「夫と一緒のお墓に入りたくない」…複雑化するお墓事情
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2018.11.03

核家族化で「家」への意識がますます希薄になりつつある現代、「お墓をどうするか」が大きな問題となっています。

お墓の現場に行って取材を続けているノンフィクション・ライターの井上理津子さんに、お墓の最新状況を詳しく伺いました。

お墓の最新状況
都内では納骨堂が急増。お墓のあり方が変わってきています

変わりゆくお墓の形。現実でも小説でも、「お墓事情」がトレンドに

井上さんはお墓や葬送に関する取材や著書も多く、お墓参りも好きという「墓マイラー」。
「東京・雑司ヶ谷霊園の近くに住み、毎日お墓散歩をしていたときに、だれにもお参りされずに荒れたお墓が増える様子を目にしました。お墓に対する人々の考え方が変わってきていることを肌で感じています」と語ります。

●都心ではこの20年で納骨堂が激増

「遠くてめったに行くことのない田舎のお墓の管理をどうするのか?」「縁のない夫の実家のお墓には入りたくない」「子どもたちの世代にも負担となりそう」など、お墓を負担に感じる人が増えるなか、井上さんがとくに注目するのが「納骨堂」。

納骨堂とは、個人、夫婦といったさまざまな単位で遺骨を収蔵できる納骨スペースのこと。先祖代々同じ寺の墓に入る、という従来の形と違い、個人で自由に選べることで注目を集めています。

「納骨堂は目下、首都圏には建設中のところも含めると約30か所に及び、完売すれば12万~15万人が使用することになります。8か所ある都立霊園の使用者数は28万人。都心に納骨堂が登場したのは1990年代後半だから、この20年で納骨堂使用者が墓地使用者の半数に達したことになります」と、井上さん。

もはや、土の上にお墓があることにこだわらなくなった人が、すごい勢いで増えているということ。井上さんの新刊『いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ』(小学館刊)には、そんなお墓事情が詳細にまとめられています。

●妻に「一緒のお墓には入らない!」と言われた男の行く末は?

フィクションの世界でも、お墓が重要なキーワードになる作品が増えています。

小説家・江上剛さんの新刊『一緒にお墓に入ろう』(扶桑社刊)も、最近のお墓事情を反映した作品。
東京で大手銀行の常務取締役執行役員にまでのぼりつめた主人公が、地方にある実家の墓を継ぐか継がないかの問題に直面。家族や愛人も巻き込み、エリート人生が狂い始める…という人間ドラマです。

本作のなかでとくに印象的なのが、主人公の妻が言う「…どちらが先に死ぬかはわからないわね。でもあなたと同じ墓には入らない」というセリフ。
思わずドキッとしてしまう人も多いのではないでしょうか。

奇しくも同時期にフィクションとノンフィクションという異なる手法で出版された2冊の本は、お墓の意味やあり方を通じて、私たちに最後の居場所を問いかけています。

お墓をテーマにした、2人の作家のトークイベントが開催

『いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ』と『一緒にお墓に入ろう』の発売を記念し、東京・三省堂書店有楽町店にて、井上理津子さんと江上剛さんのトーク&サイン会イベントが開催されます。

「お墓は生きているうちに自分で決めるか、子どもに託すか?」「田舎の墓? それとも都心の納骨堂?」「お墓はだれのもの?」…。
ぜひ足を運んで、人生後半の大問題に向き合ってみませんか。

11月7日(水曜日)19時より、東京交通会館3Fにある「喫茶ジュン」にて開催。お申し込み、お問い合わせは、三省堂書店有楽町店まで。たくさんの方のお越しをお待ちしています。

【井上理津子さん】
1955年奈良県生まれ。タウン誌記者を経てノンフィクションライターに。最新刊に『いまどきの納骨堂 ─変わりゆく供養とお墓のカタチ─』(小学館刊)がある

【江上剛さん】
1954年兵庫県生まれ。早稲田大学を卒業後、第一勧業(現みずほ)銀行に入行。在職中の2002年に『非情銀行』でデビュー。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍。最新刊に『一緒にお墓に入ろう』(扶桑社刊)がある

<取材・文/ESSE編集部>

いまどきの納骨堂 ─変わりゆく供養とお墓のカタチ─

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