日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。夫に「つき合っていたころと同じようには愛せない」と言われて絶望した専業主婦の奈央さん(仮名・40代)のお話です。レスのきっかけは妊活に対する夫との価値観の違い。おめでたいはずの妊娠が判明して以降、気持ちのすれ違いが深刻化していった当時を振り返っていただきました。
すべての画像を見る(全4枚)産むか、離婚するかの2択を迫られ…
慣れ親しんだ東京を離れ、東海地方の某市に嫁いだ奈央さん。30代で結婚した当時、まだ出産は数年先と思っていたのに、1年目ですぐに妊娠しました。
夫や義理の両親が大喜びする一方で、こんなハズではなかったと肩を落とす奈央さん。正直に本音を夫に吐露したのですが、激怒されて喧嘩になったといいます。
「複雑でしたね。もともと子どもはまだ数年先がいいという私の意向だって彼は知っていたのに、『なんのために結婚したのかわからない』ってブチギレ。そして産むか、産まずに離婚するかの2択を迫られました」
奈央さんの気持ちを完全に無視する夫。夫婦仲は冷えきっています。幸せなはずの妊娠期間が、モヤモヤするものになってしまいました。
「とにかく『産まなきゃ離婚だ』というのが夫の言い分。向こうの両親も『子どもは一姫二太郎がいい、すぐできてよかった』って大喜び。私ひとりが、このまま子どもを産んで幸せになれるのか不安なまま過ごしていました」
母になる覚悟。緊急で帝王切開に…
母親になる覚悟ができないまま、妊娠中期を迎えた奈央さんでしたが、徐々に赤ちゃんの胎動が感じられるようになると、ようやく母になる決心ができたといいます。
「おなかをポコポコ蹴っている赤ちゃんの胎動を感じると、だんだん気持ちが変わっていきました。かわいいなって感じるようになって、この子のためにがんばろうと出産に向けて前向きになれました。夫に対しては、いろいろ思うところがあったけれど…」
奈央さんは東京で里帰り出産をすることにしました。新幹線を使えば約2時間。赤ちゃんが逆子のまま治らなかったこともあり、予定帝王切開でのお産になる見込みを医師から伝えられていました。
「開腹手術ですし、夫にとっても待ちに待った子どもということで、夫にはお産のときはそばにいて欲しいってお願いしていたんです。本人は『わかった、わかった』って二つ返事。でもある日の健診で子どもに危険があり、万が一を考えてそのまま入院することに。医師や看護師の応援を呼んで、手術の手配が整い次第、緊急で帝王切開しましょうということになりました」
奈央さんの病院は小さくて大学病院のような設備がなく、輸血の可能性も出てきたことから、準備には時間がかかりました。
「おなかにモニターをつけて赤ちゃんの心拍をみながら、ずっと不安な時間を過ごしていました。夫に『夕方に帝王切開することになったから、今すぐ来て』って連絡したんです。まだ午前中だったし、手術は夕方ごろなので2時間の距離なら間に合うと待っていたんですが、結局夫がのんびりとやって来たのは夜の20時過ぎ。手術も終わり、とっくに生まれてからの到着でした。あんなに子どもが欲しいと言っていたくせに、家族の一大事に必死に急ぐこともなく、危機感のない人だったんです」