2016年の熊本地震から今日でちょうど2年。今回は、全国的にあまり知られていない熊本県の「赤酒」をご紹介します。赤酒は、熊本県ではお屠蘇(とそ)として飲まれることもある、甘みのあるお酒。じつは調味料としても優秀で、料理に使うととってもおいしく仕上がるんです。
そんな赤酒の魅力を、現地在住ライターの松野久美さんにレポートしてもらいました。
熊本の主婦の間で大定番!赤酒は毎日の料理に大活躍します
赤酒は、木灰(きばい)を使ってつくられるお酒。一升ビンからグラスについでみると、その名のとおり赤味を帯びた色あい。さらっとした口当たりでほのかに甘く、飲み心地はまろやかです。
●料理酒やみりん代わりに大活躍
熊本県では赤酒を料理に使うことも。うま味成分が多く上品な甘味があるため、“ちょっと高級なみりん”という立ち位置です。料理に使うと以下のような効果があり、手間暇かけていない普通の料理が、ワンランク上の仕上がりに。
・調理前の肉・魚に少量ふりかけておくと、臭みが取れて身がやわらかくなる
・料理が冷めてもテリツヤが落ちない
・アクのある野菜を煮たときには変色せずきれいに仕上がる
肉・魚の照り焼きや煮つけ、炊き込みご飯、「だご汁」(平らな団子、ニンジンやカボチャといった野菜をみそ仕立ての汁に入れた郷土料理)など、和食のどんな料理にも活躍。県外のプロの料理人に愛用者が多く、高級料亭でも使われているというのも納得。
飲むだけではなく、調味料として万能なパワーをもつ赤酒は、古くから熊本の家庭料理に欠かせない存在です。
「赤酒」を使うと、普通のロース肉が抜群にやわらかく!
調味料として赤酒を使い、豚のショウガ焼きに赤酒を。
赤酒には醸造元の違いで「東肥」と「極上」がありますが、今回は「東肥」を使いました。
一般的なみりん(左)と比べてみると、色の違いがはっきり! こっくり赤褐色で、紹興酒の仲間のような印象。
「ショウガ焼き」に赤酒を使ってみましょう。酒やみりんを使うところ、赤酒で代用。
「薄口しょうゆ1:赤酒2:すりおろしたショウガたっぷり」という割合でタレをつくり、豚肉に絡めてソテーしました。
テリツヤが加わっておいしそうな仕上がりに。ひと口食べてみると…スーパーで買ったロース肉が、抜群にやわらかい!
砂糖を入れなかったのですが、赤酒の自然な甘味がショウガの辛味をほどよくマイルドにしてくれます。ほかの料理に使う場合も、みりんや砂糖は控えめにするのがおすすめ。
赤酒の新しい楽しみ方!「赤酒カクテル」にもハマっちゃいます
最近では、赤酒の新しい飲み方が流行しています。ウイスキーを加えて炭酸水やジンジャーエールで割った「赤酒ハイボール」や、牛乳で割った「赤酒カルアミルク」など。
「赤酒ハイボール」は赤酒の甘さとウイスキーのすっきり感がマッチして、スパークリング日本酒のような味わい。とてもおいしい飲み方です。
東肥の赤酒を扱う蔵元「瑞鷹」は2016年春の熊本地震で大きな被害を受け、製造を停止していたところ、地元有志が復興支援の会を立ち上げたことがニュースになっていました。
熊本の家庭にとって赤酒は欠かせないもの。それだけ地元に愛されている味ということなんですね。
今回紹介した赤酒は通販サイトからお取り寄せできますし、熊本のスーパーやコンビニのお酒コーナーにもあるので、旅行やお出かけで立ち寄った際に手に取ってみてはいかがでしょうか。
きっと普段の料理に活躍するはずですよ。赤酒カクテルもぜひお試しを!
<撮影・取材・文/松野久美>