超高齢社会が急速に進行している現代の日本。2017年9月には、全国で100歳以上の高齢者が6万7000人を超えたと発表がありました。そこで切り離せないのが、介護の問題です。
「わが家にとってはまだ先」と思っていても、ある日突然始まるのが介護。ESSE読者に取材したところ、30代前半で介護をしているという人もいました。ここではそのなかのひとり、兵庫県在住の尾形早紀さん(仮名・33歳)のケースをご紹介します。近所に住む義母が、60代の若さでパーキンソン症候群を発症してしまった尾形さん。メインの介護者は義父ですが、尾形さんも3人の子どもを抱えながら、サポートを行っています。

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60代でパーキンソン症候群になってしまった義母。穏やかだった性格も豹変し…

9年前に結婚して以来、義母と私はとても仲よしでした。最初は同居をしていたのですが、いやなこともなく、お互いにやりたいことをやりたいようにやっていました。近所に家を建てて別居したのが5年前。義母は、孫の面倒を見にしょっちゅう来てくれて、本当にありがたかった。子どもたちもばあばが大好きで慕っていました。

そんな義母の表情がなんだかおかしいな、と感じたのは3年前のこと。体の動作もゆっくりで、次第に表情が乏しくなっていきました。本人も義父も異変には気づいていなかったけれど、いろいろ調べてパーキンソン症候群ではないかと私は疑っていました。

なんとか説得して病院へ行くと、病名は思ったとおりでした。まだ60代の若さで、あんなにはつらつとした義母がなぜと悔しかった。ゆっくり進む病気と聞いていましたが、その後3か月ほどの間に、症状が一気に悪化。階段からしょっちゅう転げ落ちるようになってしまいました。さらにこれはこの病気の症状のひとつでもあるのですが、衝動が抑えられないようで、ヒステリックになってしまいました。朝いちばんに義父から呼び出され、義母をなだめるために駆けつけることもよくあります。

穏やかで優しかったばあばの豹変に、とくに驚いたのは子どもたちです。目の前でばったり倒れたりのたうち回ったりするばあばに、すっかり脅えてしまって。義母も孫には好かれたいらしく、がんばってみるものの、自分ではコントロールがきかないのです。その様子を目にするのも切なくて…。

あっという間に義母の要介護度は2から5へと上がりました。義父はがんばって面倒を見ようとしていましたが、さすがにもう手に負える状態ではありません。デイケアに週4回、デイサービスに週1回、ヘルパーさんにも入ってもらうことで、義父の負担を減らしましたが、義父は本当は自分でやりたいのです。毎日仕事で忙しいのに、休みの日には「元気なうちは義母とふたりで出かけたい」と、毎週のように義母と外出したりと、本当に仲のよかった夫婦。それだけに、義父も心の整理がつかないようで、ストレスをためているのが見ていても伝わってきて、つらいです。

私自身も介護に深く入り込みすぎてしまったようで、ついイライラしてつい子どもにあたってしまい、夫からは「そんなに大変なら、やらんかったらいい」と言われる始末。夫は冷静で、「入り込みすぎるな」「なるようにしかならない」が口癖。私もこの経験から学び、今では、考え方をきり替えて、距離をおくようにしています。

義父は在宅介護にこだわり、施設への入所申請すらしていません。あれだけがんばっているのですから、私たちはそんな義父をサポートしながら見守っていきたいと思います。
(尾形さん談)

介護をするうえで大事なのは、家族で抱え込みすぎないこと

いざ介護となったときに、多くの人は混乱してしまうもの。どのような心構えをしておけばいいのか、介護・暮らしジャーナリスト太田差惠子さんに聞きました。
「まずは生活に手助けが必要なレベルになったら、すみやかに介護保険を申請するのが原則」と太田さん。

「『もう少したってから』と先送りしているうちに、親の状態が悪くなることも考えられるので、迅速に行動に移しましょう。親が入院して、退院後に介護保険の利用を希望する場合は、入院中に申請をおこなうことをすすめます」

介護はつい「家族がやらなくては」と思って抱え込んでしまいがちですが、太田さんはこれに警鐘を鳴らします。

「長期戦になればなるほど、介護する方も疲弊してしまいます。介護保険の介護サービスや自治体独自のサービス、ボランティア、民間のサービスなど、利用できる選択肢はたくさんあるので、日ごろから情報収集しておくと安心です。親の介護は大切なことですが、それ以上に大切なのが、自分自身がしっかり生きていくこと。人生設計を考え、優先順位をつけながら、上手に介護サービスを組み合わせて活用していきましょう」

ESSE2月号の特集「親の介護の現実」

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