うことができるから。
パンはもちろんですが、その土地ならではのあらゆる食材が並ぶローカルスーパーは、私にとって“観光名所”のような存在で、胸がときめく旅の目的のひとつ。
今回紹介する「大田ベーカリー」のパンに出合ったのも、とある鹿児島のスーパー。だいたいいつもホテルでは朝食をつけずに、地元の喫茶店で朝ご飯を食べたり、パンを買って食べるのが好きな私。鹿児島旅の途中にも、スーパーで気になるパンを調達しました。
それが、「大田ベーカリー」の「ツイストドーナツ」。ねじって揚げたドーナツに、ピーナッツチョコレートをコーティングしたものです。トリコロールカラーの袋のデザインにひかれて選んで大正解!
ドーナツは、もっちりとしたパン生地にビスケット生地を折り込んでいるので、ところどころにサクッとした歯ごたえが混じります。さらに、ピーナッツの粒としっとりしたチョコレートが重なり合い、独特な食感に。
ほどよい甘さのチョコレートが、ホテルの部屋でいれたインスタントコーヒーにもしっくりなじみ、一日の始まりに力がみなぎりました。
●創業65年!鹿児島では生まれてからずっと食べ続けている人も
昭和28年創業の大田ベーカリーは、鹿児島を代表するパン屋さん。工場に直営の販売所もありますが、鹿児島や宮崎のスーパーや生協、病院や学校売店など、さまざまな場所でパンを販売しています。地域の学校給食も手がけているので、子どもから年配者まで、幅広い年齢層に親しまれています。
大田ベーカリーのパン工場では毎朝9時に、昭和41年頃のCMソングが流れます。その「大田のパンの唄」は、ホームページで歌詞を見ることができるのですが、なんともほほえましいフレーズの連なり。
鹿児島には、このCMソングを口ずさめる人も多くいるとか。いつか、メロディつきで聞いてみたいなあ。
大田ベーカリーによると、鹿児島で生まれ育ち、幼稚園・小中高の給食、高校と短大の売店で、大田ベーカリーのパンを食べたというお客様から、こんな話も届いたそう。
「短大卒業の記念にスキーに行き、転んで骨折入院した病院でも、朝食に大田のパンが出てきました。こんなに長い間、大田のパンにお世話になるとは! 昔から愛されているのだなと感心もしました」
生まれてからずっと、大田ベーカリーのパン一筋という人も、きっと大勢いるのでしょう。
大田ベーカリーのパンは実際に手にすると、写真で見るより、ずっしり存在感があります。ぜひ鹿児島を訪れた際には、スーパーなどで探してみてください。
カステラにマーガリン、コーヒーパンにコーヒークリーム!サービス精神と創意工夫に満ちた地元パン
大田ベーカリーのパンを試食してみました。どれも創意工夫に満ちた、懐かしくも新しい味わいです。
●4つの食感が楽しめる「ツイストドーナツ」
20年以上の人気パン。トリコロールの袋のデザインが秀逸です。パン生地、ビスケット生地、チョコレート、ピーナッツ、4つの食感の重なりが楽しめます。
●コーヒーづくし!コーヒーと一緒に味わいたい「コーヒーサンド」
コーヒー味の食パン2枚。その間に、芳醇なコーヒークリームをはさんでいます。もちろん、コーヒーと好相性。
●温めて食べたい!マーガリンがじんわりおいしい「ベビーカステラパン」
やわらかなパン生地で、カステラとマーガリンをはさんでいます。ほんの少し温めると、パンとカステラにマーガリンがジュワッとしみ込み、さらにしっとりとした食感に。
●ジャムやクリームがたっぷり!ケーキのような「三角カステラサンド」
ほんのり甘い菓子パン生地で、カステラ、イチゴジャム、ミルク風味のクリームをはさみ、三角にカット。
まるでケーキのように味わえます。
●ラム酒漬けレーズンが少し大人の味わい「ラムレーズンサンド」
ラム酒に漬けたレーズンを2つの味のクリームに散りばめ、カステラサンドにはさみこんでいます。
●いろいろな食材をサンドしたくなる「コッペパン」
どっしり大きな、昔ながらのコッペパン。ほんのり甘い菓子パン生地で、総菜からクリームやフルーツまで、間に好きなものをはさんでアレンジしても。
●鹿児島県民の朝の定番「ファミリー食パン」
トースト用の食パン。焼くとさっくりとした食感に。たっぷりとバターをのせて朝食に。
●手さげ袋には、麺棒を持った熟練パン職人が描かれています
買いもの用の手さげ袋には、ふくよかなパン職人の絵が。ル・シャン・ベールとは、登録商標された、大田ベーカリーの別名です。
・店名 大田ベーカリー(登録商標:ル・シャン・ベール)
・住所 鹿児島県鹿児島市伊敷8-21-20
・電話 099-220-6181
・営業時間 工場直営 平日7:00~19:00 土・日7:00~18:00
・定休日 なし(12/31~1/3は休み)
・URL
株式会社 大田ベーカリー【甲斐みのり】
静岡生まれのエッセイスト。大阪、京都と移り住み、現在は東京にて活動。旅、散歩、お菓子、地元パン、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨などを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。まち歩きや手みやげ講座など、カルチャースクールの講師もつとめる。著書は
『地元パン手帖』(グラフィック社刊)、
『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』(エクスナレッジ)、
『全国かわいいおみやげ』(サンマーク出版)など40冊以上。ホームページ
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