母が夫婦でお墓に入れない!葬儀に親戚を呼ばないことが思わぬ大騒動に
高田綾佳
2018.04.08
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最近、「終活」という言葉が広がり、まだ元気なうちに死後に備えることへのタブー感はやや薄まってきましたが、遺族がショックを受け混乱しているお葬式の現場では、トラブルが起こりがちです。

葬儀の現場でよく聞かれる声をもとに、ありがちなトラブルの典型例や、その防ぎ方のポイントを、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さんが教えてくれました。

葬儀の現場
写真はイメージです

お葬式で親戚とトラブル…母が入るお墓がない!

「だれでもお葬式は不慣れなもの。なにげない選択が予期できないようなトラブルを招いてしまうことがあります」と語る高田さん。
「お葬式は、故人とその遺族に加え、参列者や葬儀業者など、第三者も含めると登場人物が非常に多いライフイベントです。さまざまな思惑が絡まって、思わぬ問題に発展することもあるのです」

今回は、行き違いがきっかけで、亡くなった実母がお墓に入れないという事態に陥ったケースを、Aさんという人物を例にして解説してもらいました。

●費用を抑えるため、家族葬、無宗教でのお葬式を選択

費用を抑えるため、家族葬、無宗教でのお葬式を選択Aさんは都市部にすむ50代の主婦。夫とともに暮らす家で、10年以上介護にあたった80代の実母を見送りました。

大好きな母が亡くなったあとのことなど考えたくなかったAさん。ひたむきに介護してきましたが、別れはある日突然やってきました。

父が他界してすぐ母の介護に移ったため、Aさんはパートに出ることが難しい状況が続き、家にはお金の余裕がありませんでした。ソーシャルワーカーが紹介してくれた葬儀社とともに、金銭面を第一に考えながらお葬式の内容について検討していくことになりました。

「身内だけの小規模なお葬式にすれば費用はかなり抑えられる」というアドバイスをもとに、Aさんはお葬式にだれを呼ぶのか思案。母は地方から都市部に移ってきたため、母方の親戚は全員遠方に住んでおり、お車代だけでまとまった金額になることが予想されます。父方の兄弟や親戚はそもそも関係が遠く、長年連絡すら取っていません。

そこで、お金の負担に加えて、縁遠い親戚を大勢おもてなしする心の余裕もないことから、Aさんは母の兄弟と自分の夫・子ども夫婦だけが参列する家族葬で、ひっそりと送り出すことにしました。

その際、葬儀社からは「お坊さんは手配しますか? 菩提寺はありますか?」と聞かれましたが、母の信じる宗教も菩提寺もわからなかったため、無宗教の形式で行うことに。きちんと母が成仏できたのか少し不安になりましたが、お坊さんを呼ばないことで費用も抑えられ、なんとか支払える金額に落ち着きました。

●父の兄からは「なぜ葬式に呼ばなかった」となじられ…

父の兄からは「なぜ葬式に呼ばなかった」となじられ…葬儀を終えてほっとしたのもつかの間、数日後に、どこからか母の死を耳にした父の兄から電話が入りました。

「お前の母さんはどこの墓に入る予定だ!」と、大変怒っています。
父は本家一族の墓に入っており、その妻である母も同じお墓に入るのが当然。にもかかわらず、墓守をしている自分を呼ばないのはなにごとか、というのです。

お葬式の用意で頭がいっぱいで、お墓のことまで考える余裕がなかったAさんは驚きました。

非礼を詫びて、母の遺骨も父と同じお墓に入れてもらえるようお願いしましたが、父の兄家族が葬儀に呼ばれていないことや、葬儀の際に読経をあげてもらっていないこと、戒名を得ていないことを理由に断られてしまいました。

とくに戒名については「一族は全員戒名を得ており、一人だけ俗名だなんてとんでもない」と取りつく島もなく、今後連絡をしないようにとすら言われてしまったのです。

母と父は存命中とても仲がよかったため、できれば同じお墓で眠らせてあげたい…。しかしお墓に入れてあげるには、父の実家の菩提寺に戒名を授かったうえで、父の兄に何とか理解を得る必要があります。

父の葬儀の際は、喪主を母に任せきりだったAさん。「戒名がこんなに高いなんて」という母の言葉だけが頭に残っていたため、死者を弔うしきたりを理解しないまま、葬儀を進めてしまったことで大きなトラブルを招いてしまったのです。

もちろんお墓を購入する資金はなく、母をどう供養すればよいかわからず困り果てています。自分のことではなく、大好きな母のことだからこそ、Aさんは悔やむに悔やみきれません。

今回のトラブルは避けられた!?お葬式とお墓をめぐる親族間のすれ違いをなくす方法

Aさんのお話、いかがだったでしょうか。これは、だれの身にも起こり得るお葬式トラブルです。Aさんはどうすればよかったのか、今回のケースの特徴と、気をつけたいポイントをまとめました。

●トラブルの火種になってしまった原因と事前にすべきこと

Aさんのケースには3つの特徴があります。

特徴1. 費用を抑えるために家族葬を選択した
特徴2. 一部の親戚を葬儀に呼ばなかった
特徴3. 無宗教形式で葬儀を行った

Aさんの金銭的な事情を考えると、こうした選択自体は適切なものだったと言えます。
一方で、お葬式やご供養は関係者が多く、予想外のトラブルが発生しがちなもの。だからこそ、不謹慎だからと先送りするのではなく、事前に以下のような点に気をつけておけば、平穏にお葬式をあげることができたかもしれません。

ポイント1 事前に交友関係を教えてもらう

この場合であれば、母親本人やご近所の方から少しずつ人間関係を確認しておくことで、不要なトラブルを防ぐことができます。

ポイント2 親戚にはひと声かける

遠方に住む親戚でも、ひと声かけることで反応がかなり変わる場合も。母親の実家で法事を行うなど、親戚に納得してもらえるような取り計らいも大事なポイントです。

ポイント3 菩提寺の確認をする

一家でつき合いがあり、法要やお墓を任せるお寺を「菩提寺」と言います。菩提寺がわからないときは、お墓がお寺のなかにないか確認したり、親戚に聞いたりしましょう。

大事な方の最期を納得できる形でお見送りすることは、残された側にとって大きな区切りとなります。トラブルを避けて心晴れやかにお別れをするために、家族であらかじめ「いざというとき」に備えておきませんか?

●教えてくれた人
【高田綾佳さん】

定額のお葬式「シンプルなお葬式」や、お坊さんの手配サービス「お坊さん便」を提供する株式会社みんれびで広報を担当。お葬式や供養を、身近で前向きなことにする活動をしている