「グルメタクシー」をご存知ですか? 観光地の人気スポットを自由に巡る観光タクシーに食べ歩きの要素が盛り込まれた、“個人的はとバスツアー”と例えればわかりやすいでしょうか。すでに、京都府(元フランス料理シェフによるグルメ案内)や、香川県(通称「うどんタクシー」での讃岐うどんの名店巡り)などといった楽しいサービスが。そんな「グルメタクシー」が、観光復興のひとつとして、熊本でも始まっています(本格始動は秋から)。現地在住ライターにレポートしてもらいました。

グルメタクシー
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「グルメタクシー」はタクシーで観光地を食べ歩く、スペシャルな食の旅!

熊本地震から1年の節目を迎えたGW直前、観光復興のひとつとして「”くまもとグルメタクシー”が試験運行開始」というニュースが飛び込んできました。私は「グルメタクシー」なるものを初めて耳にしたので、タクシーで巡るなんて、ちょっと高そう…など不安も…。しかし、実際に乗ってみると、すてきな発見がたくさん! タクシーならではの小回りのよさを最大限に発揮するため、新しい観光方法としておすすめポイントが満載でした。

●魅力1:スペシャルな食べ歩きを楽しめる

2年前に神奈川から熊本に移住した際に気づいたのが、車移動が中心の熊本では、都心のように電車を乗り継いで食べ歩くことがまずできない、ということでした。徒歩での食べ歩きをするなら“街”と呼ばれる市内の繁華街に限られますし、人気店は車でしか行けないエリアに多いのです。また、車でお目当てのお店にたどり着いても、駐車場がない場合は、パーキングを探す手間も。

その点、グルメタクシーならそういった煩わしさがなく、点在する人気スポットにサクッとたどり着けます。さらに、タクシーで旅をしているというぜいたく感に浸れ、スペシャル感もあります(笑)。

●魅力2:個人旅行に最大限に対応してもらえる

あらかじめコースは設定されていますが、希望を伝えれば途中で別のスポットに立ち寄ったり、コースをアレンジしてくれたりします。団体行動のバスツアーではできないことですよね。

熊本のディープな食の旅
写真提供/熊本県

こちらの写真は、熊本市内の海沿いの地域にあり、バイカーに人気の「ナルシストの丘」。こうした穴場スポットや絶景ポイントに立ち寄れるのもタクシーならでは。

●魅力3:いろいろな面で気をつかわずにすむ

土地勘のない観光地で、効率よく回ろうとあれこれ考える必要もないですし、友人や家族でレンタカー移動する場合に運転してくれる人に気をつかうこともありません。また、バスツアーよりも時間に縛られないので、自分のペースでゆっくり回りたい人にもおすすめです。

熊本のグルメタクシーは現在3コース!自慢の食で熊本地震からの復興を目指す

熊本のグルメタクシーは現在3コース

熊本のグルメタクシーは、食で観光復興を目指す「くまもとグルメツーリズム」の一環で、3つのコースが用意されています。

ドライバー池田さん

「どのコースにも、有名な観光地にはない魅力が凝縮されています。旅行中のツアーのひとつとして組み込むのがおすすめです」と現在、唯一のドライバー池田さん。

●コース1:熊本名物・馬肉の名店をはしごする「ローカル馬かもん号」

ローカル馬かもん号
写真提供/熊本県

熊本といえば、馬肉料理! 馬ホルモン煮込み、馬コロッケや馬レバーなど、馬肉料理づくしの旅。地元人でにぎわうローカルな人気店を巡るだけあって、県民に愛される味を堪能できます。馬ホルモン煮込みはちょっぴり甘辛味。白ご飯はもちろん、日本酒とも相性が抜群です。

●コース2:熊本食材でグランピング「水辺でアペロ号」

水辺でアペロ号
写真提供/熊本県

「アペロ」とは夕食前に軽くつまみながらお酒を楽しむフランスの習慣、「アペリティフ」のこと。熊本産のワインを中心に、熊本のブランド豚・香心ポークやチーズなど、直売所を巡って食材を買い集め、最後に熊本市内を流れる白川のほとりでおしゃれなバーベキューを楽しみます。グルメタクシーは熊本空港に迎えに来てくれるので、旅の始まりにぴったりですよね。

●コース3:熊本の恵みで作る「究極のたまごかけごはん号」

究極のたまごかけごはん号
写真提供/熊本県

地鶏の生みたて卵に加え、卵かけご飯専用のお米としょうゆ、ミネラル豊富な地下水など、熊本の厳選食材をひとつずつ調達することで卵かけご飯を目指す、まるで冒険のような半日旅。シンプルなグルメだからこそ、素材の味をダイレクトに味わえ、熊本が誇る食材をディープに楽しめます。

ゲーム性のある珍しい内容にひかれてこのコースを体験したところ、各ポイントでご飯をおいしく炊くコツや新鮮な卵の見分け方など、いろんなお話を聞けました。行くまでは食材を買って移動の繰り返しだと思っていましたが、地元の人と触れ合ってほっこりした気分に。

老舗の蔵元「浜田醤油」

卵かけご飯専用のしょうゆは、老舗の蔵元「浜田醤油」にて調達。こちらの店内には100種類以上もの商品がずらり。利きしょうゆも体験できます。

地鶏の生みたて卵拾い

メインは農園にて“地鶏の生みたて卵拾い”! 生みたての卵を拾うなんて、関東出身の私は初めての体験。

料金設定はタクシーのチャーター料30分2000円がベースとなっており、「究極のたまごかけごはん」コースは4時間16000円から。現地で調達する食材は別料金なのでちょっと割高に感じるかもしれませんが、4人で参加すれば1人4000円から。ドライバーさんからガイドブックでは知り得ない歴史秘話を聞けたりしますし、地元に根づいた食材やスポットに迷わずたどり着けると思うと、地元人からしても高くはないと思います。

※1日1組限定、完全予約制。詳細は

公式HP「くまもとぐるめツーリズム」

を確認してください

熊本は観光地を巡ろうとすると移動だけで時間がかかるので、1日目はグルメタクシー、2日目は自分たちで回る、というのもアリだと思います。復興支援にもつながる、食を真ん中に熊本を巡る旅。ぜひ、夏休みやこれからの観光に組み込んでみてはいかがでしょうか。

<撮影・取材・文/松野久美>