ミニマリストに持たない暮らし、シンプルライフ…。今、生活回りをできるだけシンプルに、すっきりと整える暮らしがブームになっています。そんなライフスタイルの姿勢は、もちろん食回りにも。限られた食材だけでおいしいものをつくる。おもてなしのときにしか使わない来客専用の食器は持たない。キッチンツールは最小限に。ものの数を絞ることをきっかけに、本当に大切なものに気づき、暮らしが丁寧になる。そう感じる人が増えているのです。

 料理研究家の門倉多仁亜さんも、そんな暮らし方を大切にしているひとり。ドイツ人の母を持ち、ドイツでも暮らした経験から、ドイツ特有の合理的でシンプルな食回りの習慣を実践しています。ムダなことはやめ、ものや食べ物を徹底的に使い切る。門倉さん流、ドイツ式の心地よく暮らすための食にまつわる工夫を教えてもらいました。

心地よく暮らすための、ドイツ式!食回りの習慣

-ゲミュートリッヒ(心地よい空間)という言葉があるように、
ドイツでは家でゆったりと過ごす時間と空間を大切にします-

●週2回ほどは、ドイツ式“冷たい食事”を

週2回ほどは、ドイツ式“冷たい食事”を
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 ジャガイモが主食のドイツでは、ゆでたジャガイモと肉料理などの食事を“温かい食事”、パンとサラダなどの食事を“冷たい食事”と呼ぶそう。「週2回は夕食を“冷たい食事”で軽めにすませると、翌日胃がもたれず体調がいいんです」。おじゃました日、サラダはレタスとゆでたグリーンアスパラ、焼いたネギ、シイタケ、カボチャにビーンズとゆで卵を添えて。「焼き魚や鶏肉、ベーコンなどをのせてアレンジしても」。さっと準備ができ、あと片づけもラクチンです

●「自分の家でお買い物」をして食品ストックを使いきる

「自分の家でお買い物」をして食品ストックを使いきる

 時間に余裕のある日には冷蔵庫の中を見渡し、「自分の家でお買い物」。いただきものの珍しい食材など、使い慣れなくて残ってしまったもので、どのように調理するかを考えます。「初めてつくる和食などは本を参考にしたり、ネットで検索することも。レシピの幅も広がります」

●残り野菜の整理は「アイントップ(ひとつの鍋)」で

残り野菜の整理は「アイントップ(ひとつの鍋)」で

 冷蔵庫に残り野菜がたまったら、大きな鍋ひとつでつくるスープ料理「アイントップ」で使いきるのが、ドイツ流。こちらの料理は、ベーコンと根菜を炒め、コンソメスープで煮込むだけ。「ジャガイモはスープが煮立ってから、青野菜は最後に加え、あればソーセージも入れます」。具はそのときあるものを入れて楽しみます

●つくり慣れない料理は、自作のレシピノートにメモ

つくり慣れない料理は、自作のレシピノートにメモ

「洋食のレシピは頭に入っていますが、和食は慣れなくて…。レシピノートをつくってメモしています」。必要な材料と調味料の“比率”をメモしておけば、人数が変わっても応用がききやすいのだそう。料理本を広げて探す必要がないので散らかりません

●テーブルクロスは無地を基本に、小さなナプキンなどで柄を楽しむ

 テーブルクロスは無地のものを何色かそろえて。「ほとんど10年以上使っているものばかり。セールで買うことが多いですね。無地ならナプキンなどの小物で柄を取り入れてイメージを変えられるので、飽きずに長く使えます。白、紺、茶は合わせやすくて重宝しますね」

●先を見越して、翌日の朝食の材料を準備

先を見越して、翌日の朝食の材料を準備

 忙しいときは先を見越し、食事の支度がすぐにできるように下準備。朝食も前日にネギ、ソーセージなどを刻んで卵と一緒にボウルにまとめておけば、忙しい朝でもすぐに調理ができて面倒になりません。「夕食前に出かけるときも、同様に準備しておきます」

●“台所”は“台”があって成り立つもの。ものを置かずにすっきりをキープ

“台所”は“台”があって成り立つもの。ものを置かずにすっきりをキープ

“キッチン”より“台所”と呼ぶことが多いという門倉さん。「“台所”の要は“台”ですから、ワークトップにはものを置かず、作業しやすいようにしています。ワークトップを広く使えれば、料理中は必要なものを一度に出せて効率がいいし、掃除もラクです」

●“スーパーはわが家の食糧庫”調味料類は棚に納まるだけ

“スーパーはわが家の食糧庫”調味料類は棚に納まるだけ

 料理教室で使う調味料やオイル類も、すべてガス台上に納めています。「すぐ近くにスーパーがあるので、ストックはもたずになくなったら購入するようにしています」。スーパーを“わが家の食糧庫”と考えることで、ものの管理がラクになり、すっきりした状態を保つことができます

●保存容器はフタとセットにし、カゴにまとめて

保存容器はフタとセットにし、カゴにまとめて

 保存容器は、カゴにざっくりと収納。数も種類も多くないので探すのも手間いらず。「鹿児島で開催される市で買った茶摘みカゴに入れ、冷蔵庫の上にのせています。背伸びしないと手が届きませんが、ときどき背伸びするのは体にいいと聞いたので、気に入っています(笑)」

【料理研究家 門倉多仁亜さん】

ドイツ人の母、日本人の父をもち、ドイツ、日本、アメリカで育つ。結婚後、夫とともにロンドンへ行き、ル・コルドン・ブルーにて料理を学ぶ。帰国後は料理教室やドイツのライフスタイルに関するセミナーなどを行う毎日。著書に『

タニアのドイツ式キッチン―合理的であたたかな、料理と台所のつくり方

』(講談社刊)ほか多数