家族、友人、仕事関係…。私たちの悩みは周囲の人間関係によるものが多く、とくに女性は、人づき合いでストレスをためやすい傾向にあります。 脳科学者の柿木隆介先生によれば、怒りや悲しみ、嫉妬といった感情も、すべて脳の働きによるもの。脳の仕組みを知って、感情の揺れや悩みをコントロールする方法を教えてもらいました!
すべての画像を見る(全2枚)人間は嫉妬から逃れられない
― 人づき合いの悩みで、幸せそうな人や成功している人に嫉妬してしまうという意見をよく耳にします。
柿木隆介(以下、柿木)
人を妬む感情は、自分と似たような境遇にいるのに、自分よりも能力や財力、あるいは異性からの人気などが高い人に対して起きるものだと定義されています。たとえば、女性にとってママ友などは、まさにそのような自分と似た境遇の存在ですね。
脳科学の見地から言うと、嫉妬しているときには、脳の中の大脳辺縁系の活動が高くなることがわかってきました。大脳辺縁系というのは、動物的な本能である「怒り」を司る中枢で、「不安」を感じたときにもここが活発になります。
つまり、怒りや不安などと同じように、妬みも辺縁系で起きる原始的でネガティブな感情なのです。
人の不幸は、やっぱり「気持ちいい」?
― 嫉妬の感情をもつことは、人間の本能として仕方のないことなのでしょうか?
柿木
だれかの成功に嫉妬するという感情は、だれかの失敗を喜ぶという感情と表裏一体になっていますよね。「人の不幸は蜜の味」という言葉もありますが、だれかが失敗したときには、実際に脳の「報酬系」「快楽中枢」と呼ばれる場所が活発になることが確認されています。
これは個人の意思とは関係なく、人の不幸を見ると私たちは「快感」を覚えてしまうということですね。 脳の仕組みを考えると、幸せそうな姿を見て、ドロドロした感情すなわち嫉妬を覚えてしまうことも、だれかの不幸や失敗を見て喜んでしまうのも、避けられないことなんです。
― とはいえ、ドロドロの感情に振り回されると、それだけで消耗してしまうし、自己嫌悪を感じますよね。なにか対処方法はありますか?
柿木
私たちの脳は理由や理屈がわかると、納得したり、安心したりできるという特徴をもっています。妬みの感情がどうして起きているのか、そしてそれはある程度避けられないことである、そんな原則を知ることが、ひとつの対策になります。
他人と比較して、自分が勝っているという優越感を味わう。負けているという屈辱感を受ける。ライバルや活躍している人が不幸にあって、いい気味だと思う。これらは、人として当たり前に起きる感情です。そして同時に、怒りや悲しみなどと同じで非常に原始的な感情でもあります。
嫉妬から逃れることはできませんが、自分の心を知ることはいやな部分を見つめ直すいい機会でもあります。あまり思いつめすぎず、自分の中の「黒い気持ち」とも気楽につき合っていきましょう。
『
もう、人づき合いで悩まない技術 女性のための脳のトリセツ』(扶桑社刊)では、今回取り上げた悩みを始め、身近な「あるある」なお悩みを最新脳科学の観点から取り上げています。脳の仕組みを知ることで、ラクに生きる術を学びましょう。
【柿木隆介さん】
自然科学研究機構生理学研究所・教授。福岡市出身。九州大学医学部卒業後、神経内科医、ロンドン大学医学部神経研究所などを経て、39歳より現職。文部科学省、厚生労働省、環境省の大型研究プロジェクトのリーダーを務め、国際学会での招待講演も行う。テレビ、雑誌などの各種メディアで脳科学の啓蒙に力を注ぐ。