アメリカ・シアトルに住んで十数年。エディター&ライターとして活躍するNorikoさんが、現地で話題のフードやライフスタイルにまつわる情報をレポート。今回は、アメリカの幼稚園&小学校事情について伝えてくれました。
すべての画像を見る(全3枚)(写真:日本語教育を採り入れているシアトルのジョン・スタンフォード・インターナショナル小学校)
アメリカでは公立でも幼・小一貫校が基本
日本では3月が卒業、4月が入学のシーズンですが、アメリカは6月に卒業、そして夏休みを挟み、9月に入学と異なります。現在はプリスクールやデイケアと呼ばれる幼稚園や保育園に通うシアトルの子どもたちも、日本でいう幼稚園年長を迎えるタイミングで、小学校内の幼稚園、キンダーガーテンに9月から通うことになります。そのまま同じ小学校に上がるので、幼・小一貫校のような教育システムですね。ただ、義務教育ではないですし、入るのを遅らせたり飛び級させたりする家庭もあります。
公立の場合、住所によって指定された学区内のスクールに入ります。しかし、教育の多様性がうたわれる昨今は、独自のカリキュラムを取り入れた幼稚園・小学校を選べるオプション・スクール制度の利用が高まっています。
シアトルではオプション・スクールが大人気
人気が高いため、抽選で入れるかどうかが決まるオプション・スクール。なかでも希望者が殺到しているのは以下の3タイプです。1つ目は、バイリンガル・イマージョン・プログラムを取り入れたスクールで、1日の授業半分を英語、半分を外国語で行います。英語とスペイン語、または英語と日本語(!)を選択でき、現地の日本人ファミリーにはうれしい限り。
2つ目は、STEMと呼ばれるサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学教育にフォーカスする理系寄りのスクールで、幼・小・中一貫教育という特色もウリです。STEMはオバマ大統領時代から政府が全米で推進していますが、マイクロソフト社、アマゾン社など世界的IT企業が集まるシアトルではとくに期待度が高く、幼少期からの理系人材育成が急務となっています。最近はこのSTEMも進化し、環境への配慮を取り入れたE-STEM、アートにも力を入れるSTEAM、さらにロボット工学を追加したSTREAMと、さまざまです。
(写真:E-STEMプログラムが好評の幼・小・中一貫校、シアトルのヘーゼル・ウルフ・スクール)
アメリカでは今、ELエデュケーションが熱い!
そして、3つ目がELエデュケーションを採用するスクール。全米で150校以上に広がるこのプログラムは、1991年にハーバード大学院と、屋外教育を推進するアウトワード・バウンド協会のコラボレーションで生まれました。
なにごとにも頭と体を使って挑戦し、成功や失敗から自ら発見、理解する体験型学習が基本。個人あるいは小グループでのプロジェクト学習を教師がサポートし、多様なアイデアの創出につなげていきます。アメリカでは現在、こうした個々に寄り添い、自律と自立を促す少人数教育がトレンドとなっています。
(写真:2017年開校のシアトル最新オプション・スクール、シダー・パーク小学校ではELエデュケーションを採用)
このほか、日本でも人気のモンテッソーリ教育を実施していたり、アート活動に熱心だったり、アメリカの公立校は多彩。格差社会を反映してか、学区や住む地域によっても雰囲気がガラッと変わることもあり、親としては幼稚園の選択はかなり悩みどころです。
【Noriko】
アメリカ・シアトル在住。現地の日系タウン誌編集長職を経てフリーランス・エディター/ライターとなり、日米のメディアに旅行情報からライフスタイル、子育て事情まで多数の記事を寄稿する。著書に『
アメリカ西海岸ママ~日本とは少し違うかもしれない、はじめての妊娠&出産~』(海外書き人クラブ刊)