マンガ家でありながら、整理収納アドバイザーの世界に足を踏み入れ、さまざまなお宅をウォッチングし続ける葛西りいちさん。その優れた観察眼と分析的思考は、ときとしてインテリア&整理収納界の常識を疑い、目からウロコの解決法を導き出します。今回は、収納アイテムを準備する際に起こりがちな悩みについて、最近葛西さんが気になったケースを教えていただきました。

わざわざ持っているものを捨てて、収納アイテムをそろえる人への嫉妬

 こんにちは、葛西りいちです。最近、知人が立ち上げた家事・整理専門の家政婦派遣会社(メンバー3人)でパートしつつ、漫画やエッセーをちまちまと書いております。そろそろきちんと1級の二次試験を受けねばと思っていますが寒くて腰が重い状況です。【整理・収納アドバイザーは見た!】おつき合いください。

わざわざ持っているものを捨てて、収納アイテムをそろえる人への嫉妬
わざわざ持っているものを捨てて、収納アイテムをそろえる人への嫉妬

 パントリーや階段下の収納をあけた瞬間、同じカゴなどがそろっていると気持ちがいいものです。そのうえ色は白。ご丁寧にシールで「蚊取り・虫よけ」「掃除用品<消耗>」と記し、まさに今よく見るタイプの「整理・収納術」です。しかしこの手の整理術、なんかモヤモヤしませんか?私も!って方、きっといらっしゃると思うのですが…。

 ではなぜモヤモヤするのか。それは「もったいない」と思う日本人特有の精神と「今あるカゴを捨てて新しいカゴをそろえる潔さ」に嫉妬するからです。

 まず前者ですが、たいていの人は他人が見ない階段下収納のカゴなんか、何色だっていいと思うわけです。10年前、独身時代に買った蛍光色のカゴが2つあったら(昔の100均はきつい色が多かったのです)、「もったいないから2個はこれ使って、残り8個は100均で買おう」となるわけです。これが普通の思考です。わざわざあるものを捨ててまでそろえるのは非常に「もったいない」わけで。だから「わざわざ」買いなおす人を見るとモヤっとします。

 そして後者は、大多数が「もったいないと思ってあきらめるライン」を簡単に超えちゃう一部の人への嫉妬です。じつは同じ色ばかりだと使いにくい(とくに家族が)とか、1000円(100均でカゴ10個)も使って、他人が見ることのない階段下収納の見た目を追求するのはバカなんじゃ?とか、普通の人が考えることを「超越」しています。この手の人は、「だれになんと思われようと白を10個買い、手持ちの蛍光色2個は捨てる」のです。それを見て大多数の人は「100均とはいえ、そろえるのにいくらかかるのよ?」と怪訝な顔をするわけですが、その裏には「それができる人への嫉妬」も含まれています。大げさに聞こえるかもしれませんが、一度でも「そろいのカゴ」を買おうかどうしようか100均ショップでグルグル1時間近く悩んで「やっぱやめた!」という経験のある方ならわかるはず。

わざわざ買い直してそろえるのはエコじゃない!?

 ほらこの記事を読んだら途端に「そういや私もパントリーのカゴ、1個だけ色が違うんだよな…」と気になってきませんか?私はわざわざ買い直してまでそろえる人を「エコじゃない!」などと批判するつもりはありません。本来の整理・収納術とはベクトルが違いますが、そろえたことでご本人が安寧なら、いいんじゃないかなと思います。

<補足>

 ちなみに、アドバイザーになったらこのあたりの考え方はとても注意が必要です。自分はそろえる派であっても、お客様は一銭でも安いほうがいい、なるべく家の中にあるものを使ってほしいと思っているかもしれません。少なくとも私が出会ったお客様は「あるものを使ってほしい派」のほうが多かったです。

【葛西りいち(かさいりいち)】

漫画家。結婚とともに整理収納に目覚める。2015年に整理収納アドバイザー2級を取得。1級所持の先輩にくっついていってアシスタント的なことをやったり、家事代行の仕事をちらほらやりつつ現在1級取得を目指し勉強中。近著に『

零戦少年

』(秋田書店)、『

へっぽこママはギブ寸前!!

』(ぶんか社)。