家事シェアを阻む「妻は家事育児が当然」の重圧!泣く泣く退職したケースも…
2018.09.17

夫婦で家事を分担する「家事シェア」への注目が高まっています。

ESSEも読者にアンケート調査を実施。「夫より収入が少ない女性が、相変わらず家事負担を強いられている」という現実を再確認しました。
専業主婦や収入の少ない妻からは、家事シェアなんてとてもお願いできない…。ともに歩む夫婦でありながら、家事負担について話し合うことは難しいようです。

こうした風潮は、働いて収入を上げたいと考える人の障害にも。「『家事育児は当然女性がするもの』という考え方のせいで家庭から離れられない、家事分担もできない」との声もありました。
今回は2名の相談者から詳しい話を聞き、家事シェアを進めるNPO法人の代表・三木智有さんにアドバイスを伺いました。

家事育児は当然女性の役目と決めつけられて…自分の進む道の険しさを知った

夫と同じ職場で働いていたのに…仕事を諦めることになったのは私(写真はイメージです)
夫より年次も立場も上だったのに、出産で仕事を諦めたのは私(写真はイメージです)
まずお話を聞いたのは、ふたりのお子さんを持つ愛さん(仮名・35歳)。
「夫と私は同じ職場で働いていました。私の方が年上で入社も早く、立場的にも上でしたが、出産を機にやめることになったのは私でした」

最初は育休をとって職場復帰しようと考えていましたが、上司の態度に心が折れてしまいました。

「いちばん衝撃的だったのは、上司から言われた『育児と家事と仕事、両立できる?』『ご主人にもっと仕事をがんばって稼いでもらわなきゃね』という言葉でした。同じ職場で働いていて、言ってしまえば夫の方が立場は下だったのに、その3つを両立しなくてはいけないのは女である私と決まっていて、夫は仕事をがんばるだけ…。復帰後は子育てしながら営業をするのは難しいと、社内で営業を補佐する部署に異動することになるだろうと言われ、私も意地になって辞めてしまいました」

今になると会社からの配慮もあったのだろうと思えますが、妊娠初期で不安定になっていたこともあり、辞めるという決断をした愛さん。夫も本質的な部分を理解してくれていなかったと言います。

「夫は私が営業の仕事にやりがいを感じていたことを知っているので、やめたらとは言いませんでした。でも『無理することないよ』と繰り返し言われたんです。衝撃的でしたね(笑)。あなたが無理をすれば私も営業で復帰できるんだけど…と思っていましたから。私は子どもを産んだって、仕事をしたかった。その権利が最初から夫には与えられていて、私にはない。すごく悔しかったです」

今は専業主婦となっている愛さんは、「収入が少ない方が家事を負担すべき」という考え方を目にするたび、怒りがこみあげてくるといいます。

「収入で家事の負担を決めるというのは、私にとってはあと出しじゃんけんのようなもの。まず夫婦がどのように生きたいかという羅針盤があって、そこに付随する形で決めるのが当たり前ではないでしょうか。今は私ばかりが家事を負担してしまっていますが、夫が家事を分担してくれれば、私も仕事に復帰できる可能性が広がるわけですから」

家事の担い手がいないため泣く泣く退職した過去

※写真はイメージです
※写真はイメージです
次に、家事の負担が大きな壁となり離職にいたったという優子さん(仮名・42歳)にお話を聞きました。
今は高校生になったお子さんを妊娠したとき、周りに頼れる人もなく勤務時間も長かったことから、泣く泣く復職をあきらめることに。

「私は美容部員として働いていましたので、勤務が終わるのは21時頃のこともあり、子育てと両立するのは難しいと思いました。そしてもうひとつ、私には辞めなければいけない理由がありました」
それは義父との同居をしていたこと。

「義父は定年退職をして家にいたのですが、身の回りの世話は、嫁である私がするのが当然という空気がありました。最初のうちは夫も気遣い、『俺も手伝う』と言ってくれていましたが、激務だったこともあり、私が専業主婦になったあとは、子育ても家事もほとんど手伝ってくれることはありませんでした」

仕事が大好きで、できればやめたくなかったという優子さん。
「私としては、あくまでやむを得ず専業主婦になったという気持ちでしたが、『仕事もせず暇な時間がたくさんあるんだから、家事や育児をすべて完璧に一人でやらなくてはいけない』という雰囲気が、主人と義理の父の態度や口調から伝わってきました。そのことに違和感がありましたし、プレッシャーにも感じました」

とくにお子さんが小さいうちは、慣れない育児と義父への気遣い、家事で大変な思いをすることが多かったそう。
「専業主婦とひと口に言っても、育児や介護などそのときにこなさないといけない仕事量の増減があります。大変なときは、収入の差にこだわらず助け合うのが当たり前になってほしいと思います」

収入差があってもあきらめないで!望みを明確にして伝えるだけでも歩み寄れる

まだまだ女性が家事や育児をするのが当たり前の社会で、そのために仕事を手放す人がいるのが現状です。
家事のせいで好きな仕事を辞めるようなことにならないためにも、収入差が大きかったり、専業主婦であったりしても、家事シェアをすることで夫婦の選択肢はずっと増えるかもしれません。

家事シェアを進めるNPO法人の代表であり、ご自身の家庭でも家事シェアを実践している三木智有さんは、「まず大切なことは、収入や勤務時間の条件でお互いを比べることはいったんおいておいて、『なぜ家事シェアをしたいのか』『どんなことを手伝ってほしいか』という望みを明確にすることだと思います」と言います。

「イライラする人はどんなときにイライラするのかよく考えてみてください。そこが明確でないと、収入が少ない罪悪感の前に、立ち止まってしまうこともあると思います。とくに専業主婦の方は、望みを明確にしないと相手に伝わりづらいことも」と話す三木さん。

●不満を解消するために生産的な話し合いを

たとえば「専業主婦とはいえ、自分で全部をやるのはすごく大変なことをわかってほしい」「夫婦で一緒に家庭を運営している感じを得たい、パートナーシップをちゃんと結びたい」などの希望を明確にします。

次に、どうすれば不満が解消できるのかを考えていく方が、不満をぶつけあって終わりにならない生産的な話し合いができるはずだと三木さんは言います。

「その不満を減らすにはどうしたらいいのかを話し合っていきます。家事負担を減らしたいのであれば、夫に手伝ってもらう、外注する、家事を見直すなどさまざまな方法があると思います」

●無理やり家事シェアをしてもだれも幸せにならない

もし家事シェアをお願いをしても、夫にやる気がない場合はどうしたらいいのでしょうか?

「相手を変えることはできないので、無理やり家事シェアをしてもだれも幸せになりません。でも、夫にもできることが必ずあると思います。たとえば家事中に子どもを見てもらう、力仕事だけは担当してもらうなど、できそうなことを探っていき、一緒に家庭を運営していくことが大切だと思います」

妻側の状況が収入の有無で簡単に測れないように、夫側にも事情が存在します。
今の家族の状況でもできることを探っていけば、お互いの信頼感が増し、家族の笑顔はもっと増えるのかもしれません。

●教えてくれた人
【NPO法人tadaima!代表理事 三木智有さん】

「10年後も20年後も『ただいま!』と帰りたくなる家庭へ」をスローガンに家事シェアを広める活動を行うNPO法人tadaima!の代表理事。フリーのインテリアコーディネーターをしていた経験から、男性が家庭にもっと楽しむ必要性を感じ、家事シェアとインテリアの側面からサービスを展開している

<取材・文/上野郁美>