親から相続した築20年の家をリノベーション。大きな吹き抜けと土間が特徴的な、3人家族が暮らしやすい住まいを紹介します。写真上は、ダイニング側から見通したDKとウチ土間、ソト土間の様子。上下階は吹き抜けでつながり、さまざまな用途の空間がひとつの関係性でつながっているのがよくわかります。建物はもともと、妻の母が営んだ美容院併用住宅。新しさと懐かしさをあわせ持つ家になりました。

ダイニング側から見通したDKとウチ土間、ソト土間
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目次:

2階個室の床を抜いた大きな吹き抜けと土間で空間のイメージを一新まるで別もの! 想像を超えるダイナミックな空間リノベーションコンクリートの土間リビングは使い方を限定しない自由な空間外断熱のおかげで既存の構造を表しにできました間取図(リノベ前後)

2階個室の床を抜いた大きな吹き抜けと土間で空間のイメージを一新

Sさんの家 群馬県 家族構成/夫40代 妻40代 長女8歳
設計/小磯一雄(KAZ建築研究室)

この家のこだわりポイント

  1. 店舗のイメージを再構築して、オープンな住空間にしたい。
  2. 暗さや寒さの解消
  3. 自由に使えるスペースが欲しい
  4. 家族の思い出も残したい
大きな吹き抜け

2階の床を大胆に取り払ったことで実現した大きな吹き抜け。個室の壁も寝室以外をスケルトンに。どこにいても家族の気配が伝わる空間に再構築されました。

ウチ土間

ウチ土間は以前美容室があった場所。セカンドリビングのような趣ですが、アイデア次第でさまざまな使い方ができます。ここではDIYをしたり、ソト土間とつなげてバーベキューパーティをしたりすることもあるとか。

ソト土間

外部とは目透かし張りの板で仕切られたソト土間を増築。夫の喫煙所としては十分な広さ。ガラス戸を開ければウチ土間と一体化した広いスペースに変身。

まるで別もの! 想像を超えるダイナミックな空間リノベーション

妻の両親が建てた築20年の家。父母が亡くなり、飼い犬とともにこの家を引きついだのがSさん夫妻でした。

母が営んでいた美容院を併設した住宅は「店舗奥の家の中は薄暗く、寒く、使い勝手も悪かったですね」と妻。初めは店舗のみに手を入れた部分リフォームを考えていましたが、夫が雑誌などで情報を集めるうちに大胆なリノベーションを志向するようになったといいます。

リノベーション設計を依頼したのは、KAZ建築研究室を主宰する小磯一雄さん。その大胆な作風にひと目惚れした夫妻は、生活機能の向上や喫煙所の確保、思い出の保存などの希望伝え、計画を小磯さんに託したそうです。その結果に「想像以上の変化にびっくりしました。同じ家とは思えない」と夫妻。

小磯さんが提案したのはソト土間を増築し、店舗部分をウチ土間に変更。1階のDK上に吹き抜けを設けるプラン。幸いにも躯体の構造がしっかりしていたため適宜補強を行うだけで、床や壁を抜いても問題はなかったそうです。

吹き抜けに設けたトップライトとベランダに面した窓から明るい光が降り注ぐDK。オリジナルの造作キッチンは妻のお気に入りです。キッチンの向かいには長女の学習コーナー。ウチ土間はどんな使い方もできる自由なスペースです。

大胆な変更を加える一方、昔ながらの和室は家族の思い出を受け継ぐ場所として既存のまま残しました。「家のリノベーションを機に、家についてさまざまなことを考えるようになりました。それが終わってしまったのが本当に残念で。機会があれば今度は家を建てたい」と語る夫。どうやら建築の持つ魅力に開眼してしまったようです。

コンクリートの土間リビングは使い方を限定しない自由な空間

玄関も兼ねるウチ土間

玄関も兼ねるウチ土間。ここは構造上必要な壁や仕切りを残しながらDKとつながっています。構造材の針葉樹合板にはテレビを掛けることもできて、なにかと便利。ざっくりとした仕上げがじつに大胆なインテリアです。左手奥に見えるのは、既存のまま残した思い出深い和室。

ダイニングとの仕切り壁

ダイニングとの仕切り壁は素地板の透かし張り。内側には筋交いも入れられています。写真や子どもの絵などをディスプレイするにもピッタリ。「こんなざっくりとした仕上げにグッときます」(夫)。

ウチ土間からの眺めと外観

ウチ土間からの眺めと外観。内側からは外の気配が感じられ、光や風を取り込めます。一方外側から中の様子はわかりにくく、プライバシーもしっかり守られています。

外断熱のおかげで既存の構造を表しにできました

吹き抜けにはトップライトも設置

ビックリするほどダイナミックな吹き抜けにはトップライトも設置。天井を表しにすると屋根の断熱性が落ちるので、外断熱を採用しています。室内窓の向こうは寝室。つながったり閉じたりも自由自在。

吹き抜けから見たダイニングキッチン

吹き抜けからの俯瞰。Tの字に配置されたオープンキッチンとテーブルはオリジナル。テーブルの高さを決めたあと、フラットになるようにキッチンの高さを割り出しました。作業スペースは一段下げ、キッチンに立つ人とテーブルに座る人の視線がずれすぎないよう調整。

学習コーナー

キッチン向かいの学習コーナー。もとの玄関のくぼみを利用しています。

木造軸組み

木造軸組みで建てられた家の構造がよくわかる吹き抜け部分。梁などは必要に応じて新しい木材を足して補強しました。

なだらかな傾斜角度に変更した階段

狭くて急だった階段もなだらかな傾斜角度に変更。上下の移動もラクになりました。階段下の収納スペースは、店舗のトイレだった場所。

2階の寝室にはロフトも

2階の寝室にはロフトも設けられ、収納スペースもたっぷり。

ワークデスク

吹き抜けに面したワークデスク。現在は長女のピアノの練習場所に。デスクの隅には2階トイレの手洗いも設けられています。

間取図(リノベ前後)

リノベーション前

リノベーション前の間取図

リノベーション後

リノベーション後の間取図
リノベーション前のキッチンと外観

※写真はリノベ前

DATA

敷地面積/185.01㎡(56.06坪)
延床面積/114.66㎡(34.75坪)
1階/76.58㎡(23.21坪)
2階/38.08㎡(11.54坪)
用途地域/第1種住居専用地域
建ぺい率/70%
容積率/200%
構造/木造軸組工法
リノベーション竣工/2018年6月

素材

[外部仕上げ]
屋根/ガルバリウム
外壁/ジョリパッド吹き付け
目隠し板/ウエスタンレッドシダー
[内部仕上げ]
1 階・2階
床/ラワン合板+塗装、一部コンクリート
壁/針葉樹合板
天井/既存構造材表し

設備

厨房機器:オリジナル
衛生機器:TOTO
窓・サッシ:既存+オリジナル

施工/藤建設工業
設計/小磯一雄(KAZ建築研究室)

撮影/桑田瑞穂