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これぞ新世代の料理教室!お酒×料理の楽しさ<四十の手習い>

寿木けい
2019.09.08
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旬の素材を使った毎日の料理や、おいしい食べ方をつぶやく人気ツイッターアカウント、きょうの140字ごはん(@140words_recipe)。

アカウントを運営する寿木(すずき)けいさんに、大人になってから学んだ料理のこと、それをとおして気づく暮らしへの眼差しをつづってもらいます。

持続可能な日本酒ペアリングで、週末のうちごはんが変わる

●肴(さかな)はあぶったイカじゃだめ。令和のお酒事情

世はペアリング成熟期。ニッチなお酒×ニッチな食材のマリアージュイベントのチケットがあっという間に売りきれ、キャンセル待ちをした末に参加にこぎつけた経験も何度もある。

ある有名シェフが主催するペアリング教室に参加した際には、プロが繰り出すセンスと技巧に感動しつつも、高額な会費に通い続けるのを断念した。海外で活躍する日本人ソムリエの知人によれば、パリで今いちばん新しいペアリングイベントは、コーヒー×牛肉らしい。ふむ。ペアリングあるところ、グルメが押し寄せる。「あぶったイカでいい」と歌ったあの日は遠くになりにけり、だ。

●文献をひもとく発酵料理家とSNSで出会う

私的なペアリング教室偵察がひととおりすんだあるとき、Twitterで真野 遥さんという料理家のつぶやきを見つけた。
彼女のツイートをさかのぼり、発酵と日本酒に魅せられて蔵元を訪れたり、古い文献をひもといて研究を続けていること、そして蓄えた知識をもとに発酵料理×日本酒の「日本酒マリアージュ料理教室」を主宰していることを知った。

しかも、アップされている料理写真のなんとおいしそうなこと! 気取らないメニューで、簡単だけど気がきいている。早速私も教室に申し込んでみたのだった。

●4つの酵母に合う、個性豊かなレシピ

4種類の酵母を使った日本酒
お酒が入ったミニカップが並ぶ。「テイスティングの順序」にのっとって、口に含んでいく。
遥先生の9月の教室のテーマは「酵母を極める」。お酒づくりはもちろん、みそやしょうゆなどの発酵食品づくりにおいて酵母は欠かせないものだ。この日の教室では、6号酵母、花酵母、赤色酵母、CEL−24酵母という4種類の酵母を使った日本酒と、それに合わせた料理を味わった。

生徒たちはまず銘柄は知らされないまま着席し、目の前に置かれた4種類のお酒の色やテクスチャー、香り、口に含んだときの味や「含み香」、喉ごしやあと味を味わう。クイズ大会ではないので知識を競う必要もない。感想は胸にしまっておくだけでいい。
テイスティングが終わったところで、本日の種明かし。遥先生による日本酒の解説が始まる。最新データから古い文献資料までを駆使して進められる日本酒の座学がとても楽しいのは、最後に料理と一緒に味わうことができるお待ちかねタイムがあるからだ。

エプロンを身につけたら、4種類のお酒に合う料理の実習の始まり。先生がデモを見せ、そのあとは生徒たちで協力して料理を仕上げていく。とはいっても難しい作業ではない。焦げつかないように炒めるとか、ドレッシングを混ぜるとか、料理初心者でも大丈夫なものだ。

シイタケ、エリンギ、マイタケをフライパンで炒める様子
たっぷりのシイタケ、エリンギ、マイタケをフライパンで炒めるのは生徒さんの共同作業
料理がすべて終わったあとは、待ってましたの実食タイム。料理1品につきお酒1杯を合わせ、座学と実習で学んだ情報を舌で確認する。
選びぬかれたお酒に、高い精度で合わせられた優しい味わいの料理。家でも再現可能なペアリングなのだ。

4種類の日本酒の瓶が並ぶ様子
この日飲んだ4種類がずらりと。
左から、ヒマワリの花酵母を使った「積善 ヒマワリ酵母 純米吟醸」(西飯田酒造)、6号酵母の代表格「新政 No.6 R-type」(新政酒造)、CEL−24酵母を使った「亀泉純米吟醸原酒CEL−24」(亀泉酒造)、赤色酵母を使った「米鶴 ピンクのカッパ」(米鶴酒造)。

イチジクとゴルゴンゾーラのサラダ
イチジクとゴルゴンゾーラのサラダ。ゴルゴンゾーラチーズ、トレビス、クルミ、生ハムなど具だくさん。
この日の1皿目。イチジクとゴルゴンゾーラのサラダ。合わせたお酒は「亀泉純米吟醸原酒CEL−24」。力強いフルーティーさと強い甘味に、リンゴ酸の酸味がきいて、あと味はすっきり。さまざまな風味を盛り込んだサラダの味わいを調和させる酒だ。

キノコの黒酢マリネと日本酒
キノコの黒酢マリネ。常備菜にもぴったりだ。
2品目は、キノコの黒酢マリネ。エレガントかつ安定感のある「積善 ヒマワリ酵母 純米吟醸」を合わせる。キノコのうま味と黒酢のパンチが、お酒のどっしり感をマイルドに中和させる。

鮎のコンフィ
鮎のコンフィ。キュウリと山椒のソース。「山本勝之助商店」のブドウ山椒にひと口ぼれした。

3品目は鮎。100度のオーブンで3時間加熱してコンフィに仕上げた鮎は、丸々太ってツヤツヤ。添えられたのは、すりおろしたキュウリと粉山椒を混ぜたもの。これだけで何杯も飲める。
合わせたのは入手困難といわれる「新政 No.6 R-type」。桃やイチゴのようなフルーティな香りをまとった白ワインのようでもあり、洋食に合う。オリーブオイルとも当然合う。ほのかに苦味もあるので、肝が特徴の魚とも相性抜群というわけだ。

ヨーグルトパンナコッタ
ヨーグルトパンナコッタ 桃とローズヒップのジュレ。ローズヒップだけでなく、桃の皮からも色素が出る。
ラストはデザートの、ヨーグルトパンナコッタ 桃とローズヒップのジュレ。日本酒でコンポートにした桃に、酸味の効いたパンナコッタを合わせる。お酒は「米鶴 ピンクのカッパ」。甘口のロゼワインのようで、かつやさしいヨーグルトのような酸味があり、食後酒のようにいつまでもふわふわと飲んでいられる。デザートを食べたあと、(ちょっと行儀が悪いけれど)パンナコッタがくっついた容器に注いでもらってお代わりしてしまった。

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