テレビや雑誌などで、シンプルな生活のアイデアを披露している、整えアドバイザー・阪口ゆうこさん。ご自身は厳選したもので最小限に暮らすライフスタイルを貫いていますが、じつは実家は、大量のものにあふれていたのだそう。
帰省するたびに頭を悩ませていた「実家の片づけ」問題が、先日無事に解決したのだそう。親を動かした魔法の言葉とは?実家の片づけがうまくいく秘訣を教わりました。
実家の片づけ、どうしよう!?
実家がカオスなんです…。両親がいなくなったら、あの汚家(おうち)どうしよう…。「実家の片づけ」問題は、今や社会現象ですよね。私も、この間まで不安でいっぱいでした。それというのも、わが家はものが多過ぎる家だったのです。
両親が他界したら、私がこの家を管理するのか。困ったな、どうしよう。両親に片づけてほしいなぁ。途方もない量だから無理かなぁ。
実家に帰れば、そんなことをいつも考えていました。こう思いながら過ごす実家での時間は、憂うつで、結構きつかったです。
親が実家を片づけたくなる魔法の言葉って?
すべての画像を見る(全3枚)「お母さん、片づけてよ!」「汚いなぁ!こんなのいらないでしょ!」「使ってないじゃん!」「捨てちゃいなよ!」…。
ついつい言いたくなるこの手のフレーズは、ご法度です。身内とはいえ、大きなお世話。私が、自分の子どもに言われたら、確実にキレてしまいそう。あなたにとってはガラクタでも、私にとっては大切なもの。そうなんです。暮らしの道具を否定するのは、その人の人生を否定することにもつながります。
ましてや、わが家の両親の場合は、戦後間もなく生まれて、ものが多いことこそがステータスだったという時代を生きた世代。ものに対しての価値観は、私たちの生きる現代とは真逆。ものを手放すという行為に抵抗がある方が多いです。
そんな年代に「いらないでしょ!捨てて!」は敬意がたりていないのでは…。そう思い、私は、こんな風に気持ちを伝えてみることにしました。
「お母さん、お父さんがいなくなったら、私がこの家を大変な思いをして片づけることになるんだよ。親のあと片づけをすることで、知りたくなかったことも知ると思うし、愛用したものをひとつひとつ手にすることで後悔したり、悲しみを引きずることもあると思う。片づけをすることで、さらに深い悲しみを背負ってしまって、立ち直るにもより多くの時間がかかってしまうんじゃないかな…」
親ですもの。残された自分の子どもが、自分のせいで深く傷つくなんて、そんなことはあってはならないと思うのではないでしょうか。
だって私自身もそう考えているから。私は、子どもたちには、今からなにも残さない宣言をしています。親が子に心配をかけてじゃまをしてはいけません。子どもたちには、自分の人生を一所懸命に生きてほしいのです。
そして実際に、このフレーズで、腰が重かった両親が、実家の片づけを真剣に考えてくれるようになりました。
実家の片づけを子どもはどうサポートすべき?
さて、親の気持ちがかたまったら、子どもたちはどんな風にサポートしてあげるべきでしょうか?
重い荷物を運ぶなど、がっつり手伝うことができれば理想的なのでしょうが、遠方に住んでいたり、かえって親が遠慮してしまったり、手伝いが難しいときもあります。
それならば、現代っ子の力を使って、出張買い取りサービスやゴミを捨てるための大型車のレンタカーサービスを調べる、高価で手放しにくいものをオークションサイトに出品するなど、いろんな選択肢を提案してみるのはどうでしょう?
できることを全部やろうと思ったら、子どももパンクしてしまいます。親たちが苦手なことを手伝うことで、最小限の負担でスムーズにすすむのではないでしょうか?
片づけ経験者の実家の母に聞いてみた!
親たちは、「実家の片づけ」をどのように考えているのでしょうか? 実際に片づけを完遂した母に、なぜ、どのようにして片づけることができたのかを尋ねてみました。
●片づけを真剣に考えたのは私の言葉と自身の老い
前述のとおり、母が片づけなきゃと思ったのは、子どもの迷惑になるかもしれないと実感したから。でも、それだけではなく、タイミングも大きな要素だったようです。
わが家の場合は、両親が老いを実感してきたタイミングと重なったので受け入れやすかったのだそう。倒れたり、歩けなくなったりしてしまったら、片づけどころではありません。ひざの痛みや老眼、体力の低下を親が感じてきたら、片づけに真剣になってくれるのではないでしょうか。
●片づけ始めるのに手をつけやすかったものは
片づけの取っかかりとして、手をつけやすかったのは「食器」だったとのこと。
家族が多かったときから減らしていないものや、いただきもので趣味が合わないけどずっと取っていたものなど、食器は「要る・要らない」の判断がつきやすいようです。そのほか、若い頃にハマっていた趣味の道具など、状況が変わって手放しやすかったとのだとか。
さて、ここからは余談ですが、実家には、他界した祖母の遺品もおびただしい量が残されていました。なかにはまだ使えるものもあり、母は、ご近所に欲しい方がいないか聞いて回ったのですが、そこで訪ね歩いた場所ほぼすべてで、祖母のエピソードを聞けたのだそう。
典型的な昭和の嫁姑として、最初は関係がうまくいっていなかったふたりですが、祖母が歳をとって、体調を崩し始めた頃から、祖母は母への感謝の気持ちを周囲に語るようになっていたのだといいます。残された祖母への日記にも、母への感謝が綴られていました。母は、思いがあふれて、まともに読めなかったんだとか。「最初の方は悪口ばっかりやろうし!」と言いながらも、母の表情はうれしそうでした。
ものによって、人はつらい思いもする。でも、ものによって長年の苦しみから救われることもある。片づけまでが人生だと、私は思うのです。
【阪口ゆうこさん】
整えアドバイザー。夫、小学生の長男、長女の4人暮らし。自宅セミナーで収納や時短家事など暮らしをスムーズに回す工夫をレクチャーする。著書『
家族がいちばん。だからきちんと選べる。きちんと使える。ゆるミニマルのススメ』(日本文芸社刊)が発売中。
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