住宅やクルマなど、高額なものを買うときにローンを組む人は多いはず。「ローン=借金」と考えると、払えるのならはやめに払ってしまいたいもの。
でも家計管理の視点で見ると、繰り上げ返済をして早めに完済することは、必ずしも正解ではないようです。
今回は、住宅ローンを繰り上げて完済したものの、その分30万円しか貯蓄がなく、老後に不安を抱えているというESSE読者のお悩みを取り上げます。ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに答えてもらいました。
住宅ローンを繰り上げて完済したものの、貯蓄が少なくて不安を感じています
【相談者】
多田奈緒美さん(仮名)島根県・40歳(会社員)
夫48歳(会社員)、長男7歳
【お悩み】
ローン嫌いで、クルマの買い替えはキャッシュで、住宅ローンも繰り上げで完済しました。でも、手元に貯蓄が少なく、今後が不安。
教育資金は学資保険で200万円準備していますが、老後資金は退職金以外準備できていません。
【多田さんの家計収支】
<収入>
夫の月収(手取り) ¥150,000
妻の月収(手取り) ¥100,000
児童手当 ¥10,000
収入合計 ¥260,000
<支出>
住居費 ¥0
食費・外食費 ¥70,000
←check2電気料金 ¥6,000
水道料金 ¥4,000
通信費(携帯電話3台分) ¥12,000
(プロバイダー) ¥3,000
日用雑費 ¥10,000
レジャー・交際費 ¥10,000
教育費 ¥30,000
クルマ費(2台分) ¥20,000
こづかい(夫) ¥10,000
(妻) ¥10,000
生命保険料(夫) ¥20,000
(妻) ¥15,000
←check3(子ども) ¥5,000
←check3学資保険料 ¥10,000
貯蓄 ¥25,000
支出合計 ¥260,000
収支± ¥0
ボーナス収入 ¥500,000
現在の貯蓄 ¥300,000
食費を見直して出費を減!今後は貯蓄を最優先に
ローンに頼らず、なんでも現金で買う姿勢は感心ですが、繰り上げ返済を少しがんばりすぎてしまいましたね。
住宅ローンを完済したとはいえ、夫の定年まであと12年しかないのに、貯蓄が30万円しか残っていないのは大問題。夫が40歳になったときに、貯蓄目標を教育資金と老後資金に切り替え、繰り上げ返済は打ち止めにするか、行うとしても余剰資金の範囲にとどめておくべきでした。
しかも、住居費負担がなくなったのに食費が7万円もあり、貯蓄が増やせていません。今後は食費を5万円に減らし、教育資金と老後資金を最優先にしましょう。
クルマの買い替えも通勤がなくなったら1台にすることを前提に、リタイアまでの年数を考えて中古を選ぶなど費用を抑える工夫を。
退職金や生命保険の解約返戻金の額も確認して。貯められるお金を予測し、教育資金がいくら必要で老後資金にいくら回せるか、プランを立てておくと安心です。
●【check1】40代以降の繰り上げ返済は、余剰資金で少額ずつ行うべき
住宅ローンを完済したものの、貯蓄はわずか30万円の多田家。30代までは子どもが小さく貯めやすい環境なので、まとまった額の繰り上げ返済をしてもリカバリーできますが、40代になると生活費や教育費が膨らみ、しかも退職が近づいてリカバリーできなくなりがちです。
40代以降の繰り上げ返済は、教育資金や老後資金を最優先で準備しつつ、余剰ができたら10万円単位で行うのが正解!
●【check2】食費が手取り月収の28%にも!20%以内に減らして貯蓄アップを
食費7万円は、夫婦の手取り月収25万円の28%を占めています。適正な食費は16%以内で、4万円が目安。多くても5万円以内に抑えましょう。
カットした2万円と今の貯蓄を合わせると、毎月4万5000円を貯められます。自動積み立て定期を使って、口座から強制的に貯めると確実です。
●【check3】今後必要なお金に備え、退職金や保険の満期金の額を確認
多田家の場合、夫婦とも正社員で退職金が出るとのこと、勤務先で退職金の額を確認しておきましょう。また貯蓄性のある生命保険も、満期金や解約返戻金の額の確認を。
夫の定年時、子どもは大学生。妻はまだ現役で働いているとはいえ、仕送りが必要になる可能性も。とりあえず、私立大学文系でかかる4年分の学費500万円を目安に、学資保険だけでは不足する300万円を目標に貯めましょう。