2017年の年間ベストセラー第一位(日販調べ)は、佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』(小学館刊)でした。この本に牽引されるかのように、今年は、年齢を重ねた人生の達人による著書や“元気な高齢者”が話題となりました。
なかでもダントツにお元気なのが、85歳にして現役のチアリーダーという滝野文恵さんではないでしょうか。
滝野さん率いるシニアのチアダンスチーム「ジャパンポンポン」は、メンバー25人の平均年齢がなんと71歳! 最高齢の滝野さんも軽快にステップを踏みターンを決めます。滝野さんが「ジャパンポンポン」を設立したのは63歳のときで、すでに22年もシニアチアダンスを続けています。
そのきっかけや、85歳にしてなお元気に活動を続けるエネルギー源について、ESSE編集部が伺いました。
なにかを始めるのに年齢なんて関係ない。そして人生は楽しくなくちゃウソ
62歳のとき、アメリカから取り寄せた本を読んでいたところ、「平均年齢74歳のシニアチアチームがある」という1文を目にし、衝撃を受けたという滝野さん。
「『えっ! お年寄りにチアができるの!?』とびっくりしました。それまで、なにかをするのに年齢なんて関係ないと考えていた自分なのに、お年寄りがチアをするということを考えたこともなかったのです。もしかしたら私もできるんじゃないか、やってみよう!と思い立ちました」
思い立ったら猪突猛進という滝野さんは、すぐにそのアメリカのシニアチアチームに手紙を書きました。
「といっても私がわかっている情報は、『アリゾナ州のサンシティで活動しているサンシティポンズというチーム』ということだけ。そこで、サンシティの郵便番号と『サンシティポンズ リーダー様』と書いてエアメールを出したのです」
宛先がわからない時点で、普通の人なら諦めてしまいそうなものですが、そこで屈しないのがさすが! 手紙は奇跡的にサンシティポンズのリーダーの元に届き、文通をしていろいろなことを教えてもらったそう。
「その後、サンシティのリーダーが送ってくれた写真などを友達に見せて『やってみない?』と誘ったところ、『やろう! やろう!』と盛り上がって、ジャパンポンポンが生まれたのです」
結成当時5人だったメンバーは、今では25人に増え、国内のマスコミだけでなく、イギリスの国営テレビ、スイスの新聞、韓国のテレビ番組、スペインやオーストラリア、イタリア、ルーマニアなどさまざまな国のメディアから取材を受けています。
そして2017年はなんと、初の海外公演を実現。10月、台湾の高齢者デイケアサービス普及を推進する団体からのオファーで、1万4000人収容のホールで公演を行いました。
「出演するのは、台湾にある2000くらいのシニアグループのなかから選ばれた9グループと、海外から招かれた1グループ。今年はそこに私たちを呼んでもらったのです」
高齢ゆえに40~50人の大人数でステージに出ても定位置で体操する、というような動きの少ないグループが多いなか、ジャパンポンポンはミニスカの過激な衣装で、フォーメーションをつくってダンスを披露し、会場を盛り上げました。
「私たちがいちばん目立っていたし、会場を盛り上げたと思います。通訳さんとアテンドしてくださった方がつきっきりでお世話してくださったので、なんの心配もなくステージに立てましたし、出演されるグループのみなさんも、フレンドリーで温かく迎えてくださって。いつでも舞台は楽しいですけれど、とくに海外で歓迎していただくと、本当に嬉しいですね。またお声がかかれば海外公演にもぜひ行きたいです。ちなみに今回の台湾公演は、滞在費は持っていただきましたが、航空券は自己負担だったんです。それでもみんな『行く!』って言って。ガッツがあるんです、うちのメンバーは(笑)」
最後に滝野さんは、「なにかを始めるのに年齢なんて関係ない。そして人生は楽しくなくちゃウソ」と、にっこり笑ってくれました。今いちばんチャレンジしたいことは、スカイダイビングのライセンス取得なのだとか!
滝野さんの生き様を見ていると、自分を楽しませるのに年齢は関係ないということを教えられます。滝野さんの著書『
』には、これまでの人生や考え方について詳しく書かれていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
【滝野文恵さん】1932年、広島県生まれ。関西学院大学卒業後、1年間アメリカ留学。25歳で結婚、1男1女を授かる。53歳、アメリカノーステキサス大学で老年学修士号を取得。帰国後、63歳でシニアチアリーダーチーム
「ジャパンポンポン」を設立。平均年齢71歳、24人のグループ内最年長で今もステージに立つ。著書に
『85歳のチアリーダー』(扶桑社刊)がある