調査によると、女性の平日における家事時間の平均は4時間18分。20年前の1995年のデータと比べてみても、わずか14分しか減っていません。(2015年・NHK放送文化研究所が行った国民生活時間調査)
家電が進化し、共働きが増えているのに、まだ女性が主として家事を行っている実態が見えてきます。
家事について長年研究している佐光紀子さんも「データ上からも、実際に多くの人にインタビューした感触からも、日本の主婦は家事をがんばりすぎる」と言います。
「『家事はきちんとやるもの』という考え方に縛られている人が本当に多いんです」と話す佐光さんに、ご自身の研究や経験をもとに、家事の上手な手の抜き方を教えてもらいました。
日本人は家事をがんばりすぎ。「きちんと」に縛られず、息抜きできる方法
●自分を犠牲にしてまで家事をやらなくていい
「朝食ひとつとっても、温かい主菜に副菜、フルーツも添えてと、栄養バランスのとれたものを理想とする人、多いでしょう。でも共働きで子どもがいて、お弁当づくりもあって洗濯しながら身支度もしてとバタバタしてる人が、それだけの朝食をつくるのは大変です」と佐光さんは指摘します。
「欧米ではヨーグルトや、シリアルに牛乳をかけたコールドミール(冷たい食事)ですませる家庭も多いし、毎日同じメニューということも。お弁当だってパンにジャムやピーナツバターを塗っただけ、とシンプル。朝から家事に追われることはありません。丁寧なのがダメというわけではないけれど、自分を犠牲にしてまで、やる必要はないんじゃないでしょうか」
●家事のできが人の価値を決めるわけではない
「丁寧な暮らし」「手づくりの食卓」「ホテルライクな部屋」にあこがれても、それができないことに負い目を感じることはない、胸をはっていろんなことを楽しんで、と佐光さんはエールを送ります。
「家事や育児をがんばる私に価値があると思うと、たとえば具合が悪くて家事ができない状況とか、子育てが終わったときに、家の中で自分の存在価値を見いだせなくなることも。今フルパワーでやっている家事を2割程度に減らして、あとは家族に手伝ってもらったり、目をつぶったりするくらいでもいいじゃないですか。家事の出来があなたの価値を決めるんじゃない。もっと手抜き、息抜きして暮らしを楽しみましょうよ」
●ちょっとダメなお母さんでいい
佐光さん自身、仕事をしながら3人のお子さんを育て、丁寧な家事からはほど遠かったそう。
「家事ができないのは子どもたちもわかっているから、当てにしなくなって、洗濯物を取り込んでたたんだり掃除したりとフォローしてくれるように(笑)。ダメなお母さんだと周りが気にかけてくれるし、こちらもお願いしやすいし、いいコミュニケーションが取れますよ」
●各自がやる家事の線引きはしっかりと
佐光家は、各自が家事をここまでやる、という線引きがはっきりしています。掃除は手に取りやすい位置にホウキとチリトリをつるしておき、自分の部屋は各自で掃除するルールに。洗濯も同様です。
「自己管理できるところはやってもらわないと。郵便物や書類も各自の引き出しを用意して、私がそこに投げ込んでおき、その先の処理は自分でやってもらっています」
●周りの力を上手に借りる
「日本には『手づくり神話』が存在して、自分でつくることをベストとする風潮がありますが、周囲に頼るのもありだと思います」
料理する時間がないときは、市販の総菜に頼ったり、外食したり。裁縫が苦手な佐光さんは、子どもの通園バッグは、ハンドメイド好きの友人に頼んでつくってもらったそう。
「全部やらなくても、自分が得意なことをやれば、それで十分です」