宇多田ヒカルさんも入れ込む才能!小袋成彬さんが語る「曲づくり」
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2018.04.06
宇多田ヒカルさんに「この人の声を世に送り出す手助けをしなきゃいけない、そんな使命感を感じさせてくれるアーティスト」と言わしめた小袋成彬さん。4月25日に発売するデビューアルバム『分離派の夏』は、宇多田さんが初めてプロデュースを手がけたことでも話題を呼んでいます。

小袋成彬さん

1か所手を加えると、ほかも変えないといけない。曲づくりは、ラーメンづくりに似ている気がします

「宇多田さんとの最初の出会いは、アルバム『Fantôme』(2016年)にゲストボーカルとして参加したときでした。ファミレスでオムライスを食べていたら、メールが来たんです。夜中の12時34分。1、2、3、4。件名は“宇多田ヒカルのディレクターです”。すごいスパムメールが来た! と思いました」

じつは小袋さん、表に立つのは今回が初めてですが、業界では知る人ぞ知る存在。音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」への歌詞提供や、女性歌手「adieu」など、数々のアーティストを手がけてきたプロデューサーなのです。
「それまでは、シンガーソングライターの元歌を、皆さんに聞いてもらえる形に仕上げるのが僕の仕事でした。売れ線であることを考えつつ、ファンの期待にも応えようと。でも僕の性分として、そういうあいまいさが苦手で苦しくなってきた。こうなったら売れ行きに関係なくアーティストとしてやりたいことをすべて表現しよう、と決めたんです」

「立派な家を建てて、いいクルマに乗って…という幸せには意味を感じない」と小袋さん。ある日、通帳に残高がないことに気づいて、日雇いバイトをしたことがあるそうです。
「そこでわかったのは、この日本では1日体を預ければ1万円稼げる、死にはしないということ。それを実感したとき、お金に執着しなくなりました。お金を稼ぐように戦略を立ててつくられたものって、あまり人に響かない。ある程度の生活ができれば十分と思ったら、僕のなかでなにかが花開きました」

アルバム制作中は、気がついたら明け方ということもざらだったという小袋さん。曲づくりの緻密な作業を、ラーメンづくりにたとえてくれました。
「仕上がりがイマイチなとき、麺を変えたらそれだけでは終わらなくて、加える脂の量も変わるし、チャーシューも変えないとってなるでしょ。曲づくりも同じで、1か所手を加えると、あそこもここも、と際限がない」
なんとも孤独な作業ですが、「中学、高校は野球部だし、チームプレーも好きなんですよ」とほほ笑みます。知れば知るほどもっと知りたくなる、不思議な魅力の26歳です。

●『分離派の夏』

宇多田ヒカルの初プロデュース作としても話題を呼んでいる、小袋成彬のデビューアルバム。のびやかな声と挑戦的なサウンド、文学的な歌詞が特徴。収録曲「Lonely One feat.宇多田ヒカル」には共同作詞、ボーカルとして宇多田氏が参加。全14曲 ¥3000(4月25日にEPICレコードジャパンより発売)

【小袋成彬】
1991年生まれ。R&Bユニット“N.O.R.K.”のボーカリストとして活躍後、2015年に音楽レーベルTokyo Recordingsを設立。水曜日のカンパネラへの歌詞提供や、数々のアーティストのプロデュースを手がける。本作発売後には、初のフェスやライブを各地で予定している。

<撮影/杉山雅史 取材・文/おおくにあきこ>