<inubot回覧板>第5回 今年も秋がめぐってきた。カキ、イチョウ、そして犬
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2018.11.04

ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inubot
ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。

第5回は、カキの収穫を迎えた北田家と、畑で自由にふるまう犬について。

代々受け継がれてきた山で、犬が遊んでいる幸福をかみしめる

うちの家は代々農業をしていて、今は母親が祖父の畑を継いで、カキ、ミカン、ハッサク、ネーブルを栽培している。

出荷するまでに1年をとおしていくつもの作業が連続してあって、どんな業種でもそうかもしれないが、母を見ていると農家に暇なしだと心底思う。

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2018/10/04
柿をつくる工程で、春に摘蕾(てきらい)という、1本の枝にひとつだけ蕾(つぼみ)を残して、ほかの蕾を摘む作業を行う。
そして残された蕾は、母の手入れのなかで夏を過ごしてゆっくり成長していき、収穫を迎える。

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2016/04/06 犬の水分補給を忘れない

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2016/11/25
柿も品種によって収穫時期がさまざまで、9月下旬から10月上旬にかけて収穫を迎える刀根柿(とねがき)という品種と、10月中頃から11月いっぱい収穫を迎える富有柿(ふゆがき)という品種があって、この2種類を母は栽培している。

ちなみに、母のつくるカキはめっちゃおいしい。地元の小中学校では給食にカキがよく出たり、人からいただくことも多くて、ついこの前も近所の美容院で帰りがけにいただいたり、幼い頃からよく食べているが、どれよりも母のつくるカキがおいしい。

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撮影者 母
母が犬と畑に行ったときに脚立にのぼって作業をしていたら、あまりに犬が気持ちよさそうに寝ていたので撮ったらしくて、妹と3人のグループLINEに送られてきた。

私は農業が好きで、時間が合うときにできる範囲だけれど手伝わせてもらっている。
収穫期の前半には頃合いを迎えているカキとまだ青いカキが混じっていて、仕分ける目が必要になるので、未熟な私は中盤から後半戦にかけて畑に行っている。

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2016/05/31

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2016/06/05
今年も10月に入ってから刀根柿の収穫を手伝っていた。平日の日中、母と私が畑でいるあいだ、犬は家でひとり過ごしている。

2年前は摘蕾のときも収穫のときにも犬を一緒に畑に連れてきていた。
だけど、ここ2年くらいでイノシシが山奥から下りてくるようになり、うちの園地へも来るようになった。イノシシは夜な夜な畑に来ると、カキやミカンを食べたり、土を掘り起こしたり、ウンチをしていったりする。犬は食糞しないが、なにかと間違ってイノシシのウンチを食べたりしてはいけないので連れて行かなくなった。

連れて行っても放しはせず、6メートルくらいのリードでつないでいたが、犬は広々とした土地をあっちこっち駆け回ったり、木の枝を見つけては振り回したり、静かだと思ったら寝ていたり。
好きなように、思ったように行動を起こしている犬を見ているのはすごく楽しかった。

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2016/11/25
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2016/09/21
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2016/11/07

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2016/11/12 帰る頃には犬も疲れたのかあくびをしていた
山に同行していたのは、それができた環境だったからというのもあるが、祖母の存在もあったと思う。

2年前、2016年春に祖母が急逝した。昼間、祖母はよく庭のイスに腰かけて、同じように庭にいる犬と時間をともにしていた。

祖母は犬に声をかけていて、犬は耳を傾けて祖母の顔をじっと見ていることもあれば、素知らぬ顔をしていることもあった。出先から家に帰ってきたら祖母と犬に迎えられたし、ふたりともうたた寝している光景もよく見た。

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2015/10/14
祖母は検診に行ったり、母や叔母と出かけたりもしていたが、日常のほとんどは家で過ごしていた。祖母が急逝した当時は家の中ががらんとして見えて、祖母の不在がかえって祖母の存在を感じさせた。

さびしくなった家のなかで連日ひとりにするには、犬はまだ幼くて小さかった。だから連れていっていたのもあったと思うし、私たちも安心したかったのだろう。

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2016/05/31

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2016/11/26 イチョウの木と犬
母から聞いた話だが、この写真の奧に見えるイチョウの木は昔、祖母が植えたものらしい。この畑でもそうだし、近くの公園でも、大阪の御堂筋でも、イチョウの木を見ると祖母のことを思い出す。

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2016/11/26
今年も収穫期はまだ始まったばかりだが、今は犬を家でひとりにしても大丈夫だろうと、勝手だけど信頼している。

inubot回覧板第2回でもほんの少し書いたが、2年前から身長や体重といった体の大きさはとくに変わっていないはずなのに、大きくなったなと思えば頼もしさすら感じる。
どうしてだろうと考えたとき、ふたつ下の妹のことを引き合いに出すと合点がいった。

妹にしたって20歳も超えれば身長などほぼ変動してないが、社会人になって楽しいことも大変なこともいろいろ経験して、後輩ができて立場も変わっていけば、雰囲気に厚みが出てくるというか、妹を頼もしい人だと思うようになった。

同じように犬も2歳から4歳にもなったら、内面の変化、成長を感じるのは当たり前のことかもしれない。変わっていくのは個人個人だけじゃなくて、私と犬や、母と私の関係性も変わる。

inubot犬を頼もしく思う反面で、私のエゴだなという気持ちも常々ある。

犬はひとりで家にいることをさびしく感じているかもしれないし、ゆっくりできて気楽に感じているかもしれない。その両方かもしれないし、どっちも見当はずれかもしれないし、日によって違うだろうし。
せいぜい私が確信をもてるのは、「私の帰る家は犬がいるところ」という自分のことくらいだ。

inubotアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で、渚カヲルくんというキャラクターが「帰る家、ホームがあるという事実は幸せにつながる。よいことだよ」と話しているが、その言葉の重みを実感している。

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妹の手
今でも、犬のリードを握っていられるときや行動をともにできるときは、一緒に山へ行っている。
曾祖父から祖父へ、そして母へと継がれてきた山があって、そこからの見晴らしが本当に本当に好きだ。

山で犬と過ごしていると、小さな頃に祖父が農作業をしているそばを、よく兄や妹と走り回っていたことを思い出す。今ではそこに犬も加わるようになって、犬が山と遊んでいる。

inubot【写真・文/北田瑞絵】
1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubotを運営