若い世帯や子育て世帯の家づくり。子ども部屋のある間取りを当たり前のように思う人は多いのでは。この常識、じつは正しくないケースもあります。理想的な家づくりの考え方について、専門家に聞きました。教えてくれたのは、『家は南向きじゃなくていい』(講談社刊)の著者で、2000軒以上の家を設計してきた一級建築士の内山里江さんです。子ども部屋は本当に必要か、改めて考えてみましょう。

子ども部屋
なんとなく子ども部屋はあったほうが思いがちだけど…?
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子どもの部屋は独立していたほうがいい?

多くの人は、自分が育ってきた環境を思い浮かべながら、「家づくり」をするではないでしょうか。たとえば、子ども部屋。「自分はきょうだいと同じ部屋で過ごしたけれど、本当はひとり部屋が欲しかったから、子ども部屋は2つ必要だ」などという思いを反映させるかもしれません。

「子どもが2人いたら、それぞれの部屋をつくることを前提にしている人は少なくありません。それは、決して間違いではありませんし、男女の違いで分けた方がいいケースもあるでしょう。ただ、子どもはいつか育ち、その家からいなくなります。広いスペースなら、いくらでも使いようがありますが、コンパクトに区切られた空間の使い道は限られてしまうものです。そこを踏まえて家づくりを考えると失敗はありません」

そう教えてくれたのは、2000軒以上の家を設計してきた一級建築士の内山里江さん。部屋や間取りは、住む子どもたちの「関係性」にも影響すると言います。

「たとえば、2人の子どもそれぞれに部屋を2つ用意するとしましょう。すると、当然のように別の部屋を使う兄弟関係になります。しかし、成長していく中でそれぞれの部屋が欲しいと思い始めるのか、もしくは、ずっとそのまま同じ部屋で過ごしてもいいと思うのかは、子どもによって違うものです。

家の設計をする際に『ひとり部屋がないとかわいそう』と多くの人が言いますが、それは固定概念にとらわれているかもしれません。子どものためのスペースをどう使うかは、親が決めるのではなく、子どもたちが成長していくなかで、自分たちで決めるのもいいのではないでしょうか」

子どもだけの部屋がなくても、スペースのつくり方は自由自在

家

近年の住宅は、気密性と断熱性が高く、家のどこにいても快適に過ごすことができるといいます。

「たとえば、リビング、ダイニングなどの一角などをつかう人も多くいます。宿題や勉強ができる場所は、家のあちこちにつくれます。しかも、1〜2畳分あれば十分です」

内山さんは建築士になってすぐの頃の自邸について振り返ります。

「夫と『子どもは2人ぐらい欲しいね』と言って、子ども部屋になる予定の部屋を2つつくったのですが、結局、子宝には恵まれませんでした。その部屋は最終的に、ただの物置部屋になりました。このように、家族の人数は不確定要素です。3LDK、子ども部屋などの固定概念にとらわれないほうが、自由で便利な間取りをつくれるものです」