小説家として目覚ましい活躍を見せる、NEWSの加藤シゲアキさん。このたび、待望の新刊『チュベローズで待ってる AGE22』『チュベローズで待ってる AGE32』が刊行され、発売早々に大反響を呼んでいます。
12月12日には、この小説の舞台となる、新宿の歌舞伎町ブックセンターで刊行記念イベントも開催。その様子は、スポーツ新聞各紙などでも大きく報じられました。
加藤シゲアキさんの新作は、歌舞伎町のホストが主人公
上巻「AGE22」は、2015年の秋から始まる物語。大学4年生の光太は、就職活動の全敗が確定した日に、歌舞伎町にあるホストクラブ「チュベローズ」のエース・雫にスカウトされます。生活費を稼ぐために歌舞伎町の住人となる一方で、就職浪人として翌年のリベンジを狙う光太の前には、ホストたち、クラブのオーナー、常連の女性客といった個性豊かな人々が登場。ホストとしての経験は光太を大きく成長させますが、その行く手には思わぬ悲劇が待ち受けていたのでした――。
すべての画像を見る(全1枚)『チュベローズで待ってる』は、上下巻を合わせると500ページを超える大長編。「多忙な芸能活動の合間に、いつこんな大作を書いていたの!?」と驚嘆せずにはいられませんが、加藤さんいわく「時間は結構あるんですよ。ぼくはすごい寝ますし、全然無理もしていないんです。本がいいなと思うのは、考えることはいつでもできるから。書く時間はどこかでつくらなくちゃいけないけど、考えるのはどこでもできるので」。
とはいえ、週刊誌で連載をしていた当時は(「AGE22」は、もともと『週刊SPA!』で半年間連載されていたもの)、締きりに追われる苦しさに「マンガ家ってすごいな!」との思いを新たにしたとか…。
刊行記念イベントでは、歌舞伎町で働く人たちからも「時間をコントロールする方法」について質問を受けていた加藤さん。つき合いが多い人ほど夜も遅くなりがちですが、朝の番組を担当するようになってから朝型にシフトしたという加藤さんは、「無理をしないで自分のルールを決めちゃったほうがいい」とアドバイス。「1時を越えたらちょっとイヤだな、2時でひと区切り…とか。自分がそう決めると、自然と周りもそうなっていくものなんです。だから、自分のルールを周りにちょっと押しつけてもいいんじゃないかな」。質問者も大きく頷いていました。
「小説でしか味わえないものがある」
ちなみに、小説を書くのは「自分の家の、本棚がある部屋じゃないと書けないタイプ」だと語る加藤さん。
「小説を書いているときって、家にあるほかの人の本を結構読み返すんですよ。(書き方の参考にするとか)そこまで深い意味はなくて、本棚にある好きな作家さんの本をパラっとめくって、目に入ったところを3行くらい読んで『うん』と思って戻すんです(笑)。『小説ってやっぱりいいな!』みたいな。半分はゲン担ぎみたいなものなんですけど、それが結構支えになっています」。
小説をこよなく愛する加藤さんが全力を注いで書き上げた『チュベローズで待ってる』。SNSでの反響を見ると、長大なボリュームとテーマの深さにもかかわらず、「普段は小説を読まないのに、思わず一気読みしてしまった」という感想が圧倒的多数を占めています。
スマホやほかのエンタメに時間を奪われて、小説を読む機会がめっきり少なくなってしまった昨今ですが、「それでも小説でしか味わえないものがある」と加藤さん。
「先日、たまたま会った初対面の方に『小説を書いてます』って話をしたら、『本は読むけど小説は読まない』と言われたんですよ。お医者さんだったんですけど、論文が載っている専門書と違って『小説は自分の利益にならないから読まない』って。でも、僕は小説を読んで人間について知ることで、他人に対して優しくなれたり、他人の気持ちを想像できるようになったりすることってあると思う。『チュベローズで待ってる』でも、いろんな人間が、それぞれ行動に自分なりの動機を持って生きている。そんな物語を読むことが、他者を理解するひとつのきっかけになればいいなと思っています」
『チュベローズで待ってる』の各巻の冒頭には、加藤さん自身の希望で“人物相関図”が挿入されています。ひとときも同じ形をとどめない人間関係のうねりに、読者も翻弄されっぱなし。読後にはしばらく放心状態になってしまうかも…。かけがえのない読書体験を、この冬ぜひ味わってみてください。
1987年、大阪府生まれ。2012年、『ピンクとグレー』で作家デビュー。’14年、『週刊SPA!』誌上で短編『Undress』を連載。同作を収録した短編集『傘をもたない蟻たちは』で、作家としての幅の広さを見せつけた。アイドルグループNEWSのメンバー、俳優としても活躍の幅をますます広げている。近著に、
『チュベローズで待ってる AGE22』『チュベローズで待ってる AGE32』(ともに扶桑社刊)がある。