近年、「家事が苦手」という声を多く耳にするようになりました。仕事や育児と家事を両立させ、さらに「家事も完璧にこなさなければいけない」と思うあまり、手際が悪いことに悩んだり、自分を責めたりする人も少なくないようです。
しかし、そもそも、「完璧な家事」をする必要が本当にあるのでしょうか? 完璧にできない自分を嫌いになる前に、まずは家事との向き合い方を変えて、ラクになりましょう。
今回ESSEは、効率的な家事の時間割について書いた本『もっと動ける私になる!魔法の家事時間割』(扶桑社刊)の著者である整理収納アドバイザー・三條凛花さんに、そのヒントを伺いました。自身ももとは家事が苦手だったという三條さん、どうして今のように前向きに取り組めるようになったのでしょうか。
家事は完璧じゃなくていい!自分がラクになるルールをつくる
三條さんが結婚当初に理想として描いていたのは、母親が実践していたような、家じゅうがぴかぴかで、食卓におかずがたくさん並んでいる家庭でした。
「でも私自身は家事が苦手でした。朝、テレビを観始めるともう動き出すことができない。ネットを見たり、ゲームアプリをしたりで、気づくと洗濯ものの山に囲まれ日が暮れている…ということもよくありました」
動けなかった理由のひとつが、家事を完璧にこなそうとする気持ち。それを防ぐために、あるときからは「ここからはやらなくてもいい」という線引きを自分でするようになったところ、気持ちがぐっとラクになったそうです。
家事の一部を「これはやらなくてもいいこと」に決め、がんばりすぎない家事のルールをつくることは大事です。「完璧にしなくては」という気持ちはプレッシャーになり、やりたい気持ちを妨げます。大切なのは「私にとって」という基準。ほかの人と比べないようにしましょう。
ここでは、三條さんが決めたルールを紹介してもらいました。自分のルールを決めるうえで参考にしてみてください。
●調理に包丁を使わないレシピを考える
疲れがたまると、「今日は料理をしたくないな」と思うことも。そういうときのために調理の工程を少し減らせるレシピを考えておきます。
まずは包丁を使わないこと。包丁とまな板を使うと洗い物が増えます。だから、お肉なら切らなくてもいいひき肉やこま切れ肉を選んだり、豆腐は手で粗くくずしたり、ちぎるだけでいいレタスやキャベツを使った料理を選ぶことに。そのまま盛りつけるだけでいいメカブや卵豆腐も重宝しています。
さらに、時間のあるときに野菜をまとめて切って冷凍する習慣に。ピーマンとタマネギとハムを入れた「ナポリタンセット」のように、自家製キットにすると便利です。
●その都度、ものを元に戻さない。寝る前のリセット片づけだけ
余計なものが出ていない、生活感のない部屋は理想ですが、子どものいる家庭ではなかなか難しいもの。そこで、子どもがきちんと片づけを理解するまで、「生活感のない部屋は来客時のみ」としました。
普段は子どもを追いかけて、散らかしたものを定位置に戻すことはしません。床に散らかったおもちゃも、踏んで転ばないよう、とりあえず大きなカゴにつめ込むだけ。
ただし、寝る前だけはものをすべて定位置に戻してすっきりさせます。1日の終わりのリセット片づけです。
●体調が悪いときに無理をしないで最低限の家事だけに
体調が悪いときは、家事をお休みすることもあるでしょう。ただし、子どもの健康と衛生を守れるように優先順位を決めています。
・調理はするが紙コップを使ったり、まな板にクッキングシートを敷いたりして、調理道具を洗わなくてすむようにする
・外に出られる場合はお総菜を買う。その場合もお皿に移し替える手間はかけない
・洗濯だけは必ず行う。掃除は最低限にする
・子どもとペットのお世話は必ず行うが、遊びは控えめにする
無理してがんばると、もっと動けなくなるので避けましょう。
●キッチンは毎日ちょこっと掃除。きちんと掃除は週1回に
エコであること、きちんとした道具を使うこと、手間をかけること。それが正しい家事のあり方だと思っていませんか?
毎日のキッチン掃除は、コンロ回りと調理台をさっとウエットシートでふくだけにしています。掃除道具ですみずみまで「きちんと」掃除をするのは毎週火曜日だけ。
簡易的な道具を使っていても、その都度きれいにすれば汚れはたまりません。1時間じっくり1度行うより、数分を何度も行うほうが負担は少ないのに、きれいさは同じです。
●「あって当たり前」をなくしてみる。手入れが面倒なものは置かない
わが家ではキッチンの排水口のフタを外しています。たまった量がひと目でわかるので「もうネットを替えなくちゃ」と気づき、排水口のゴミがあふれることがなくなりました。
ほかにも水きりカゴ、スリッパ、トイレマットに玄関マット、三角コーナーなど、あって当たり前だと思っていたものをなくしてみたら、手入れの手間が減り、掃除や洗濯がラクになりました。
働いている人、育児や介護をしている人。家が広い人、狭い人…。人それぞれ家事のもち時間が違うということに気づくことも大切。
こう考えてみると、少しだけ手を抜いても許されるような気がしませんか。