インテリア上手な人がよく口にする「抜け感」という言葉。パリで暮らした経験をもとに、ものが多くてもおしゃれに見える“フランス式収納”を紹介している正林恵理子さんも、「部屋にものが多いと、スペースをフル活用するのが上手な収納と考えがちですが、じつは適度な“抜け感”も必要なんです」と語ります。わかるようでわからない「抜け感」…その極意を詳しく教わりました。
フランス式収納のルール「収納に抜け感をつくる」
「フランス人は、棚の上にあえてものを置かずにいて、来客時におもてなし道具を並べたり、置き場に迷う小物の一時置き用にするなど、フリースペースとして活用していました。見た目だけでなく、そんな合理的な考えも併せもつテクニックこそ、フランス式収納術なんです」。確かに、棚の中も上下も隙間なくつめてしまうと、1枚の壁のようで圧迫感が出てしまいます。逆に“余白”をつくってあげると、目線が奥までスッと抜け、心地よく感じるそう。
●意識的に余白をつくることで、ものの多さをカモフラージュ
同じ量のものでも、収納の仕方次第で、見え方はぐっと変わります。見て楽しく、使いやすい収納を目指すなら、余白が必須。「収納スペースをいくつかのエリアに分け、上にいくほど余白をもたせるようにすると、バランスよく見えます」。Before&Afterで違いを見てみましょう。
【Before】
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収納スペースいっぱいにものを収めた状態。とくに上部が隙間なく埋まっているので、全体的に重い印象。存在感が増し、部屋を狭く見せてしまいます。
【After】
容量の多い収納アイテムを下部にまとめ、上部に余白をつくると、密度のメリハリでものの多さが気になりません。大きいものや濃い色のものを下にもってくると、安定感が出ます。
●<余白づくりの実例1>洗濯コーナー
洗濯コーナーのオープン棚に重ねたクロスは、1段の半分程度の高さにとどめておきます。いちばん上の右端には、あえてなにも置かないスペースをつくると視覚的にも効果的。一時的なものの置き場としても活躍します。
●<余白づくりの実例2>キッチンの壁面
ワイヤ製のキッチンパネルは、いちばん上に並べたビンとつるしたツールの境界を、あえてゆったりとさせて設置。余白をつくっています。これで、すっきり感と取りやすさを両立することができました。
【コラム 重心が下にくるように置いて、視覚的な安定感を】
棚などのなかのものは、下にどっしりと重心をかまえ、上を軽やかに見せる配置にすると、視覚的にも安定感がでます。「一歩引いて全体を見ながら、バランスよく置いていくのがポイントです」。
正林さんのお宅のキッチン家電をまとめた棚も、重量感のあるものを下に、軽いものを上に収納。意識してゆとりをもって置いているので奥まで目線が届き、向こうに抜ける感じが増すことに成功しています。