「正しい家事」にしばられてない?「母親の味」を断念した夫婦のシェア事情
2018.04.13
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女性の社会進出が進み、共働き世帯が増え、男性の家事や育児分担は増えてきているはず…。漠然と、そのようにとらえている方が多いかもしれません。しかし実際は、家事に費やす時間には大きな男女差があります。

2015年にNHK放送文化研究所が行った国民生活時間調査の結果によると、女性の平日における家事時間の平均は4時間18分、一方で男性は54分と3時間以上の差が。20年前の1995年のデータと比べてみても、男性の家事時間は22分しか増えておらず、女性は14分のみの減少。この20年間、男女の家事にかかる時間の差は、ほとんど縮まっていません。

家事シェアに詳しいライターの上野郁美さんが、自身の経験もふまえつつ2組の夫婦を取材しました。

家事シェア
写真はイメージです

女性が家事をするのが当たり前!?ESSE世代の夫の家事参加意識とは

家事に費やす時間の調査結果に、「男性は仕事で家をあけている時間が多いのだから、家事をしなくても仕方ない」と、とらえる方もいるかもしれません。

しかし仕事が休みの人が多い土日のデータでも、夫婦の家事時間には3時間以上の開きがあります。この背景には「女性が家事をするもの」という意識があるのではないでしょうか。
まず最初に、夫が家事をしてくれないことに不満を募らせるKさんからお話を聞きました。

<Kさん(35歳)のケース>長くつき合ってから結婚、出産。ずっと変わらない夫の意識

夫とは10年近くの同棲を経てから結婚しました。同棲前も結婚後も、家事はほとんど私の仕事。でも収入差があったので強くは言えませんでしたし、子どもが生まれたら意識が変わるのではないかと期待していました。

しかしふたりの子どもを出産し、その後子どもたちが幼稚園に入ってからパートで働いていますが、残念ながら夫の意識はほとんど変わりません。

●家が散らかっていてもまったく気にならない夫

休みが合わず、私が仕事で夫が休みの日でも、なにひとつ家事をすることなくゴロゴロしている姿を見ると、イライラしてしまいます。

何度か家事をやってほしいと頼んだこともありますが、家が散らかっていても気にならないようですし、なかなか動かない。
「自分の方が働く時間が長いのだから休ませてほしい」などと文句を言う姿に、「家事も育児もパートもこなしている私に、どうしてそんなことが言えるんだろう」とあきれてしまいます。
正直この夫と今後も一緒にやっていけるのか不安な気持ちです。

夫の家事
写真はイメージです
「家事は妻がするもの」という意識があり、夫は家がどんな状況でもさほど「気にならない」。家事シェアが進まない家庭でよく耳にする言葉です。夫婦間の気になる部分が違うと大きなストレスに。

しかしこの「気になる」をきっかけに家事シェアが進んだケースもあります。

<Hさん(38歳)のケース>家事シェアのきっかけは、マイルの貯まる店で買い物したいから!?

もともと夫は「なにもやらない人」。子どもが2人いますが、1人目の育休明けに、私がバタバタと帰ってきて家事をやっていても、ソファに座り一向に動かない。ある日私は思わずブチぎれてしまいました。

そこから徐々に意識が変わっていき、率先して家事をやってくれるようになりました。どこかで家事は「私の仕事」と考えていたのが、「夫婦の仕事」に変わっていったのだと思います。

●「相手の家事に口出しをしない」で徐々に軌道に

今は料理づくりを夫にお願いしていますが、きっかけは夫がマイルの貯まるお店で日用品を買いたいと言い出したから。毎日の買い物で、マイルが貯まるチャンスを無駄にしていると気になっていたようです。

最初は台所をまかせることに罪悪感もあり、勇気が必要でしたが、やってもらうからには信頼して任せようと思い、ほとんど口出しせず見守りました。今では家事シェアのバランスもとれており、快適な夫婦関係を築けていると思います。

子どもたちが「母親の味」を知らずに成長することに罪悪感はあったけれど…

最後に紹介するのは、書き手である私のケースです。
じつは私の家でも、料理づくりは夫にお願いしています。きっかけは、元々私が料理があまり好きではなく、仕事で疲れて帰ってきたとき、夕食にお弁当を購入することが多かったから。
週末に一気に買い込んだ食材を使いきれず破棄してしまうことを、夫は気にしていました。

子どものためにも母親である私がつくらなければと、苦手なりになんとかこなしていたのですが、慣れない子育てや家事、フルタイムの仕事にストレスがたまり、子どもや夫に八つ当たりしてしまうことも。
このままではいけないと思っていたとき、夫が料理づくりを申し出てくれました。

最初のうちは、子どもたちが「母親の味」を知らずに育つことへの罪悪感や、周りからどう思われるかを考えたこともありました。しかし、「母親の味」ってだれが決めたのでしょう。

料理が苦手な私がしぶしぶつくる料理より、おもてなしが好きな夫が楽しそうにつくる料理のほうが、子どもたちにもいい影響があるだろうと考えるようになり、完全に手放すことができました。

●相手が担当していることも無関心になりすぎない

わが家では、「気になる人が気になる部分を担当する」という家事スタイルで落ち着いています。洗濯物の干し方が気になる私が洗濯を担当し、掃除の仕方が気になる夫が掃除を主に担当。

しかし担当しているからといって、「その人の仕事だから」とまかせっきりにしてしまうのも注意が必要だと学びました。以前私も夫にまかせっきりにして無関心になりすぎ、夫のストレスが爆発したことが。
今は「2人の仕事をシェアしている」という考え方で、助け合いながら家事を進めています。

大事なのは家事を分担してルール化することではなく、お互いの得意分野を生かしながら、夫婦の「気になる」をなくしていくことだと感じました。

だれでも大きく意識を変えるのは難しいもの。妻が家事をするのが当たり前になってしまっている家庭も、夫側に「気になる部分」がありそうだと思ったら、家庭をどのような空間にしたいかを話し合い、家事をシェアするきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

気になる部分は、育ってきた環境から決まることも多く、夫婦間での違いも大きいはず。
「これが当たり前」ではなく「こうなるとうれしい」という視点から提案していけば、夫婦は信頼を取り戻し、家庭が心地いい空間になっていくはずです。

<取材・文/上野郁美>