大人の自閉症スペクトラムを疑ったら…人づき合いの対処法
ESSE編集部
2019.07.05

「発達障害」という言葉が広く知られるようになり、最近は大人の問題としても語られるようになりました。

発達障害の問題に詳しい医師の宮尾益知さんに、発達障害のひとつ「自閉症スペクトラム障害(ASD)」について、その特性と、起こりがちなトラブルと対処法について教えてもらいました。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴と起こしがちなトラブル

ASDは「社会的なやりとりの障害」「コミュニケーションの障害」「こだわり行動」という3つの特性があります。なかでも知的な遅れや言葉の遅れがない人は、“アスペルガー症候群”と呼ばれる場合もあります。

●【基本的な性格】円滑な人間関係を築くことに苦労するケースも

文房具を眺めている人のイラスト
ASDはマイペースな人が多いと言われています
ASDの人は、“マイペース”で“自分の決めたルール”にこだわります。ときには、そのルールを人に押しつけることも。そのため、周囲の人からは“融通が利かない人”と思われ、円滑な人間関係を築くことに苦労するケースが多いようです。

「たとえば、相手を無視して自分の興味のあることだけを一方的に話したり、相手の表情や言外の意図を読み取れずにその場にふさわしくない言動をしたりしてしまいます。女性の場合は、あいまいな表現が多い“ガールズトーク”ができずに友達との会話が楽しめず、浮いた存在になってしまうことも」

計画的に物事を進めることが得意な反面、突然の予定変更や新しいことに対応するのは苦手で、ときにパニックを起こすこともあるそう。大人になっても“できること”と“できないこと”がはっきり分かれているのもASDの特徴です。

【苦手なこと】
・相手の気持ちを考える
・言外の意図を理解する
・急な予定変更同時に2つ以上のことをする
・相手や状況に合わせた行動

【長所&得意なこと】
・好きなことに集中して取り組む
・計画的に物事を進める
・何事も完璧を目指す
・人見知りしない
・人に振り回されない

ここが違うADHDとASD。同じ「片づけられない」でも…

ADHDとASDはどこが違うのでしょうか? 「片づける」という行動ひとつでも違いがあります。
●ADHDの場合

目の前のものに次々と興味が移ってしまう人のイラスト目の前のものに次々と興味が移ってしまうADHD。片づけていたはずが別の行動を取ってしまい、部屋が余計に散らかることも。

●ASDの場合

ものが散らかっていても気にならない人のイラスト今使わないものは目に入らず、散らかっていても気になりません。一方で、片づけはきちんとやらねば気がすまず、時間がかかります。

●さらに、ASDの人は人より感覚が敏感すぎることも

聴覚過敏の人のイラスト聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚などの“感覚過敏”が伴うのもASDが抱える困難のひとつ。たとえば聴覚過敏の場合、ざわざわしたファミレスなど、人の声が多い場所では、話し相手の声を聞き取ることに苦労します。

下記のチェックリストで、当てはまる数が多いと、その特性の傾向があります。苦手なことと、対処法を学んで身につけるとよいでしょう。

【ASDチェックリスト(AQ短縮版)】
1:なにかをするときには、ひとりでする方が好きだ
2:自分では丁寧に話したつもりでも、話し方が失礼だと周囲の人から言われることがよくある
3:それをすることができないとひどく混乱してしまうほど、なにかに強い興味をもつことがある
4:小説を読んだり、テレビドラマを観たりしているときに、登場人物の意図をよく理解できないことがある
5:劇場に行くよりも、博物館に行く方が好きだ
6:冗談がわからないことがよくある
7:相手の顔を見ても、その人が考えていることや感じていることがわからない
8:特定の種類のものについて(車、鳥、植物についてなど)の情報を集めることが好きだ
9:あること(もの)を、ほかの人がどのように感じるかを想像するのは苦手だ
10:ほかの人の考えを理解することは苦手だ

周囲とうまく付き合っていくための対処法

●【対処1】相手に対する連絡や指示は5W1Hで

連絡や指示を5W1Hを確認する人のイラスト

ASDの人は、たとえば「時間のあるときにやっておいて」といった指示に対応することが苦手です。連絡や指示は、5W1Hを確認する習慣をつけることをおすすめします。
当てはまる数が多いと、その特性の傾向があります。苦手なことと対処法を学んで、身につけるようにするとよいでしょう。

●【対処2】予定変更など柔軟な切り替えをする訓練を

朝の予定を変更している人のイラスト

融通が利かないのもASDの特性。天候や相手の都合などで、急な予定変更は起こるものです。「予定変更は悪いことではない」と捉え、頭を切り替える訓練をするとよいでしょう。

●【対処3】周囲がわかりやすい動作を身につける

意識的にあいづちを打つイラスト

自分から発する言葉や話題を意識的に減らすという方法があります。そのうえで、あいづちを打つなど、「話を聞いている」と周囲がわかりやすい動作を身につけるとラクになりますよ。

<イラスト/サヲリブラウン 取材・文/ESSE編集部>

【監修/宮尾益知さん】
どんぐり発達クリニック院長、医学博士。徳島大学医学部を卒業後、東京大学医学部小児科等を経て、クリニックを開院。発達障害の総合情報サイト「オーク発達アカデミー」主宰。『女性のADHD』(講談社刊)など著書多数