今、ESSE編集部が注目する料理ブロガーで、自宅での日々の料理から、おもてなし、大人数でのパーティまで、季節感のある食卓を得意とするぶち猫さん。料理はもちろん、洗練されたテーブルコーディネートにもマネしたくなるアイデアがあふれています。
そんなぶち猫さんに、器を中心とした食卓の楽しみ方について提案していただきました。今回のテーマは、初心者でも失敗しない、最初に買うべきお皿について。

じつは白の和皿はパスタなど洋食にも合う!

ここでは、わたしが日々集めている「器」を主役に、日々の食卓をちょっと楽しくするための選び方、組み合わせ方、料理の盛りつけ方や収納方法などについて、取り入れやすいアイデアを紹介していきたいと思っています。

●器使いで日々の食卓を楽しむ

白の和皿
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器とテーブルコーディネートについては、「食器棚が狭くて数をそろえられない」「センスよく見せる方法がわからない」「いつも同じ食器ばかり使ってしまう」など、知人からいろいろな悩みを伺います。
テーブルコーディネートというと、パリッとアイロンのかかったテーブルクロスにおそろいの器をたくさん並べて…と敷居の高いイメージをもっている方も多いようです。

でも、食事は毎日のこと。そんなに手間暇をかけるのも難しいですよね。
家庭での日常的な器使いであれば、そこまで気負う必要はないと思います。テーブルコーディネートの細かい決まりごとを覚えたり、たくさんの器を集めたりしなくても、ちょっとしたコツやルールを押さえることで、食卓をおしゃれに演出することはできます。器の特性を知り、盛りつけ方を工夫することで、シンプルな料理をよりおいしそうに見せることだって難しくありません。

お気に入りの器を使って食卓を少しでもおしゃれにできたら、毎日の暮らしがもっと楽しくなると思いませんか。

●まずは食器棚を点検して手持ちの器を確認

手持ちの器を確認

器の活用を考えるにあたり、最初にしていただきたいことは、食器棚の点検です。現状、家にどんな器がどれくらいあるのか、食器棚の中を確認してみてください。
調理中はなにかと忙しいので、つい手前の取り出しやすい位置にある器ばかりを使ってしまいがち。最近なんとなく使っていなかったもの、持っていることを忘れていたものはありませんか。

限りある収納スペースを有効活用するためにも、まずは手持ちの器の棚おろしをして使えそうなものは使い、どうしてもたりないものは買いたすという順番で進めていきましょう。

おすすめしたい1枚は「七寸の白い和皿」

七寸の白い和皿

さて、今回は日常的に使い回しやすいベーシックなお皿の話をしたいと思います。私が最初の1枚としておすすめしたいのは「七寸の白い和皿」です。

色が白なのは、盛りつける料理、組み合わせる器やテーブルの色を選ばないので、難しく考えなくても幅広く活用できるから。
表面の質感は写真のようにつるつるしたもの(一般に「磁器」と呼ばれています)に限らず、ざらざらした素朴な質感のもの(こちらは「陶器」と呼ばれます)でも問題ありません。

●なぜ洋皿よりも和皿がいいのか

なぜ洋皿よりも和皿

白いベーシックなお皿というと、写真のような真っ白い洋皿を選んでしまう人が多いのですが、じつはこの白い洋皿は、日本の家庭ではあまり使い勝手がよくありません。というのも、洋皿に典型的な和食を盛りつけるのは難しいのですが、その逆は意外と簡単だからです。実例を見てみましょう。

お刺身を盛りつけ

スーパーでパック売りしていたお刺身を洋皿に盛りつけ直してみました。左側は平皿、右側は少し深さのあるお皿です。
色が白なのでパッと見た感じは成立するような気もしますが、どちらも「ホテルの朝食バイキングで、ほかに選択肢がなかったので仕方なく洋皿に和のお総菜を盛りつけた」ときのような違和感が拭えません。

ときどき雑誌などで、本格的な和食を洋食器に美しく盛りつけている事例を見かけますが、あのような盛りつけをするにはテーブル全体のバランスも含めて高度なテクニックが必要なので、器のアレンジに詳しくないうちにマネをするのはおすすめしにくいのです。

白い和皿にお刺身を盛りつけ

こちらは上で紹介した白い和皿にお刺身を盛りつけたものです。当然ですが、和皿に和食を合わせているのでしっくりきていますね。同じことが焼き魚や煮物などの和のお総菜全般にいえます。つまり、和のお総菜には素直に和食器を合わせるのが、いちばん簡単で間違いがないのです。

では、その逆はどうでしょうか。和皿に洋食を盛りつけても問題ないのか。こちらも実際にやってみました。

和皿に洋食を盛りつけ

上で紹介した白い和皿に、ベーコンと菜の花のパスタを盛りつけてみました。いかがでしょうか。
洋皿にお刺身を盛りつけたときのような違和感はありませんね。カジュアルなカフェのランチのような雰囲気になったのではないでしょうか。

●シンプルな白い和皿なら、どんな料理もそれなりにいい雰囲気に

パスタのような洋食には洋皿を合わせなくてはと思い込んでいる方が多いのですが、じつは和皿にパスタを盛りつけることは難しくありません。カジュアルなおうちご飯であれば、なおさらです。お皿の色が白の場合には、食材の色合いも気にする必要がないので、ほとんどのパスタは白い和皿に盛りつけてもチグハグにはなりません。

パスタ以外の洋食、さらには中華やエスニック料理も同じです。それぞれの料理にぴったり合う専用の器を用意できれば、それに越したことはありませんが、たまにしかつくらない料理のために使用頻度の低い器を買って収納しておくことは、効率的とはいえません。
そんなときシンプルな白い和皿があれば、どんなテイストの料理もそれなりにいい雰囲気で盛りつけることができるのです。

なお、今回ご紹介したような縁(「リム」と呼びます)が少し立ち上がっているタイプのお皿であれば、少々汁気のある料理にも対応できて、さらに応用範囲が広がります。
そのような意味で、白い和皿はつくる料理の種類を問わずに使え、もっていればいろいろな場面で使い回しの利く便利な1枚といえます。

●「七寸」は盛り付けがしやすいサイズ感

「七寸」は盛り付けがしやすいサイズ感

最後にサイズについて。「七寸」とは約21センチのことで、分類としては中皿になります。
このサイズがいいのは、大きすぎないところ。大きいお皿は重くて収納もかさばるため、それだけで日常使いしにくくなります。その点、七寸は取り回しやすいサイズ感で、素材にもよりますが比較的軽くて扱いやすい。

それ以上に「七寸」のお皿には、盛りつけがしやすいという大きな利点があります。すなわち、大きめのお皿に少なめのおかずを盛りつけようとすると、どこになにを盛るかをあらかじめ考えて配置する必要があります。

レストランでは、余白を活かす演出のために、あらかじめどこになにをどのくらい盛りつけるか決めておくものですが、毎回つくるものが違う家のご飯で、調理中にそこまで考えるのはとても大変です。

一方で「七寸」のお皿は小さめなので、あまり深く考えなくても1人分のおかずを盛りつけると余白が埋まり、料理の配置のバランスにさほど気を使う必要はありません。
また、食卓の全体の配置を考えるときにも、ひとつの器が大きすぎないことで、ほかの器とのバランスが取りやすくなるという利点もあります。

七寸の白い和皿

そのような理由で、私がおすすめする初めの1枚は「七寸の白い和皿」です。

もし食器棚を点検した結果、近いタイプの器が見つかったら、ぜひいろいろな料理に合わせてその使い勝手のよさを実感していただきたいと思います。また、これから器をいろいろ集めていきたいという方がいれば、器の世界の最初の一歩として、お気に入りの質感の「七寸の白い和皿」を探していただくのも楽しいと思います。